九州と同じほどの面積で、東シナ海の南に位置する台湾は、大きな魅力を秘めた旅先だ。特に開府400年に沸く台南に注目。多様な文化を探訪する旅に出かけたい。
台中の郊外、3000m級の山々に囲まれる温泉地・谷關。令和元年(2019)に誕生した『星のやグーグァン』は、温泉渓谷の楼閣をコンセプトにする。活気に溢れる都市での滞在もいいが、自然の中でゆっくり温泉につかり、心地よい逗留が楽しめる。施設内に湧水を活かした水路と樹齢100年以上の二葉松などが茂るウォーターガーデンがあり、心地よい水音が響く。
客室はスタンダードタイプでも75㎡という居住空間を確保。ほとんどの客室がリビングと寝室の階と半露天風呂の階があるメゾネットタイプ。半露天風呂には、湯量が豊富な弱アルカリ性の炭酸水素塩泉の源泉が掛け流されている。窓の外に目を向ければ、圧倒されるような山々の景色や渓谷美。身も心も一気に解き放たれるようだ。
夕食は会席料理のコースで、台湾の食材を日本料理の技法で提供。出汁がよく効いた海老真薯の椀ものや、台湾の香辛料・マーガオを添えたサーモンと牡丹海老のお造り、鱒とイクラの炊き込みご飯など、馴染みの味わいにほっとする。朝食は日本・台湾・西洋式が用意され選ぶことができる。日本語がわかるスタッフも多く、心強い。
星のやグーグァン
住所:台中市和平区博愛里東関路一段温泉巷16号
電話:050・3134・8091(星のや総合予約*日本語可)チェックイン15時、同アウト12時 49室。
料金:1室1泊1万8000元〜(税・サービス料別、食事別)
交通アクセス:高鐵台中駅から送迎車(有料・要予約)で約90分
日本との深い関わりを実感
『星のやグーグァン』がある谷關はもともと先住民族・タイヤル族の狩猟地域で、今も伝統的な生活が根付く。宿ではタイヤル族の文化を知る体験や、谷關温泉街の歴史散策などのアクティビティが用意され、土地の伝統や習慣、日本との関わりを知ることができる。
先住民族の織物体験
ガイド付きで歴史散歩
宿のアクティビティで「谷關」の地をさらに楽しむ
日本統治時代に豊富な森林資源を求めて山林開発が行なわれた松鶴地区の歴史を辿るサイクリングツアーが用意されている。松鶴地区がある八仙山は阿里山、大平山さんとともに三大林場と呼ばれ、林業の発展に伴い日本人やホーロー人(中国の福建省から来た漢民族)らが移り住んだ場所。
約5kmのサイクリングでは林業に関わった職員の宿舎や、かつての森林鉄道の駅舎などを巡りながら美しい自然に触れる。五葉松の並木や柑橘の畑、清流には鶴ならぬ白鷺の姿……土地の豊かさを実感できるひとときだ。サイクリングを終えると集落を見晴らす高台で料理長特製の弁当に舌鼓を打ち、宿に戻り温泉で体を休める。
1日ひと組の贅沢な体験は、台湾の奥行きの深さも教えてくれる。
林業の跡地へサイクリング
取材・文/関屋淳子 撮影/竹崎恵子
●1元(NT$)は約5.2円(両替時・11月20日現在)
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。
【完全保存版 別冊付録】台湾の古都「台南」を旅する