マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は、ストレスについて考察します。人や組織を成長させるために必要な正しいストレスと、マイナスの方向だけに働く誤ったストレスがあると言います。
昨今、時代の変化とともに働く意識の変化、人手不足、多様性など様々な要因によってマネジメントの難易度が上がっています。こうした背景から、部下にストレスを与えない「良い上司」を目指してらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
しかし、部下にストレスを与えずにマネジメントした結果、部下が育たない、部下が納得するまで時間をかけて説明しないと業務が進まない、管理職自身に負荷がかかりすぎて体調を崩してしまうなどの弊害が起きている会社もあります。
今回は、部下に与えてはいけない「誤ったストレス」と、部下に与えるべき「正しいストレス」を解説します。
そもそもそストレスとは
「ストレス」と聞くと、ネガティブなニュアンスを持つ方が多いです。そこで、まずはストレスの意味を確認してみましょう。
厚生労働省が運営するe-ヘルスネットによると、ストレスとは下記のように示されています。
外部からの刺激などによって体の内部に生じる反応のこと。その原因となる外的刺激(ストレッサー)とそれに対する私たちの心身の反応(ストレス反応)とを合わせてストレスと呼ばれることもある。
厚生労働省 e-ヘルスネット
(中略)
ストレスが生じると、体内ではそれを解消しようとする防御反応が働きます。対処法はそれぞれ異なりますが、同じストレッサーでも受け止める人によって「よいストレス」になるか「悪いストレス」になるかが大きく異なります。
つまり、本来「ストレス」とは中立的な意味であるものの、世間的に話題に上がるのが「悪いストレス」であるため、ストレス=悪と感じられてしまうことが多いわけです。
ストレスが発生するタイミングをもう少し具体的にすると「生活する場所、学ぶ場所、働く場所などの環境の変化による刺激、家族友人間、上司部下などの組織内の人間関係における刺激、お金や生きていくための糧に関わる刺激、成長や自己実現における刺激」などがあげられます。
ストレスなしで離脱する若者たち
最近では「ゆるブラック」という言葉が生まれました。ゆるブラックとは、下記のような状態の企業を指します。
・過度な残業などはないが、成長できない
・職場の雰囲気はいいが、将来性が感じられない
・離職率は低いが、理由は「楽」だから
つまり、若者にとって、ストレスなしの状態は逆にしんどいということがわかってきたということです。とはいえ、どんなストレスでもいいわけではありません。
ゆるブラックの対義語は「ブラック企業」です。ブラック企業は、「ストレス」が過大に従業員にかかります。そして、その多くは「悪いストレス」なのです。
ですから、管理職は「よいストレス=正しいストレス」と「悪いストレス=誤ったストレス」を正しく認識し、正しいストレス負荷をかける必要があるということになります。
与えるべき“正しいストレス”とは
人や組織を成長させるために必要な「正しいストレス」について解説していきます。
1.明確な目標設定によるストレス
明確な目標設定によるストレスは、正しいストレスとなる可能性が高いです。
例えば、「10kmを60分以内で走りなさい」などが明確な目標設定に該当します。この状態ですと、誰もが客観的に目標を達成できたか、達成できなかったかを判断可能です。つまり、人によって判断が異ならない目標になるということです。
この場合、目標を達成できなかったという事実が明確になりますので、次回は達成できるように=成長できるように、部下はストレスを受け止めて業務を進めていくことができるでしょう。
2.明確な目標管理によるストレス
1.ともかかわりますが、明確な目標管理によるストレスも「よいストレス」となることが多いです。
目標管理と聞くと、身構えてしまう方も多いのですが「目標」自体は元来悪いといったことはありません。目標を達成できなかった際に「怒られる・怒鳴られる」といった経験が目標管理をネガティブにしているのです。
ところが、目標が未達の状態にもかかわらず、「大丈夫だよ。次頑張って」という会話だけでは、ストレスこそ少ないものの、成長が鈍化します。これも適切な状態とはいえないでしょう。
成長とは、出来なかった事が出来るようになることです。出来なかった事を事実として受け止め、次の目標達成に向けて何を改善するかを自ら考え、上司と約束してスタートを切れるような明確な管理が必要です。自分で改善するための解決策を考えるのはストレスがかかりますが、これも会社が成長のために与えるべき正しいストレスといえるでしょう。
与えてはいけない“誤ったストレス”とは
組織内にフォーカスして与えてはいけない「誤ったストレス」について解説していきます。
1.ルールや指示が曖昧なことによるストレス
例えば、「机の上は整理整頓しましょう」というルールがあったとします。これは、どんな状態を指すのかが人によって解釈が異なるルールです。整理整頓したつもりでも、他の人から見れば整理整頓が出来ていない注意の対象となる危険性があります。
こうした人によって解釈が分かれるルールが多いと、ルールを守ることから「その人の基準にあった対応をする」ことに目が移り、相手に合わせた個別対応をする必要が出てきます。
例えば、上司がよく言ってしまう「なるべく早く」という言葉。「なるべく」も人によって解釈が異なるので注意が必要です。その一言が、余計なストレスを部下に与えているかもしれないのです。
2.目標、評価が曖昧なことによるストレス
「早く一人前になりなさい」「〇〇さんのようになりなさい」など、設定する目標が曖昧だと余計なストレスを生みます。自分ではできたと思っていても、上司からするとできていないという誤解が発生するからです。部下側からすると「なんで頑張っているのにわかってくれないんだ」という不満につながる危険性があります。
曖昧な評価体制は「上司が自分のことをわかってくれないのが悪い。私はこんなに頑張っているのに」というような自己評価を生み出してしまいます。無駄なストレスを部下にあたえるだけでなく、最終的には組織全体の動きを鈍化させるリスクもあります。
3.感情によるストレス
上司がイライラしている、目標が達成できなかったときに感情的に怒る、悪い報告をした際に感情的に説教されるだけで解決策も決まらないなどが該当します。感情によるストレスが部下の集中力を低下させ、何が出来たらいいのかが不明確となり、上司の顔色ばかり気にするような社員になる危険性があります。
4.指揮系統によるストレス
直属の上司以外の先輩や上司のさらに上の上司からも指示をされるなどの状態も余計なストレスを生みます。特にタスクが重なる場合には、どちらかに忖度をする形を取らなければならなくなってしまいます。このような複数上司の状態は人への遠慮を生むため、留意する必要があります。
5.不平等な接し方によるストレス
上司の態度が人によって違うなどの状態は、余計なストレスを生みます。
例えば、Aさんには優しく接するが、Bさんには厳しく接するなどの場合です。もちろん人間には好き嫌いがあるのはわかりますが、仕事のなかで公に出す必要はありません。Bさんからすれば、余計なストレスを感じてしまうことでしょう。
まとめ
ストレスという言葉だけでネガティブなイメージを持つ人もいます。しかし、現代で必要とされているマネジメントは「ストレス」を正しく認識し、会社の成長や部下の成長のために上手く活用することです。
人材不足や離職の問題で悩んでいるリーダーも多くなってきています。与えてはいけない“誤ったストレス”を最小化し、“正しいストレス”を与えていく事が離職防止にもつながり、部下を成長へと導くきっかけにもなりますので、ぜひ実践してください。
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