新世代の造り手が生み出す本格焼酎に惚れ込み、新たな酒と料理の楽しみを提案する酒場が今、熱い。鹿児島で出会った珠玉の一軒へをご紹介。
焼酎王国のど真ん中から、新風を吹き込む自由闊達な一軒

鹿児島は天文館といえば、九州においても天下無双の焼酎の本丸。『焼酎BAR S.A.O』は、そんな焼酎王国のど真ん中から進取の風を吹き込む一軒だ。
まずは1杯目の「苺のモヒート」に唸る。ベースは、奄美群島の黒糖焼酎『珊瑚』。米麹由来のどこか懐かしい香りがふわりと漂い、ミント、苺、ライムの瑞々しい風味と混じり合って、すっと体に馴染んでいく。ラムのそれとは異なる、鹿児島のモヒートなのだ。
かと思えば、王道のお湯割りも並ではない。バックバーに並ぶ甕4つは、それぞれの蔵元の仕込み水で前割り。黒千代香で燗付けする際には季節によって温度も変え、最大限に個性を引き出す。

この日は『萬膳』を45℃で、アテには鹿児島産黒毛和牛の生ハム「ブレオザラ」を。ナッツのような余韻が残る温かな焼酎で、和牛の甘い脂を溶かすように合わせれば、これぞ芋焼酎の醍醐味だ。

「芋の魅力を映し取った前割りのできは、水のおいしさが影響するので、毎月、蔵元を巡って汲み水しています」と、店主の金丸佑也さんと妻の望南(もな)さん。焼酎の本質を知悉(ちしつ)する若き夫婦によるのびやかな一杯に、愁眉も開く夜となる。
焼酎BAR S.A.O
「蔵の仕込み水を割り水にしています」

鹿児島市千日町8-14貴剛ビル地下1階
電話:099・239・4461
営業時間:19時〜翌2時(最終注文翌1時)
定休日:不定
交通:市電天文館通駅より約3分
取材・文/渡辺菜々緒 撮影/繁延あづさ











