文/印南敦史

加齢とともに顕著になってくる困りごとのひとつに、「夜、トイレで目が覚めてしまう」という問題がある。

 “快眠コーチ”として活動する『働く50代の快眠法則』(角谷リョウ 著、フォレスト出版)の著者も、50代の睡眠改善を行うなかで「夜のトイレ問題」に関する相談を受けることが多いのだという。

実は50代になると、6割の人が夜に1回以上、2割の人が2回以上トイレに行きます(日本排尿機能学会の研究より)(本書36ページより)

だとすれば、夜にトイレに行く人は少数派ではなく、多数派だということになる。とはいえ、この困った習慣が改善されない場合、さまざまなリスクを背負うことにもなるだろう。

まず最初に考えられるのは慢性的な睡眠不足だが、そればかりか、夜間トイレに行く回数が多いほど死亡率が高いという研究結果もあるようだ。また当然ながら、夜間頻尿だと転倒や骨折のリスクも高まることになる。

「夜、トイレに行く回数が増えてねえ」などと冗談まじりに話すことも少なくないだろうが、実際のところかなり危険なのである。

そこで、著者が本書で紹介している「夜のトイレ問題を改善する3つの対策」を参考にしたい。

まず基本となるのが、「寝る前の水分調整」だ。

「寝ている間に汗と呼吸で水分が減るので、寝る前にコップ1杯の水を飲みましょう」といわれることがある。たしかにそのとおりなのだが、50代の方の場合、寝る前にコップ1杯の水を飲むとかなりの確率で「夜のトイレ率」が高くなる。ちなみに寝る前のプロテインも、夜のトイレにつながるらしい。

では、どうしたらよいのだろう?

寝る1時間前までに水分補給は済ませておいて、寝る前は「うがい程度」にすると良いと思います。(本書42ページより)

もちろんトイレに行きたくなる作用のある飲み物にも注意が必要で、その代表格がカフェインとアルコール。とくに50代になるとカフェインによる反応時間が20代の2倍ほど伸びるという研究結果もあるというので、夜はできればノンカフェインの飲み物にしておきたい。

アルコールに関しては、ビールやチューハイなどアルコールが薄く、炭酸水や糖質が入っていると、ほぼ確実に夜のトイレにつながってしまうようだ。

夜の水分調整に次いで行うべきは、「トイレ促進運動」。これは著者の造語だそうだが、下半身に水分を溜めにくくする運動と、おしっこを出す機能を上げるための運動が紹介されている。

まず下半身に水分を溜めない、また溜めにくくするための運動として、「足上げ」があります。これはただ、足を高くするだけです。もし可能であれば足をあげてゆらゆらしてください。(本書44ページより)

それだけでかなり下半身の水分が上がってきて、寝る前にトイレに行きたくなるという。ただし寝る1時間前にトイレに行くと、むしろ夜のトイレも近くなるので注意が必要。

そして、おしっこに行く機能を高める運動として紹介されているのがスクワットだ。運動のなかでもっとも全身の筋肉に効き、ホルモン分泌の低下を防ぐ最強のトレーニングだという。

スクワットは、1つだけ運動を取り入れるとするなら、トレーナー100人中100人が選ぶ種目です。もちろん夜のトイレ回数を減らすにもうってつけです。(本書46ページより)

さて、夜のトイレ対策の3つ目は、「体を温める」である。基本的に体や部屋が温まると、トイレの回数が減ることがわかっているのだそうだ。

体を温めるための対策で最初におすすめするのは「腹巻き」です。
エグゼクティブやトップアスリートで腹巻きをしている人は実は多いです(公表していませんが)。
腹巻きをすることで特に内臓が温まります。
科学的に証明されているわけではないですが、腹巻きをすることで、多くの50代の方の夜のトイレ回数が改善されます。それだけでなく、睡眠の質や寝起きの疲労感が軽減したという声も多く聞かれます。(本書47ページより)

おすすめは、肌触りがよく、保温性も高い「綿」の腹巻き。腹巻きに抵抗があるなら、「温かいパジャマ」もいいという。

そしてもうひとつ、「室温を上げる」こともお忘れなく。

産業医科大学と北九州市立大学が1300人を対象に調査したところ、室温を2.5℃上げると、過活動膀胱(トイレにしょっちゅう行きたくなる症状)の有病率がなんと4割も減ったという研究結果があります。
特に冬ですが、部屋を暖かくして寝ると、トイレの回数が減ると現場でよく聞きます。(本書49ページより)

「夜のトイレ問題」はなかなか厄介なだけに、これらの方法はぜひとも試してみたいところだ。


『働く50代の快眠法則』
角谷リョウ 著
フォレスト出版

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文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( ‎PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。

 

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