マネジメント課題解決のためのメディアプラットホーム「識学総研(https://souken.shikigaku.jp)」が、ビジネスの最前線の問題を解説するシリーズ。今回は部下のマネジメントについて考察します。

「上司が背中で語る」というマネジメント手法が一昔前まではよく取られておりました。「部下は上司の背中を見て育つ」ということは一理ありそうに思えますが、部下の成長を阻害する要素があり、注意が必要なマネジメント手法と言えます。

今回は、様々なリーダーシップ論の一つとしても取り上げられる「上司が背中で語る」マネジメントについて、その懸念点と部下を成長させるためのマネジメントについて解説していきます。

背中で語るマネジメントとは何か

現在では、様々なリーダーシップ論がある中で、「昔ながらの」と評されることも多くなった「上司が背中で語る」というマネジメント手法。まずはどのようなマネジメント手法なのかを整理していきます。

文字通り「上司が背中で語る」ということですので、上司が部下に直接語るのではなく、管理者自身がプレーヤーとして一番の成果を出すことで、部下がその上司の成果を出していることから学び、自ら成長していくこととしています。「率先垂範」や「仕事は教わるものではなく、見て盗むもの」という言葉も同様の考え方です。

部下に手取り足取り教えていると部下は考えなくなるので、上司の背中を見て自らに考えさせることが必要である、という部下への関与しすぎによる成長阻害の観点、また、個人として魅力がある上司でなければ部下はついていきたいと思わない、リーダーシップ論の観点から、このようなマネジメント手法の必要性が認識されていたと言えます。 しかしながら、「上司が背中で語る」ことで、逆に部下の成長を阻害する可能性がある点に注意する必要があります。

部下の成長を阻害する理由1「部下を迷わせる」

1つ目は、部下を迷わせることになるという点です。

「上司が背中で語る」ということは、基本的には上司から部下への管理は最小限にしていくこととなります。

もちろん、上司のマネジメント工数をどれだけ最小化出来るかは考える必要がありますが、それはあくまでチームとして成果を出すこと、部下を成長させることを前提としてマネジメント工数を減らしていくことであり、管理をしないことで部下の成長を阻害してしまっては意味がありません。

「上司が背中で語る」場合、部下自ら上司の行動を見て考えて、行動していく必要があるため、一定の理解力や行動力を持った部下であれば、それだけでも成果を出していくことが出来るかもしれません。一方、まだ慣れていない部下や成果を出せていない部下にとっては、「何をしたら良いかが分からない」状態が続いていき、迷い続けることになります。結果として、迷い続けて、成長を感じることが出来ず、離職するといったことにも繋がりかねません。

つまり、部下を成長させる上では、上司から部下への一定の管理が必要であるということです。

部下の成長を阻害する理由2「部下の言い訳を生む」

部下を成長させる上で、一定の管理が必要とお伝えしましたが、管理していく上で重要なことは、部下の言い訳を取り除いて、取り組ませているかということです。

人が成長していくためには、自身が出来なかったことを自分の責任として捉え、どうしたら改善できるかを考え、行動を変えていくことが必要です。つまり、そこに言い訳の要素があったら取り除いていく必要がありますし、部下自身で出来れば、その部下は勝手に成長していきますが、そんなに人は強くないので、そこには上司の管理が必要であるのです。

しかしながら、「上司が背中で語る」場合、部下はそれを見て考え成果を出すことが求められるため、責任はあるものの、上司から教えてもらうといった、権限が不足していると捉え、成果に対して言い訳しやすい環境になりがちです。

1つ目の成長を阻害する理由としても提示した、部下を迷わせないために一定の管理が必要とともに、管理する指標において、部下の言い訳の要素をどれだけ取り除いて取り組ませているかが重要であり、「上司が背中で語る」マネジメントでは、その点が不足していると言わざるを得ません。

「上司が背中で語る」ことは全く不要なのか?

では、「上司が背中で語る」ことは全く不要なのでしょうか?

今回定義した「上司が部下に直接語るのではなく、管理者自身がプレーヤーとして一番の成果を出す」こと、「仕事を教えるのではなく、見て盗ませる」ことは、ここまで解説してきた通り、正しく部下を成長させることが出来ないため、「上司が背中で語る」ことは、不要であると言わざるを得ません。

つまり、上司が成果を出しているから部下がついていきたいと思うという考え方を改める必要があります。上司は部下の成長とチームとしての成果に責任があるわけで、上司個人として成果を出すことが本来の役割ではないはずです。

では、部下の成長、チームとしての成長のために必要なことは何でしょうか?

それは、成果を出すための必要な指標を絞り込み、部下に設定して集中して取り組ませることです。

部下に設定すべき指標を絞り込む上で、自身がプレーヤーとして実行していなくても設定できる上司になることがベストですが、それが難しい場合には、まずは自身で取り組んでみて、どんな指標が必要かを整理することも必要になってきます。

上記のような場合、上司が必要な指標の情報収集として先に動く必要がありますが、その上で部下に必要な指標を設定して管理していくことになるため、「背中で語る」とは異なるアプローチとなります。

まとめ

今回は「上司が背中で語る」ことの是非について解説しました。様々なリーダーシップ論がありますが、重要なことは何のためにマネジメントが必要かという点を忘れないことです。つまり、上司の本来の役割は上司の責任範囲において求められる成果を出すことであり、部下を成長させることです。その上で部下の成長を阻害する要素があるとすれば、取り除いていく必要があります。

今後のご自身のマネジメントに悩まれた際には、是非、自身の責任範囲における成果に寄与出来ているのか、部下の成長に寄与出来ているのか、という点を踏まえてマネジメントを考えていただければ幸いです。

識学総研:https://souken.shikigaku.jp
株式会社識学:https://corp.shikigaku.jp/

 

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