字画も少なく、しょっちゅう⽬にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか心配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか? サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。

簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の記事を読みながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。

「脳トレ漢字」第164回は、「数多」をご紹介します。本や新聞などでもよく見かける言葉ですが、正しい読みについては意外と知られていないかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「数多」とは何とよむ?

「数多」の読み方をご存知でしょうか? 「かずた」ではなく……

正解は……
「あまた」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「数量の多いさま」「程度のはなはだしいさま」と説明されています。数が多いという意味で使われることが多い「数多」ですが、古文の世界では「非常に」「大変」など、程度が甚だしい様子を強調する言葉として使われることもあるのです。

「数多」という言葉の歴史は古く、『万葉集』が作られた奈良時代までさかのぼります。奈良時代では、数量・程度などを表す言葉として使われていましたが、平安時代以降は「数が多い」という意味として使われることがほとんどだったそうです。

また、明治時代までは「数多」を「すうた」と読むこともあったそうですが、現在では「あまた」という読みが一般的になっています。

「数多」の漢字の由来は?

漢字の通り、「数が多い」ことを表す「数多」。「あまる」「あます」などの語幹と同じ語源を持つ「あま」に、接尾語の「た」をつけたものであると言われています。余るほどたくさんあるという意味が由来となって、「数多」という表現が生まれたことが分かります。

実は長い歴史を持つ言葉

水鳥の羽音

「数多」という言葉は、奈良時代から現在に至るまで、同じ意味で使われているということが分かりました。言葉は時代とともに移り変わっていきます。最近まで使われていた言葉も、月日が経てば「死語」と言われてしまったりしますね。

しかし、中には「数多」と同じように、現在まで広く使われている言葉も存在するのです。例えば、「ムカつく」という言葉が挙げられます。「腹が立つ」という意味として、老若男女問わず使われている言葉ですが、これは平安時代後期から使われていたそうです。

当時は、胸やけや吐き気を催しているという意味として使われていましたが、江戸時代に入ってからは「腹が立つ」「癪に障る」という意味として、主に関西地方を中心に使われていたと言われています。また、物怖じするという意味の「ビビる」も、平安時代から使われていたと考えられています。

戦の際に、鎧同士がぶつかって「ビンビン」と音が鳴ったことに由来する言葉で、「萎縮する」「物怖じする」という意味として使われるようになったそうです。源平合戦の際、水鳥の羽音を源氏軍の侵攻と勘違いした平家軍が、慌てて逃げ帰ったという有名なエピソードがあります。

この時の平家は、勢いの増した源氏にビビっていたのかもしれませんね。

***

いかがでしたか? 今回の「数多」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 「数多」には大変古い歴史があることが分かりました。ほかにも、実は古い歴史を持つ言葉はたくさんあります。

実際に調べていただくと、面白いことが分かるかもしれません。

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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