文・石川真禧照(自動車生活探険家)
若い男性が乗るイメージの強かったスポーツカーだが、実用性一辺倒の車に飽きたシニアや女性の乗り替えも増えている。初代に続きトヨタとの共同開発で誕生した2代目は、より幅広い層への訴求が期待できる。
車好きなら一度は所有してみたいのがスポーツカーだ。実用性を犠牲にしても、ハンドルを握って走る楽しさを重視した車や、ボンネットや屋根が低く、美しいスタイルを重視した車など、スポーツカーは乗るだけでなく、見るだけで楽しくなる車が多い。
車を開発する立場の人たちも思いは同じ。一度はスポーツカーを設計してみたいと思っている。しかし、現実には、開発費用と販売台数を考えると、量産車としてはむずかしいことが多く、大抵は計画倒れになってしまう。
でも同じ思いの自動車メーカーが資本提携したときにスポーツカー開発が現実になった。共同開発すれば開発費用もお互い半分で済む。2012年に登場したトヨタ86(ハチロク)とスバルBRZはこうして誕生した。
両社の良さをうまく取り込む
新車は懐に余裕のある40~50代が購入、最近は中古車も多く出まわり、幅広い層に購入されていたが、発売から10年目を迎え、新型車が登場した。一代限りのスポーツカーではなく継続して開発が続けられていたのだ。もちろん2代目もトヨタとの共同開発。発売前の試作車試乗会では、初代よりもさらに両社の技術者たちが力を合わせて車づくりに邁進していたことが感じられた。エンジン、サスペンション、駆動系の開発など、互いの良い部分を主張し合い、それをうまく取り込んで完成した。
但し、2代目は両社のスポーツカーに対する思惑が違った。トヨタはモータースポーツ好きの社長の意向が反映され、より玄人志向に。スバルは一般公道で楽しめるスポーツカーを目指した。
前方監視技術アイサイト搭載。誤発進防止などの安全技術も
一般公道での走りの楽しさを追求したBRZは、走り出してハンドルを切りこんだときから判る。車体の前半部分が軽く、ハンドルの動きに対して前輪とボンネット部分がスーッと向きを変えてくれる。さらに山間路などカーブが多いところでは、車体の後半部分が安定しており、しっかりと後輪が踏んばっているのが体感できる。乗り心地も犠牲になっていない。
これはサスペンションの構造材や取り付け位置をスバル独自に設定した効果と言える。
6速自動変速機の作動もキメ細かい。「スポーツ」モードを選んで走ってみると変速する頃合いが小気味良い。コンピュータの制御が巧みなのだ。「スノー」モードは試せなかったが、もともと雪道は得意なスバルなので、後輪駆動ではあるが、安全なスポーツ走行を楽しませてくれるに違いない。
安全性に関しては、スバルといえばふたつのカメラによる前方監視の「アイサイト」の技術が有名だが、今回もその技術は継承されている。それもスポーツカー専用に設計し直しているそうだ。もちろん誤発進防止や全車速追従機能付き巡航制御などの先進安全技術も搭載されている。
スバル/BRZ S
全長×全幅×全高:4265×1775×1310mm
ホイールベース:2575mm
車両重量:1290㎏
エンジン:水平対向4気筒DOHC 2387cc
最高出力:235PS/7000rpm
最大トルク:25.5kg-m/3700rpm
駆動方式:後輪駆動
燃料消費率:11.7km/L(WLTCモード)
使用燃料:無鉛プレミアムガソリン 50L
ミッション形式:6速AT
サスペンション前:ストラット式、後:ダブルウィッシュボーン式
ブレーキ形式:前・後:ベンチレーテッドディスク
乗車定員:4名
車両価格:343万2000円
問い合わせ先:お客様センター 0120・052・215
文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2022年2月号より転載しました。