義時の頼れる弟・北条時連（時房）が辿った生涯と人物像に迫る【日本史人物伝】

はじめに－北条時連（時房）とはどんな人物だったのか

北条時連は、執権・北条時政の三男にあたる鎌倉前期の武将です。名を「時連（ときつら）」と称しましたが、後に「時房（ときふさ）」と改名しました。鎌倉幕府において初代連署（れんしょ）を務め、執権である泰時を助けて執権政治の基礎を固めた人物です。

NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』では、末っ子ながら、やがて義時も政子も頼る大政治家になる、義時の異母弟（演：瀬戸康史）として描かれます。

目次
はじめに－北条時連（時房）とはどんな人物だったのか
北条時連（時房）が生きた時代
北条時連（時房）の足跡と主な出来事
まとめ

北条時連（時房）が生きた時代

北条時連（時房）が生きた時代は、平安末期から鎌倉初期にあたります。日本初の武家政権として鎌倉幕府が起こった時代に、その中核を担った北条氏に生まれた時連（時房）。異母兄弟である北条義時や政子を中心に執権政治が確立されていく中で、時連（時房）もまたその基礎を固める役割を担いました。

北条時連の足跡と主な出来事

北条時連（時房）は、安元元年（1175）に生まれ、仁治元年（1240）に没しています。その生涯を出来事とともに紐解いていきましょう。

北条時政の子として生まれる

北条時連は、安元元年（1175）に北条時政の三男として生まれました。義時や政子の、10歳ほど年の離れた異母弟にあたります。文治５年（1189）４月、元服して「五郎時連」と称し、７月には奥州征伐に従軍しました。

正治元年（1199）の頼朝の死後、嫡男である頼家が２代鎌倉幕府将軍となります。時連は蹴鞠が堪能だったことから頼家の側近として仕え、建仁２年（1202）に「時房」と改名します（以後「時房」と表記）。

権力闘争と北条氏

そんな中、幕府内には「十三人の合議制」が敷かれ、有力御家人たちの権力闘争の場となっていきます。はじめに梶原景時が失脚していき、潜在していた御家人間の対立が表面化し始めました。建仁３年（1203）には、頼家の外戚として権勢を握った比企能員（よしかず）とその一族が北条時政の謀略によって滅ぼされる事件が起こりました（＝「比企氏の乱」）。将軍・頼家が修禅寺に幽閉されましたが、側近であった時房は処罰されずに済んでいます。

その後も、幕府の実権を独占しようとする北条氏は、御家人・畠山重忠にあらぬ疑いをかけて誅します。時房は北条氏としてこれに従軍。その後、父である北条時政とその後妻・牧の方による平賀朝雅を将軍に据えようとする企てが発覚します。それにより時政は伊豆国に追放され、政界を去ったのでした。

武蔵・相模の国務を掌握

承元４年（1210）には、幕府膝下の武蔵国の国守となり事実上の守護を兼ねます。その後の建保元年（1213）５月には、「和田氏の乱」の功により上総の飫富荘（おふのしょう）を与えられ、相模守に転じました。

さらに翌年には、姉・政子の熊野詣に随行。政子の上洛は、子ができない将軍・源実朝の跡継ぎについて、朝廷に親王将軍の斡旋を相談するためだったとされます。帰途、政子は京都で後鳥羽上皇の乳母・藤原兼子（けんし）に会い、上皇の皇子を実朝の後継者に迎えることを内約したのでした。

六波羅探題の任に就く

承久元年（1219）正月、将軍・実朝が殺されると、将軍跡継問題が発生。政子は上皇の皇子を将軍に迎えたいと奏上しましたが、対する上皇は摂津国長江・倉橋両荘の地頭の改補（前任者を廃し、後任者を補任させること）を求めたのでした。３月、兄である執権・義時の命を受け、時房は使者として千余騎を率いて上洛。上皇の要求に対する拒否を伝え、さらに将軍の下向を請うことで、緊迫した公武交渉の一翼を担いました。

しかし公武関係が険悪化すると、承久３年（1221）５月、後鳥羽上皇が鎌倉幕府、主に義時に反旗を翻します。この「承久の乱」が起こると、時房は義時の子で自身の甥にあたる北条泰時（やすとき）とともに東海道の大将軍として進撃。６月には、後鳥羽上皇軍を破って入京しました。

乱後、後鳥羽上皇が隠岐島に流されると、時房・泰時はそのまま京に止まり、初代の「六波羅探題」の任についたのでした。六波羅探題とは、京都に設置された鎌倉幕府の出張機関です。南方・北方の２名からなり、京都の警護、朝廷の監視および尾張（のち三河）・加賀以西の政治・軍事を管掌しました。

【政子の死去した後の執権・泰時の協力者としての姿とは？　次ページに続きます】