ライターI(以下I):『光る君へ』を48回完走しました。最終回は、まひろ(演・吉高由里子)と道長正妻の源倫子(演・黒木華)のやりとりから始まりました。道長(演・柄本佑)には源倫子と二妻源明子(演・瀧内公美)以外にもうひとり大切な女性がいることは前からわかっていたと、源倫子はまひろを問いただします。
編集者A(以下A):道長は正妻倫子、二妻明子ともに6人の子をもうけています(計12人)。倫子、明子ともわけへだてなく愛しんでいたようではあります。もちろん倫子の生んだ子のほうが出世してはいますが、明子の子らも軒並み公卿に列しています。
I:ふたりのやり取りは、『光る君へ』という物語をなぞっているようで、「ああ、そういう話もあった」「こういう話もあったよね」と改めて振り返る効果があって、胸がきゅんとなりました。
A:そしてまた最終回ということもあり、藤原道綱(演・上地雄輔)、藤原顕光(演・宮川一朗太)らが亡くなったというアナウンスに、時は確実に移ろっているという現実が突き付けられました。思えば道長が権力を掌握して30余年。長い長い道程となりました。
I:30年もの長きにわたり権力を支えたのは、道長の娘たち、彰子(演・見上愛)、姸子(演・倉沢杏菜)、威子(演・栢森舞輝)らであることは明らかです。ところが姸子は1027年に亡くなり、東宮(後の後朱雀天皇)妃となっていた藤原嬉子(演・瀧七海)も皇子(後の後冷泉天皇)を生んだ直後に亡くなります。
A:権力の頂点を極めた道長ですが、晩年は病がちで、なおかつ娘たちに先立たれるなど、苦悩も味わいます。時の移ろいの残酷な側面もしっかり描かれました。
文学の襷がつながった
I:さて、最終回で登場した菅原孝標の娘ちぐさ(演・吉柳咲良)というのは、父系では菅原道真の流れで、母が藤原道綱の母(演・財前直見)と姉妹になります。父の任国の上総から京都への道程をまとめた『更級日記』の著者としても知られています。
A:菅原孝標の娘は少女時代におばから『源氏物語』の写本を与えられて、熱心な読者になったようです。そうした経験が後年の『更級日記』に結実したのだと思います。個人的には『更級日記』に描かれる上総からの行程を房総半島から進軍していく源頼朝の行程と照らし合わせるのが好きです。
I:この最終盤で、『更級日記』の著者が登場してくる意味に感じ入っています。平安女流文学の襷がつながれた風でもありますし、やっぱり時の変遷が強調されているようで、グッときます。
A:きっと『光る君へ』を見た子どもたちの中から、物語を書きたいという人が出てくるでしょう。10年後、20年後に『光る君へ』を見て物語を書くことを志しましたという人が現れることに期待したいですね。
I:紫式部や清少納言、和泉式部らで盛り上がった古典文学を学びたい、物語を書きたい、ドラマの脚本に挑戦してみたい、いろんな才能が出現してほしいですね。
【まひろと阿弥陀如来。次ページに続きます】