英語の魅力のひとつに、シンプルな単語が思いがけず多彩な表情を見せてくれるところがあります。基礎的な単語でも、文のなかでどう使うかによって、雰囲気も相手に伝わる印象も大きく変わります。
ほんの小さな言い回しの違いが、会話をより豊かにしてくれることもあります。今日は、そんな日常でよく使われる表現をご紹介しましょう。
さて、今回ご紹介するのは“No worries.” です。

“No worries.” の意味は?
“No worries.” を直訳すると、
“worries” は、名詞の“worry” の複数形です。(心配事、悩み)という意味を持ちますが、そこから転じて
正解は……
「心配しないで」「大丈夫だよ」「問題ないよ」
といった意味になります。
相手の「ごめんね」や「ありがとう」に対して、「気にしないで」や「どういたしまして」などという意味合いもあります。
『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)には、「((英略式))心配無用,大丈夫.」と書かれています。
例えば、
1.
A: “Sorry, I’m a little late.”
(ごめん、少し遅れちゃった。)
B: “No worries! We just started.”
(大丈夫! ちょうど始まったところだよ。)
2.
A: “I forgot to bring your book today.”
(今日、本を持ってくるの忘れちゃった。)
B: “No worries, you can bring it next time.”
(気にしないで、次に持ってきてくれればいいよ。)
このように、“No worries.” は、親しい間柄でカジュアルに使うことができるフレーズです。
“No worries.” の語源と広まり
“No worries.” は、オーストラリアで生まれた表現だといわれています。おおらかで親しみやすい国民性を映し出す言葉として知られ、1980〜90年代頃からアメリカやイギリスにも広まりました。
いまでは世界中で耳にする、日常的な英語表現のひとつになっています。
「心配しないで」を伝える英語表現
“No worries.” 以外にも、「気にしないで」「大丈夫だよ」といったニュアンスを伝える表現は、数多くあります。ここでは、そのなかから日常でよく使われるフレーズをいくつかご紹介します。
1.“It’s okay. / That’s okay.”
「気にしなくていいよ」というニュアンスです。
相手がちょっと失敗したり、謝ってきたときに、それを受け止めるような表現です。
“It’s okay.” → 状況や相手の行動に対して「大丈夫だよ」。
“That’s okay”. → 相手の謝罪や心配に対して「気にしなくていいよ」。
2. “Don’t worry.”
命令文ですが、強い響きではなく「心配しないで。」「大丈夫だよ。」という気持ちを伝える言葉です。相手が不安そうにしていたり、謝ってきたときに安心させるために使われます。
例
A: “I think I messed up.”
(失敗しちゃったかも……)
B:“ Don’t worry, it’s fine.”
(大丈夫、大したことないよ。)
“No worries.” はお礼や謝罪に対して 「気にしないで」「問題ないよ」とカジュアルに使います。一方、“Don’t worry. ”は 相手が不安を感じているときに、「心配しなくていいよ」となだめたり、不安を和らげる時に使うことができます。
似ているようで、ニュアンスは異なります。もし会話で使うなら、
「励ますとき」は “Don’t worry. ”
「気軽に返すとき」は “No worries.”
と覚えておくとわかりやすいかもしれません。

3. “No problem.”
「気にしないで」「全然大丈夫」という意味です。謝られたときや頼まれごとをされたときに自然に使えます。
例
A: “Thanks for your help!”
(手伝ってくれてありがとう!)
B: “No problem!”
(どういたしまして!)
4. “It’s nothing.”
相手を安心させる柔らかい表現です。「たいしたことじゃないよ」「気にしないで」という気持ちを伝えるカジュアルな表現です。
例
A: “Thanks for your help earlier!”
(さっきは助けてくれてありがとう!)
B: “Oh, it’s nothing.”
(ああ、気にしないで。)
5. “There’s nothing to worry about.”
少し丁寧な表現で、「心配することは何もないですよ」といった意味合いになります。相手に安心してほしいときに使われます。
例
A: “I’m not sure if I did the presentation well.”
(プレゼン、うまくできたか不安で……)
B: “There’s nothing to worry about, you did a great job.”
(心配することなんてないよ。すごくよかったよ。)

最後に
アメリカを代表する現代詩人のひとり、メアリー・オリバー(Mary Oliver, 1935–2019)は、自然を題材にした詩で広く知られています。鳥や草木、季節の移ろいといった身近な自然を細やかに描きながら、生きる意味を問いかけます。
アメリカで最も多くの読者に親しまれた詩人のひとりともいわれ、詩集としてはめずらしく一般読者の間でも広く読まれました。
彼女の詩をご紹介します。
I Worried
by Mary Oliver
I worried a lot. Will the garden grow, will the rivers
flow in the right direction, will the earth turn
as it was taught, and if not how shall
I correct it?
Was I right, was I wrong, will I be forgiven,
can I do better?
Will I ever be able to sing, even the sparrows
can do it and I am, well,
hopeless.
Is my eyesight fading or am I just imagining it,
am I going to get rheumatism,
lockjaw, dementia?
Finally, I saw that worrying had come to nothing.
And gave it up. And took my old body
and went out into the morning,
and sang.「私は心配した」
出典:メアリー・オリヴァー『Swan: Poems and Prose Poems』ビーコン・プレス、2010年
メアリー・オリヴァー
私はたくさん心配した。庭は育つだろうか
川は正しい向きに流れるだろうか
地球は習ったとおりに回るだろうか
もしそうでなければ、私はどのように
それを正せばいいのだろう?
私は正しかったのか、まちがっていたのか
ゆるされるのだろうか
もっとうまくできるのだろうか?
私はいつか歌えるのだろうか
雀でさえできるのに、私は、そう、
どうしようもない
視力は衰えているのか、それともそう思い込んでるだけなのか
リウマチになるのかな
それとも破傷風、認知症?
けれどついに私は気づいた
心配はなにも生み出さなかったと
そして手放した
古いこのからだを抱えて
朝へと出ていき、
そして歌った
“No worries.”(大丈夫だよ。心配しないで)。たくさんある心配ごとを、小さな1つからでも手放していけたらいいですね。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
