長年、高齢者の診療やウォッチャーを続け、10年以上アンチエイジング医療に取り組んできた精神科医の和田秀樹さんの最新刊『60歳からはわたしらしく若返る』(日本文芸社)は、「毎日楽しみながら生きる人はずっと元気でいられる」をコンセプトに、「老けないためのさまざまな方法」を365日のフォーマットで紹介する1冊です。
和田先生は、60歳以降の女性は「我慢している人より自由に楽しんでいる人のほうが元気」と言います。また、若々しさの秘訣は「脳の前頭葉部分を活性化させる」ことだそう。新しいことを試し、初体験のワクワクで前頭葉が刺激されると意欲が増し、見た目も思考も若々しくなるとのこと。そうなるとさらに積極的に行動するようになり、再び前頭葉が刺激されるという好循環が生まれるそうです。
前頭葉に効く3つのテーマ、「タブーを作らずチャレンジする」「ひと目を気にしない」「自分の心と体に正直になる」をもとにした365のきっかけや学びのネタは、「365日の前頭葉活性化のための暮らし事典」のような使い方もできます。今回は、「自分の心と体に正直になる」生き方のヒントをご紹介します。これからの人生がよりポジティブで、豊かなものになるはずです。
文/和田秀樹
周りの人に自分の口癖を聞いてみる
自分のことは自分が一番わかっているようで、案外わかっていないものです。その代表が口癖です。口癖には思考の癖が表れます。まずは、自分の口癖を周囲の人に聞いてみてください。気づいていない口癖があり、それが「イヤだな」と思ったら、その理由を考え、意識して口癖を変えていきましょう。
口癖を変えることで、思考が変わり、行動が変わることも珍しくありません。
プライドと上手に付き合ってみる
「プライド=誇り」ならば大事なこと。年をとっても堂々と誇りを持って生きたいものです。しかし、プライドはややもすると世間体と結びつきます。「かっこ悪いからやめよう」「恥ずかしい」などと思うのは、世間体を気にしすぎているからかもしれません。
「補聴器なんて恥ずかしい」だから会話が苦手になった。「トイレが近くて心配」だから出歩かなくなった。「わからないけれど人に聞くのはイヤ」だから話についていけなくなって、孤立してしまった。プライドのせいで行動範囲が狭くなったり、楽しみを失うのは悲しいことです。世間体という名のプライドなら、さっさと捨ててしまいましょう。気にしているのは当人だけ。周りはなんとも思っていません。むしろ、補聴器をつけていたり、質問をぶつけたりしたほうが気に掛けてもらえます。コミュニケーションを取ったほうが楽しいし、脳が活性化します。
口癖を作ってみる「頑張ってきたね」
人間は自分の短所に目が行きがちです。視野が狭くなると、なおさら短所に目が行きます。そんなときは、「頑張ってきたね」と言ってみてください。自分の過去を認めることは、大切なことです。そして、自分の「いいこと」を紙に書き出してみましょう。これはうつ病などの精神療法(認知療法)でも用いられる、効果的な方法です。書き出すことで、自分の「いいこと」を脳が実感できるのです。
「健康である」「学生時代からの親友が一人いる」「料理が得意」「話すことが好き」「歴史小説が好き」「人付き合いがいい」「かわいいペットがいる」「子どもが自立した」「オシャレが好き」「おおざっぱ」「一人でラーメン屋に入れる」「ミーハー!」――。
書き出してみると、「自分はけっこう幸せだ」と感じるはずです。そう思えるのも「頑張ってきたね」があるから。少々の短所は霞んできます。
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60歳からはわたしらしく若返る
著/和田秀樹
日本文芸社 1,760円
和田秀樹(わだ・ひでき)
1960年大阪府生まれ。東京大学医学部卒業。精神科医。
東京大学医学部附属病院精神神経科助手、米国カール・メニンガー精神医学学校国際フェロー、高齢者専門の総合病院である浴風会病院の精神科を経て、現在和田秀樹こころと体のクリニック院長。高齢者専門の精神科医として30年以上高齢者医療の現場に携わる。主な著書に、ベストセラーとなった『80歳の壁』(幻冬舎新書)、『老いの品格』(PHP新書)、『70歳が老化の分かれ道』(詩想社)など多数。