字画も少なく、しょっちゅう⽬にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか心配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか? サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。
簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の動画を⾒ながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。「脳トレ漢字」第183回は、「感ける」をご紹介します。漢字への造詣を深めてみてください。
「感ける」の正しい読み方とは?
「感ける」の読み方をご存知でしょうか? 「かんける」ではなく……
正解は……
「かまける」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「あることに気を取られて、他のことをなおざりにする。」と説明されています。「遊びにかまけて勉強をおろそかにする」「趣味にかまけていたら、仕事が適当になってしまった」などのように使われる「感ける」。
現在では、「何かに気を取られて、もう一つのことがおろそかになる」という意味で使われていますが、かつては「心を惹かれる・感心する」という意味で使われていたそうです。「感ける」は非常に古い言葉で、奈良時代に成立した『万葉集』にも、使用が見られます。
「感ける」の漢字の由来は?
先述の通り、「感ける」の本来の意味は、「心を惹かれる・感心する」でした。「感」という漢字には、「心が動く」という意味が含まれるため、言葉の本来の意味に合わせて、この漢字が当てられたと考えられます。
『万葉集』に見る言葉遊び
『万葉集』が成立した頃、日本にはまだひらがなもカタカナも存在していませんでした。そのため、古代の日本人は様々な漢字を用いて、日本語を書き記したのです。
例えば、『万葉集』において、「恋」は「孤悲」と記されていることが多いです。悲恋を詠んだ和歌が多く残されている通り、恋は一人悲しむものという認識があったため、このような当て字が使用されたのかもしれません。
また、「情八十一」のような、なぞなぞに似た当て字も、万葉集には見られます。「情八十一」は「こころぐく(心苦く)」と読み、心が晴れないことを意味する言葉です。八十一と書いて「くく」と読むのは、掛け算の九九に由来するとされます。
古代中国で誕生した九九は、日本に伝来して以来、言葉遊びにも広く用いられるようになりました。室町時代までは、現在のものとは順番が逆で、9×9から始まって1×1で終わったとされるため、九九という名前になったと考えられています。
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いかがでしたか? 今回の「感ける」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 現在でもよく使われている「感ける」ですが、『万葉集』にも登場するほど、長い歴史を持つ言葉であることが分かりました。
『万葉集』には、そのまま漢字を当てただけのものもありますが、中には遊び心の見られる当て字もあるため、それらを調べてみるのも楽しいですよ。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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