言葉は、何気ないひとことの中にも、その国や文化が大切にしてきた価値観が映し出されています。日常でよく耳にする言葉の中に、意外な物語があるのを発見すると楽しいですね。言葉の奥に流れる思いや歴史をたどりながら、今日の英語フレーズを楽しんでください。
さて、今回ご紹介するのは “I’m rooting for you.” です。

目次
“I’m rooting for you.” の意味は?
日本語の「ファイト」や「エール」は違う意味?
「応援してます。」って、英語でどう言うの?
「根っこ」は語りあっている
最後に
“I’m rooting for you.” の意味は?
“root” には名詞の(根、先祖、故郷)、動詞の(根づく、定着する)といった意味があります。“I’m rooting for you.” を直訳すると、「あなたのために根を張る」ですが…、
正解は……
「あなたを応援してます。」
という意味になります。
この“root for”というフレーズは、誰かをはげましたり、応援の気持ちを伝えるのにぴったり。試験や面接、挑戦に立ち向かう人に伝えたい一言です。
『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)には、「1 ((主に米話)) (試合でチーム・選手を)(熱狂的に)声援[応援]する(cheer)((for …)). 2 ((主に米話)) (人を)(成功を祈って)支援する((for …))」と書かれています。
たとえば、
Good luck with your competition! We are all rooting for you.
(コンペ頑張って!みんなで応援してるよ。)
We always root for the home team.
(私たちはいつも地元のチームを応援しています。)
などと使います。
日本語の「ファイト」や「エール」は違う意味?
英語には、その他にも「応援してるよ」という気持ちを伝える表現がたくさんあります。けれど、日本語の “fight(ファイト)” や “yell(エール)” は日本語独特の使い方で、英語圏では違った意味として受け取られてしまうことがあるので注意が必要です。
まず “fight” は本来、(戦う、争う、けんかする)といった、敵や困難に向かう意味です。応援の言葉としては、少々不自然ですね。
また、「エールを送るなどの」“yell” は(大声を出す、怒鳴る)といった意味の動詞です。感情が高ぶったり、怒ったときなどに使われることが多く、「声援を送る」というニュアンスで使われません。
人を応援するための「ファイト」や「エール」。英語の文脈にのせると違うニュアンスで伝わってしまう可能性があるので、意識してお使いください。
「応援する」って、英語でどう言うの?
英語には、「応援する」という気持ちを伝える表現がたくさんあります。ここでは、日常で使えるフレーズをいくつかご紹介します。
1. cheer for ~(~を応援する)
“cheer” は、声を上げて応援したり、元気づけたりする時に使われる表現です。スポーツやコンサートなどで、観客が「ワー!」と声援を送るような、にぎやかで明るい雰囲気に近いです。
例文
The crowd cheered loudly for the athletes.
(観客が大声で選手たちを応援しました。)
We’re cheering for you all the way!
(ずっとあなたのこと応援してるよ!)

2. keep it up(その調子で頑張って!)
誰かが努力を続けているとき、「今のままで大丈夫、そのまま続けて」という励ましのフレーズです。
例文
You’re doing great. Keep it up!
(すごくうまくやってるよ。その調子で頑張って!)
Everyone is cheering for you, so keep it up!
(みんな応援してるよ、その調子!)
3. good luck(幸運を祈ってます/頑張ってね)
“good luck”は、「今まで頑張ってきたことが、うまく実を結びますように」という思いを込めて使われます。
例文
You’ve worked so hard. Good luck on your exam!
(頑張りましたね。試験、うまくいきますように!)
Good luck. You’ve got this!
(お祈りしています。あなたなら大丈夫!)
さまざまな「応援してるよ」という表現。 相手の気持ちに寄り添って、声を掛けることができたら素敵ですね。
「根っこ」は語りあっている
ドイツの環境活動家ペーター・ヴォールレーベン氏は、長年林業に携わるなかで、経済優先の森林管理に疑問を抱き、自然と共にある森づくりを提案してきました。(参考:スミソニアン マガジン)
彼は、「森の樹々は互いに助けあい、コミュニケーションを取りながら生きている」と語ります。木の根は地中で菌類(菌根菌)を介してつながり、水や栄養、時には危険までも伝えあう。 一部の科学者からは植物を擬人化しすぎであるなどと批判されていますが、氏は、森の植物は協力し、共感し、記憶すると語ります。
そして人間もまた自然の一部であり、木や植物と深くつながっているのだと私たちに伝えています。現在、世界で34か国語に翻訳された彼の著作は、各国でベストセラーとなっています。

最後に
“root” という語には、「根源」や「祖先」といった意味があります。根っこでつながり、互いに支え合う樹々の姿は、私たち人間の在り方と重なります。目には見えないけれど、私たちもまた先人や周囲の人々とのつながりの中で生かされています。時に、根っこからのメッセージに耳を澄ましてみるのも良いかもしれません。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
