坐骨神経痛の症状で多いもののひとつが殿部(お尻)の痛み。
これは中殿筋のトリガーポイント(発痛点)が原因のことがあります。
中殿筋のトリガーポイントをテニスボールで簡単にほぐす方法をご紹介します。
中殿筋と発痛点=トリガーポイント
中殿筋は、下の図のようにお尻(骨盤)の上半分あたりにある筋肉です。股関節を動かしたり、骨盤を支えたりするはたらきがあります。
腰がつらい時にこのあたりをトントンしたくなったり、実際にトントンすると少し楽になったりすることがあるかもしれません。
ずっと座りっぱなしや立ちっぱなしが続くと、この筋肉に負担がかかってこり固まってしまいます。
中殿筋に限りませんが、筋肉は疲労や運動不足、長時間の同一姿勢など、様々な原因によりこり固まってしまうことがあります。
これが長期間続くと、筋肉の中に発痛点=トリガーポイントができてしまい、そこから強い痛みやしびれなどの症状がおこることがあります。
この“トリガーポイント”が、腰痛や坐骨神経痛の大きな原因となります。
トリガーポイントには好発部位、つまりできやすい部位があります。
【中殿筋とトリガーポイントの好発部位】
図の×印がトリガーポイントの好発部位で、そこから赤い範囲に痛みが出やすくなります。
中殿筋にトリガーポイントができると、この図のように腰や骨盤周り、ベルトのラインあたり、お尻のほっぺたなどに痛みが出ます。
いかがでしょう? これらの図はあなたの痛みと似ていませんか?
このような部位の痛みは坐骨神経痛と診断されることが多いのですが、神経ではなく筋肉が原因でおこることもあるのです。
トリガーポイントについては本連載でもおなじみですが、より詳しくお知りになりたい方は以下のページもご覧ください。
腰痛や坐骨神経痛の原因にもなる「トリガーポイント」とは?【川口陽海の腰痛改善教室 第103回】(https://serai.jp/health/1104848)
テニスボールで殿筋をほぐす
テニスボールでこりをほぐす方法はご存知の方も多いと思いますが、うまく効果を出すにはいくつかポイントがあります。
1.ボールを当てる場所
2. ボールの当て方
3.ほぐす時間
4.ほぐした時の感覚
それぞれについて詳しく解説していきますので、実際にやってみましょう。
※硬式テニスボールをひとつご用意ください。
1.ボールを当てる場所
今回ねらいたいのは中殿筋です。次の図を参考に、大まかな場所を覚えましょう。
図は殿部を後ろから見たところです。テニスボールマークの部分が当てたい場所です。
この図では右だけにマークをつけていますが、もちろん左も同じです。
一番上の赤い線が、だいたいベルトのラインくらい、一番下の赤い線がお尻の下のライン、真ん中の線がその中間です。
当てたい場所は、おおよそ中間ラインより上の部分となります。
痛みのある側を中心にほぐしますが、反対側もある程度ほぐした方がいいでしょう。
注意)実際に使うボールはひとつだけです。
2.ボールの当て方
ボールの当て方には少しコツがあります。
お尻のあたりにボールを当てようとすると、つい腰を持ち上げて上から乗っかってしまうかもしれませんが、この方法だといきなり強い刺激がかかりますので、あまりおすすめできません。
下の画像のように身体を傾けるようにして、ゆっくりとボールに体重を乗せるようにしましょう。
自宅で出来る!腰痛トレーニングより(https://re-studio.jp/dvd/)
そして息を吐いて身体の力を抜いていきます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうなると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
グリグリと転がすように刺激するのは、痛みがある時にやると逆に痛みが増するのでやらないようにしましょう。
また、ちょっとした位置やボールを当てる角度により効く感じが変わると思いますので、「どのへんが効くかな?」とボールを細かくずらしながら探してみてください。
1cmずつくらいずらす感じがいいでしょう。
3.ほぐす時間
テニスボールでほぐすのは、どのくらいの時間が適しているのでしょうか?
筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)で、このテニスボールほぐしを指導する時は、
◎1か所10~20秒程度
◎全体でも5~15分程度
くらいから始めることをおすすめしています。
あまり長い時間おこなうと、その後で、または翌日などにかえって痛みが増したりしますので、はじめは短時間でおこなって様子をみてください。
短時間おこなって大丈夫なようでしたら、少しずつ時間を伸ばしてみましょう。
痛みが残ったり、あとで痛みが増したりするようなら、刺激のしかたが強すぎるか、時間が長すぎますので加減してください。
4.ほぐした時の感覚
ほぐしている時に
『痛気持ちいい』
『ジーンと効く感じ』
『ツボを押されている感覚』
などがある。
またほぐした後に、
『軽くなる感じ』
『すっきりする感じ』
『ホカホカする感じ』
『じわっと血が巡る感じ』
など良い感じがある。
このような感覚があれば効果があります。
逆に
◆ほぐしている時に『すごく痛い』『嫌な感じや不快感』などがある
◆ほぐした後に痛みが残ったり、痛みが増したりする
このような場合は、うまくできていないか、またはテニスボールでほぐすのは適していないと思われますので、やめておきましょう。
この記事があなたの坐骨神経痛改善の一助になれば幸いです。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html