文/印南敦史
いうまでもなく朝食は、脳や体を働かせるために必要なエネルギー源である。しかし、そうだと頭でわかっていても、なかなか朝食に対して積極的になれないという方がいるのも事実だ。
若年層にも朝食を食べない人は多いし、年齢を重ねるとなおさら、「朝から食べる気がしない」と感じるようになってくるものかもしれない。
だからこそ、「おにぎりと味噌汁」の朝食をすすめたい――。そんな思いで書かれたというのが、今回ご紹介する『おにぎりと味噌汁だけ – ほぼ10分で完成! 食べて健康になる朝食献立』(表 洋子 著、柴田重信 監修、ワニブックス)だ。
料理家である著者によれば、最新の研究でも、朝にご飯と味噌汁を食べると心身や脳によい影響があることが実証されてきているのだという。
おにぎりは具材を混ぜ込むことで食べやすく、手軽に栄養が摂れます。
具材を大きめにすれば噛む回数が増えるので、集中力UPの効果も。
白米を玄米、雑穀米などに変えれば、より栄養価が高まります。
そこに味噌汁を加えることで、腸内環境が整い、体温も上がり、1日を元気に過ごすことができます。(本書「はじめに」より)
そこで、家にある食材を活用した「おにぎりの献立」を紹介しているわけだ。つまりはレシピが中心なのだが、ここでは監修を手がけている「時間栄養学」の第一人者、柴田重信氏の解説に焦点を当て、「おにぎりと味噌汁」を朝食に取り入れることのメリットに焦点を当ててみたい。
朝食を食べることで体内時計が整う
栄養について考える際には、「どんな食材を、どれだけの量食べるのか」だけではなく、「いつ食べるのか」を考えることが大切だという。
人は、自らの体内時計の影響で、夜型の体になっていく傾向があります。そのため、遅れがちな体内時計を整える必要があるのです。(本書8ページより)
そこで効果的なのが朝食。朝になって食事をとれば、体に朝だと気づかせることができるため、体内時計がリセットされるわけだ。
朝食を食べないとよくないことばかり
逆にいえば、朝食を食べないと体内時計がずれてしまうことになる。その結果、体温も上がらず、脳の働きもにぶくなる「朝食欠食時差ボケ」状態になってしまうのだ。そればかりか、食べない人は肥満になりやすく、抑うつ傾向が多くみられるという研究結果もあるのだとか。
逆に、朝食を食べることで、体内時計が整い、免疫力が高まり、心身ともに良い影響があることがわかっています。(本書9ページより)
まず食べたいものは「ご飯」
体内時計を整えるため朝食に食べるべきものとして、柴田氏はご飯をすすめている。
体内時計を整えるためには、重要なのはインスリンの分泌です。ご飯に含まれるデンプン質が消化され、胃や小腸でブドウ糖に分解されることで、膵臓からインスリンが分泌されます。(本書9ページより)
時間がないことの多い朝でも、おにぎりにすれば食べやすく、効果的に体内時計を整えることができるわけだ。
和食を食べてより朝方に
朝食に和食を食べている人と、シリアルなどを食べている人をくらべたところ、前者のほうが早寝早起きの習慣がついている人が多いことがわかったのだそうだ。また、たんぱく質豊富でバランスのよい食事をとれている人も多いようだ。
朝食は毎日のことなので、体内時計を整え、健康的に暮らすために、ご飯や味噌汁などといった和食を作って食べることを心がけましょう。(本書9ページより)
味噌汁で足りない栄養をプラス
ただ、いくら和食がいいとはいっても、毎朝きちんと焼き魚を焼いたり、おひたしをつくったりするのは大変なこと。そこで頼りになるのが味噌汁である。
味噌の主原料である大豆には、植物性たんぱく質が多く含まれており、その大豆を発酵させるとアミノ酸やビタミンなどが生成される。つまり、多くの栄養素を含む味噌を手軽に、毎日続けてとるためには味噌汁が最適なのだ。
おにぎりと合わせるだけで、立派な和食の朝食が完成するうえ、味噌汁を飲むことで、腸内の善玉菌が活性化し、腸内環境が整うことも期待できます。足りない栄養を含む具材を入れてアレンジすることができるのも魅力です。(本書10ページより)
朝食に欠かせないたんぱく質
たんぱく質の摂取は、健康な生活を送るために欠かせない。いうまでもなく、人間の体はたんぱく質でつくられているからだ。しかも、たんぱく質は夜よりも朝に摂るほうが効率よく体に消化・吸収されるため、朝食に積極的に取り入れるほうがいい。高齢者の場合は、筋力低下を予防し、健康寿命を伸ばすことにもつながるという。
卵、肉、牛乳などの動物性たんぱく質は脂質が多いので、植物性たんぱく質を組み合わせて摂ることが大切です。味噌には効率的に消化吸収できる植物性たんぱく質が多く含まれますので、朝食にはやはりおにぎりと味噌汁の組み合わせが適していることがわかります。(本書11ページより)
このように、おにぎりと味噌汁の効能は思った以上に多そうだ。しかも手間はかからないのだから、本書のレシピを参考にしながら実践してみてはいかがだろうか?
文/印南敦史 作家、書評家、編集者。株式会社アンビエンス代表取締役。1962年東京生まれ。音楽雑誌の編集長を経て独立。複数のウェブ媒体で書評欄を担当。著書に『遅読家のための読書術』(ダイヤモンド社)、『プロ書評家が教える 伝わる文章を書く技術』(KADOKAWA)、『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)、『人と会っても疲れない コミュ障のための聴き方・話し方』『読んでも読んでも忘れてしまう人のための読書術』(星海社新書)、『書評の仕事』(ワニブックスPLUS新書)などがある。新刊は『「書くのが苦手」な人のための文章術』( PHP研究所)。2020年6月、「日本一ネット」から「書評執筆数日本一」と認定される。