案内 平野久美子さん(ノンフィクション作家)
日本から近く、日本の近現代史と関係が深く、親近感があふれる台湾は今、優れた生活工芸品の宝庫だ。
「豊かな自然と多様な文化が生み出した洗練されたデザインは現代の暮らしに映えます」
世界を牽引する半導体産業の一大拠点として知られる台湾は、今、魅力的なクラフト(手工芸品)でも世界的に高く評価されている。台湾に30年以上通い、取材を続けてきたノンフィクション作家の平野久美子さんは、その特徴を以下のように話す。
「屈託のない自然児のような魅力にあふれ、文化の多様性や自然の豊かさによって育まれた創造性が“台湾クラフト”の特徴です。17世紀に大陸から漢民族が台湾へ移り住む前より居住していた原住民(※)の文化を、台湾のアイデンティティの一部として取り込み、現代的な洗練さを加えたことで、海外の市場でも唯一無二の存在になりました」
※ 日本では「先住民」という言葉が一般的ですが、台湾では公的に「原住民」の用語が使われ、定着しています。現地での呼称を尊重し、「原住民」と表記いたします。
躍動感のある原住民の文化
タロコ族の山刀は、山道を駆け抜けるときツルなどに引っかからないよう三日月に反っている。生活道具だが、工芸品のように美しい。アミ族伝統の技法や素材を現代的に変換した生活工芸品や、先祖の文様に洗練を加えたセデック族の手織り布、ひとつひとつのトンボ玉が意味をもつパイワン族の首飾りなど、いずれも躍動感と創造性に富み、現代人を魅了する。
タロコ族の山刀
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アミ族由来のクラフト
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セデック族の手織り布
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パイワン族の首飾り
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『台湾クラフトへの旅』
現地の工房、クリエイターなど28か所を訪ね、台湾の歴史や多様な文化を感じる工芸品を案内。オードリー・タンさん(元台湾行政院政務委員)推薦。
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価格/3300円(税込)
小学館
B5変型判・160ページ
取材・文/五反田正宏 撮影/藤田修平、平野久美子
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