
日本語で、たとえば「尻に火がつく」や「首を長くして待つ」といった表現を、私たちはその単語の意味をいちいち考えずに使います。単語だけ見ると不思議ですが、自然に理解しています。
けれど、母国語ではない言語を学んでいると、新しい表現に出会ったとき、思わずその言葉が描くイメージ、たとえば、空や海や動物の姿などを思い浮かべることがあります。しかし、ネイティブスピーカーにとって、それらは日常の言葉で、特別意識することもありません。
今回ご紹介する言葉は、そんな景色が思い浮かぶ表現のひとつです。
さて、今回ご紹介するのは “down to earth”です。
“ down to earth” の意味は?
“down to earth” を直訳すると、
“down” は「下へ」、 “earth” は「地・大地」。そこから転じて、
正解は……
地に足が着いた、現実的な、堅実な
という意味になります。
『ランダムハウス英和辞典』(小学館)では、「〈人・性格・思想などが〉実際的な,現実的な,足が地についた」と説明されています。
たとえば、
・“You are really down to earth.”
(あなたは本当に地に足が着いてる人ね。)
・ “He may be famous, but really down to earth.”
(彼は有名だけれど、気取らない人です。)
などのように言うことができます。
夢や理想に耽るのでなく、足元をしっかりと見つめ、現実と向き合う様子をさすフレーズです。

「現実と向き合う」人を表す言葉
ていねいに、そして堅実に現実と向き合う人を表す形容詞はいろいろあります。ここでは、日常的によく使われる3つの言葉をご紹介します。
1. “grounded”
落ち着いていて、心がブレず安定している。感情や状況に振り回されない人をさします。
・“He’s so grounded and calm.”
(彼はとても現実的で、落ち着いています。)
・“I really like her. She’s so grounded and down-to-earth.”
(彼女のことがとても好きです。落ち着いていて、気取らない人なんです。)

2. “practical”
実際の、実務の。理論だけでなく、実際に役立つ様子を表します。
・“He has a very practical way of thinking.”
(彼はとても現実的な考え方をします。)
・“She always gives practical advice that I can use.”
(彼女は、いつも役立つアドバイスをしてくれるよ。)
3. “humble”
控えめで謙虚。
・“She’s talented but very humble.”
(彼女は才能があるのに、とても謙虚だ。)
・“He always stays humble, even when people praise him.”
(みんなにほめられても、彼はいつも謙虚です。)
シーンに合わせて、ぜひ使い分けてみてくださいね。
最後に
英語に訳すのが難しい表現に、日本語の「ていねいに生きる」があります。
西洋でマインドフルネスの思想が広まったこともあり、最近では、“to live mindfully”(ていねいに生きる。今この瞬間を感じて生きる)と訳されることがあります。
また、
“to live with care”
(思いやりや配慮をもって生きる)
“to pay attention to the small things”
(小さなことに目を向ける)
などと、「ていねいに生きる」の訳は、文脈によって変わります。
SNSやインターネットを通して、大きな夢や華やかな世界が日々目に飛び込んでくる時代。つい人と比べてしまったり、人の視線や評価が気になったりすることもあります。そんな慌ただしい日々の中で、「ていねいに生きる」ことは、少し難しく感じられるかもしれません。
けれども、現実をしっかりと受けとめ、目の前の時間を味わいながら、できることを見つけて一歩ずつ進んでいく。日本語の「ていねいに生きる」は、英語の “down to earth” (地に足が着いた、堅実な)である生き方と、どこか通じ合っているように感じます。
次回もお楽しみに!
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com











