九州と同じほどの面積で、東シナ海の南に位置する台湾は、大きな魅力を秘めた旅先だ。特に開府400年に沸く台南に注目。多様な文化を探訪する旅に出かけたい。
昭和時代を思い起こさせる『天下南隈』
赤崁楼の北側は、いくつもの廟など古跡に囲まれた歴史地区だ。日本統治時代は東本願寺だったこの地に、台南のランドマークとして親しまれたホテルが建っていた。時が流れ、老朽化した建物をリノベーションしたのが『天下南隈』である。
郷愁を誘う雰囲気とモダンさが融合する様は実に居心地がよい。調度を始め、宿の各所に籐素材や帆布などが使われ、台南らしさを醸し出す。部屋の備品にも台南の特色ある工芸品が選ばれている。例えばティーバッグなどが収まる丸い缶は地元店のもの。それも百年の歴史を誇る手工芸品だ。
1970〜80年代の台湾は経済成長が著しい“良き時代”だった。その時代の雰囲気を全館で再現するとともに、アナログレコードやポラロイドカメラを体験することもでき、日本人にとっても昭和時代を思い起こさせる宿である。
ここを拠点とすれば、赤崁楼をはじめ歴史散策はもちろん、美味なる小吃を楽しみ、伝統工芸の店を訪ねるにも至便である。
天下南隈
住所:北区成功路202号
電話:06・2290271
チェックイン15時、チェックアウト11時。
料金:スイートルームは1室2名利用でひとり平日6999元、休日8999元。ドミトリー(相部屋)からスイートルームまで計103室。
台南の暮らしぶりが体感できる古民家の民宿『謝宅』
台南で、8軒の古民家の民宿を経営する謝小五さん。古民家の再生を始めたのは留学先のオーストラリアから帰国してからだ。
「台南に戻ると、慣れ親しんだ古い建物が次々と壊されていました。このままでは台湾の京都ともいわれる台南の古き良き佇まいが失われてしまうと危惧したのです」
謝さんは仲間とともに「老房子倶楽部」(古民家倶楽部)を立ち上げ、西市場近くの正興街で茶館を開き、古民家の魅力を発信し街を活性化。次いで西市場にある布問屋の生家を民宿に改修した。家族と過ごした当時の家具や調度品を活かし、台南の暮らしぶりが体感できる快適な滞在は、瞬く間に注目を集めた。2軒目の「保安路謝宅」は叔父の家を再生。
「心がけているのは新旧のバランスです。70%は伝統的に、30%は新しい概念を取り入れます。例えば寝室は私の子どもの頃と同様に畳に布団で、床の人造大理石もそのままですが、古い壁を取り払い、吹き抜けの空間に台湾楓を移植しました。マーク・トウェインの『トムソーヤーの冒険』のツリーハウスのイメージなんです」
懐かしさと斬新さが心地よい謝宅。味わい深い滞在が楽しめる。
謝宅
住所、電話番号非公開。
予約はメール、Facebook、インスタグラム(※)で(日本語可)。
1泊2名で4200元〜。
※oldhouseinn2008@gmail.com https://www.facebook.com/TainanOldHouseInn/ https://www.instagram.com/oldhouseinn2008/
取材・文/関屋淳子 五反田制作所 撮影/宮地 工 藤田修平
●1元(NT$)は約5.2円(両替時・2023年11月20日現在)
※この記事は『サライ』本誌2024年1月号別冊付録より転載しました。
【完全保存版 別冊付録】台湾の古都「台南」を旅する