字画も少なく、しょっちゅう目にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか心配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか?
サライ世代ともなりますと、いったん思い込み認知をしておりますと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の動画を見ながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。
「脳トレ漢字」第131回は、「玄人」をご紹介します。「玄人」という一単語だけでなく「玄人向け」や「玄人筋」といった使い方でも、見聞きしたことがあるのではないでしょうか。
また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「玄人」はなんと読む?
「玄人」という漢字、読み方に心当たりはありますか? 音読みをすれば「げんじん」ですが……
正解は……
「くろうと」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「技芸などに熟達した人」と説明されています。何かに精通している人、すなわち専門家のことです。「ユニークな造形が、玄人受けする」「今作は、玄人好みの仕上がりとなっていた」などのように使います。
また「玄人」は、「くろうと」のほかに「くろと」と読むこともできます。ただ「くろう“ど”」と濁るのは読み間違いですので、注意しましょう。
「玄人」の語源とは?
「くろうと」はなぜ「玄人」と書くのでしょうか。その語源を確認していきましょう。
「玄人」の語源は諸説ありますが、一つには対義語である「素人」に由来するとされます。「玄人」の対義語は「素人(しろうと)」ですが、その語源は「白人(しろひと)」です。「白人」の対義語が「黒人(くろひと)」であり、「くろうと」はこの「くろひと」が音変化した語だとされます。
また、歌舞伎役者の技芸を評価する『役者評判記』での位の一つ「黒吉」を「黒い」と言い、転じて、その道に通じている人を「くろひと」、「くろうと」といったとされます。もう一説には「一芸に苦労した人」という意で「くろうと(苦労人)」からです。それを「道の幽玄の所に達した」という意から「玄人」と書くに至ったものとされます。
「玄人」と類義語の違い
「ある分野の学問・仕事などに精通し、そのための能力、技術などを身に付けている人」を意味する「玄人」。「玄人」と共通の意味を持つ言葉に「専門家」「プロ」「スペシャリスト」が挙げられます。ただ、それぞれ細かな意味合いが異なるのをご存知でしょうか。
「専門家」は、知識が広く、依頼したり任せたりできる人を指します。また「プロ」は、職業として報酬をもらう意味が強いです。そして「スペシャリスト」は、「専門家」「プロ」よりも、ある特定の分野での技術、知識、能力をより高度に身に付けている人を指し、多くの場合、先端的分野について使われます。
これに対して「玄人」は、やや俗語的です。多くの場合、趣味や芸能の世界、水商売などの分野で使われます。このように比較することで、「玄人」の意味合いが浮き彫りになるのではないでしょうか。
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いかがでしたか? 今回の「玄人」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 語源や類義語を知ることで、普段何気なく使っている言葉の理解が深まるのではないでしょうか。
来週もお楽しみに。
文/トヨダリコ(京都メディアライン)
アニメーション/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
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