年齢を重ねるごとに、新しいことを始める勇気を持つのは容易ではないかもしれません。しかし、いつでも「今だからこそできる挑戦」があるように思います。言語を学ぶことは、言葉を覚える以上の体験、異文化や人との出会いの可能性が広がります。

これまでの経験や知識が新たな学びの支えとなり、深い理解を通して世界を見る。そして新しい友人と語り合う時間は、かけがえのないものとなり得ます。

さて、今回ご紹介するのは身体にまつわるユニークな表現、“I’m all ears.”です。

目次
“I’m all ears.”の意味は?
「聞く」と「聴く」の違い
“hear”と“listen”のさまざまな日常表現
世界の「聞く」と「聴く」
最後に

“I’m all ears. ”の意味は?

“I’m all ears. ”を直訳すると、“all”は(全て)、“ears”は(耳)ですが……、そこから転じて

正解は……
「聞かせて!」という意味になります。

直訳すると「私は全部耳である」ですが、このフレーズは「聞かせてください」「興味津々です」といったニュアンスがあります。相手の話に関心があり、より詳しく聞きたい時などに使います。

『ランダムハウス英和辞典』(小学館)には、「全身を耳にして聞く」と書かれています。

たとえば、

Did you just get back from India? I’d love to hear about your trip. — I’m all ears!
(インドから帰ってきたところ? 旅の話を聞きたいなあ。聞かせてよ。)

また、

A: I met someone recently.  (最近、出会った人がいてね。)
B: Really? I’m all ears! (え、なになに? 聞かせて!)

などと使います。

「聞く」と「聴く」の違い

日本語の「聞く」と「聴く」に違いがあるように、英語でも“hear”と“listen”では意味が異なります。

“hear”は、鳥のさえずりや会話がふと耳に入るような、意識しなくても自然に音が聞こえてくる時に使われます。


たとえば、

  • She heard a noise outside. (彼女は外で物音がするのを聞いた。)
  • Can you speak up? I can’t hear you. (声を大きくしてくれる? 聞こえないよ。)

一方で、“listen”は意識を向け、注意深く耳を傾ける行為を指します。音楽を聴いたり、人の話を理解しようとするような場合に使われます。

たとえば、

  • What kind of music do you listen to? (どんな音楽を聴いていますか?)
  • You haven’t listened to a word I’ve said! (僕が言ったことをひとつも聞いてないね。)

“hear”は自然に「音を受け取る」こと、“listen”は「音に心を寄せる」ことを表しています。

“hear”“listen”のさまざまな日常表現

“hear”と“listen”を使ったフレーズはさまざまありますが、よく使われる表現を2つご紹介します。

1.“I hear you.”

このフレーズは、「あなたの言いたいことは分かりますが」というニュアンスです。“I understand.”とは違い、理解や同意はできないけれど、「言いたいことは分かる」という意味です。“I hear you, but…”と続けることで、意見の対立を避けつつ、自分の考えを伝えるような時に使います。

2.“I’m listening.”

文字通り、「聞いてるよ。」という意味です。相手の話に注意深く耳を傾けている時や、「聞いてるから話して」と相手を促す時などに使われます。

世界の「聞く」と「聴く」

多くの言語でも、意識的な「聴く」と、自然に耳に入ってくる「聞く」は別の単語に分かれるのが一般的なようです。

  • フランス語:“entendre”(聞く)— “écouter”(聴く)
  • インドネシア語:“mendengar”(聞く)— “mendengarkan”(聴く)
  • スワヒリ語:“kusikia”(聞く)— “kusikiliza”(聴く)
  • トルコ語:“duymak”(聞く)— “dinlemek”(聴く)

など。ただし、必ずしも日本語の「聞く」と「聴く」の意味と一致するのではなく、文脈や文化的な背景でその意味はずいぶん異なります。たとえば、数千もの言語があるアフリカでは、ひとつの言葉がいろんな場面で変化する場合があります。また、伝統的な物語や歌を「聴く」行為は、単なる聴覚体験ではなく、儀式的、教育的な意味を持つ場合もあるようです。

一方、アラビア語では「聞く」と「聴く」にまつわる単語がとても細かくたくさん存在します。それぞれの文化背景によって、聞き方にも違いがあるのかもしれませんね。

日本語でも「聞」と「聴」の漢字を使ったさまざまな言葉があります。それぞれの文化によって聞き方も異なってくるのかもしれないと想像するとおもしろいですね。

最後に

伝えたいあまりに、人の話が耳に入ってこないことも時にあります。人の話しを聞くとは、一見簡単なようで実はとても難しいことのように感じます。

“I’m all ears!”(聞かせて!)

全身を耳のようにして一所懸命人の話しを聞くこの表現、日常会話でぜひ使ってくださいね。

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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