十割蕎麦の取材のために日本全国の名店を回り、蕎麦打ち職人の方々にお話を伺って、蕎麦の世界はなんと奥が深いのだろうと、あらためて感心しました。
つなぎを使わず、蕎麦粉を細く長くつなげるために、名人たちは、想像もつかないような工夫を積み重ねています。蕎麦粉の製粉の仕方を日々試行錯誤したり、蕎麦打ちの道具を独自のものにしたり、あるいは昔から続く伝統の打ち方の中に、その答えを見いだしたり…。
でも、考えてみれば、蕎麦はもともと蕎麦粉10割で打っていたものなのですから、たしかに古い伝統の技術の中に必要にして十分な技は含まれているはずなのですね。
そういう意味で、福島県の会津・檜枝岐の「裁ち蕎麦」の伝統技術に、製図用T定規を使って自作した蕎麦切り用の道具を組み合わせた、
兵庫県篠山市『一眞坊』で使われている自作した蕎麦切り用の道具
の工夫は衝撃的でした。着眼点が凄いですね。
さらに、その蕎麦を味わってみて、他のどんな方法で打った蕎麦とも違う、個性的な蕎麦であったことに、もう一度、驚かされました。
日本各地には蕎麦の名店がまだまだあります。蕎麦屋巡りをするのがますます楽しみになりました。