文/鈴木拓也
神奈川県で整体院を営む小林篤史さんは、テレワークが普及してから、「肩こり、腰痛、不調などに悩む新規の患者さんがかなり増えた」と実感している。
小林さんによれば、ほとんどの場合、その原因は「姿勢の悪さ」。テレワークでパソコン・スマホに向かう時間が増えたのが、要因として大きいと説く。
いったん悪い姿勢が定着してしまうと、元に戻すのは一筋縄ではいかない。筋トレや矯正ベルトといった従来的な方法では、一時的に良くなったように見えても、またすぐ元に戻ってしまう。
ねこ背矯正のプロとして知られる小林さんがすすめるのは、「おさんぽ整体」なるセルフケア。小林さんの著書『歩くだけで効く! おさんぽ整体』(三笠書房)に、その詳しいやり方が解説されている。
不調に悩む人に共通する骨盤の問題
本書で小林さんは、姿勢の問題から不調に悩んでる人は、「骨盤前傾タイプ」と「骨盤後傾タイプ」に分かれるという。
前者はおしりが出っ張り、反り腰になりやすいタイプ。後者はおしりが引っ込み、膝が曲がりやすく、がに股にもなりやすいタイプだという。
どちらのタイプかは、簡単にわかる。鏡の前に横向きで立ち、普段の姿勢で立つ。その際に、自分のおしりが出ているか、引っ込んでいるかを確認するだけ。出ていれば骨盤前傾タイプ、引っ込んでいれば骨盤後傾タイプになる。
そして、正しく健康な姿勢とは、前傾も後傾もしていない骨盤がまっすぐ立っている状態。このとき、姿勢は次のようになっているという。
・耳の穴、肩の中央、股関節のつけ根(大転子)、くるぶしの4点が一直線上になる
・あごは自然にひき、頭のてっぺんが糸でつられているかのようにまっすぐ立てる
・おなか、おしりは出ておらず、おへそのあたりに軽く力が入っている
おさんぽ整体とは、まさにこの骨盤を立てることが主眼となっている。その方法は3種類。「おしり押さえウォーク」「おなか押さえウォーク」「だら~んウォーク」と、小林さんは名づけている。
これらはいずれも、特定のフォームで1分間歩くだけ。非常に手軽だが、ふだん筋肉を使わず固まっている人は、ストレッチを事前に行う。例えば骨盤前傾タイプの人なら、「太もも前面伸ばし」。やり方は、椅子の背もたれや手すりにつかまりながら立ち、左足の甲を左手で持つ。両ひざを寄せたまま左足を後ろに引き上げ、10秒キープ。これを右脚も同様に行うだけでOK。
いつもより5cm先に足を踏み出す
では、「おさんぽ整体」の1つ、「おしり押さえウォーク」を紹介しよう。可能なら外に出て、人通りの少ない公園や道に行く。あとは以下の要領で歩くだけだ。
1 両手の手のひらをおしりのほっぺたに当てる。
2 手のひらでおしりを軽く押しながら、1分間歩き続ける。
とてもシンプルなセルフケアだが、いくつか注意したいポイントがある。まず、骨盤を立てることを意識する、というのが1点。また、できるだけ大股で足を前へ運ぶことを意識する。この点について小林さんは、次のように述べている。
おさんぽ整体は、できるだけ歩幅を大きくとって、前へ足を大きく踏み出すことが大事なのですが、具体的にどれだけ大きな歩幅で歩けばいいかというと、理想はいつもより5cm先に足を踏み出します。1歩の質が、運動効果を高め、飛躍的な効果をもたらすのです。(本書より)
歩幅を伸ばすことのメリットとして、体幹力の向上、股関節周辺筋肉群の筋力アップ、股関節の柔軟性向上を挙げている。もちろん、骨盤を立たせての正常な歩き方と姿勢の改善も期待できる。
「10のテクニック」で不調を早期改善
小林さんは、おさんぽ整体とあわせて行うことで、不調をより早く改善できる「10のテクニック」も挙げている。
といっても、10種をすべて行う必要はなく、やってみたいものを1つ、2つでもいいから、習慣づければいいという。
その1つが「1cmジャンプ」。多くの現代人は、骨盤がまっすぐ立っていないことに加えて、長時間靴を履いての生活で、足に様々なトラブルを抱えているという。例えば、外反母趾、内反小趾、浮き足など。これらに共通するのは、足指の変形だ。その状態を、小さなジャンプで改善させるというもの。
やり方としては、力をぬいて1~3cmほどジャンプを繰り返す。着地の際に、足指で床(地面)をつかむことを意識して行う(足腰に自信がない人は、転倒防止のため椅子の背や手すりなどにつかまって実施)。副次的な効果として、全身の血液循環が改善し、冷え性の予防改善にも繋がるという。
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ここでは、3種類のおさんぽ整体のうち1つだけを紹介したが、すべてをやったとしても、1日たったの3分。運動習慣のない人でも、何かのついでにできてしまうこのエクササイズ、姿勢の悪さで不調気味の方は、やってみてはいかがだろう。
【今日の健康に良い1冊】
『歩くだけで効く! おさんぽ整体』
文/鈴木拓也 老舗翻訳会社役員を退任後、フリーライター兼ボードゲーム制作者となる。趣味は神社仏閣・秘境巡りで、撮った映像をYouTube(Mystical Places in Japan)に掲載している。