ライターI(以下I):2024年の大河ドラマ『光る君へ』を1年間見続けてよかったという思いでいます。これほど平安時代中期が面白いと思ったことはありません。
編集者A(以下A):『光る君へ』の制作発表は『鎌倉殿の13人』が放送されていた2022年5月でした。最初は「1年間ストーリーが持つのだろうか」と思いましたが、まったくの杞憂に終わりました。そのことは率直にお詫びしたいと思います。
I:当欄では、制作発表の2か月後に初めて『光る君へ』に触れています。まだ藤原道長役すらも発表されていない段階です。今回は、「答え合わせ」ということで、2年前に初めて『光る君へ』に触れた記事を再掲したいと思います(https://serai.jp/hobby/1081662)。制作発表が2022年5月11日、記事掲載が2022年7月10日になります。当時は『鎌倉殿の13人』が放送されていたということにご留意ください。
(以下、再掲)
ライターI(以下I):もう2か月ほど前になりますが、2024年の大河ドラマ『光る君へ』の制作発表がありました。主人公が紫式部で演じるのは吉高由里子さん。役名は「まひろ」ということがアナウンスされました。『鎌倉殿の13人』が参院選の開票特別番組放送のため一週お休みというタイミングで、気が早い話ですが、『光る君へ』について考察したいと思います。
編集者A(以下A):2023年放送予定の『どうする家康』を含むそれまでの62作の大河ドラマでもっとも古い時代を扱ったのは、1977年の『風と雲と虹と』。平将門(没年940年/演・加藤剛)と藤原純友(没年941年/演・緒形拳)の時代が描かれました。紫式部の時代は将門の時代から40~50年ほど後。『鎌倉殿の13人』の源頼朝(演・大泉洋)や九条兼実(演・田中直樹)の「お祖父さんのお祖父さんのお祖父さん」の時代になります。
I:まだ主人公の紫式部のキャスティングしか発表されていませんし、脚本もこれから。クランクインも1年先という段階ですので、史実がどうこうとか、時代考証などあまり考慮しないで、「こんな場面が見たい!」というのを好き勝手に放談したいと思います。ところでAさん、制作発表の際に「ストーリーが一年持つのか?」という質問をしたらしいですね?
A:はい。しました。これは完全に期待の裏返しですね。期待していなかったら質問すらしませんよ。大河ドラマファンにとってドラマの出来不出来は1年間の生活リズムにかかわる重要事項ですから、激励の意味も込めての質問です。主人公紫式部(役名まひろ)が生きた時代は、日本の歴史の中でもひときわ華やかな時代ですから、その空気をどのように映像化してくれるのかとても楽しみにしています。
I:紫式部は、時の権力者藤原道長の娘で一条天皇の皇后になっていた彰子付きの女官で、世界の文学史に冠たる長編小説『源氏物語』の作者です。
A:『ビジュアル版逆説の日本史 古代編下』第8章「『源氏物語』の誕生と仮名文学の発達」からの受け売りですが、「なぜ世界最初の大長編小説が日本で生まれたのか?」「なぜ紫式部は、この小説の主人公を〈源氏〉にしたのか?」という命題を劇中どのように描いてくれるのか――。第一の関心事がここです。ひらがなが普及したことで、この時代は紫式部や清少納言に代表される女流文学が大流行しました。おおざっぱな表現を使うと、「女流文学バブル」。その是非はともかくバブル的なイケイケの高揚感あふれる時代だったのでしょう。
I:では、トピックスごとにまとめてお話を進めていきましょう。
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