日本に生まれれば、一度は口にしたであろう“お茶漬けの素”。その足跡から地域性や現代の展開を知る。

朝食にもよい「ツナ缶茶づけ」。作り方は、ご飯に「お茶づけ海苔」と油をきったツナ缶(大さじ1)を乗せ、お湯をかけたら黒胡椒を一振りする。
シンプルゆえに応用が利く長寿商品、「お茶づけ海苔8袋入」(希望小売価格257円)。永谷園はさまざまにアレンジしたお茶漬けを提案。

昭和27年に発売された「お茶づけ海苔」の具は、抹茶、海苔、あられ、塩、調味料など。来年は70周年となる現在の製品と、ほとんど変わっていないという。

「具のひとつ、あられは創業者の父の出身地、京都・宇治ではお茶漬けに『ぶぶあられ』がつきものだったことと、海苔の湿気を少しでも防ぐ吸湿効果が偶然にも判明したためといわれています」と永谷園広報室の古谷萌さん。江戸時代中期、京都の宇治で煎茶の製法に大功のあった永谷宗円の子孫が、創業者の永谷嘉男氏である。

大ヒットとなった「さけ茶づけ」の登場は昭和45年。人気具材のメニュー化の鍵となったのが、食品内の水分を凍結させ、さらに真空にすることで氷を瞬時に昇華させて乾燥するフリーズドライ技術の開発だった。

「従来の乾燥方法では具材の戻りに時間がかかっていたのですが、この技術によってお湯を加えるだけですぐに元の美味しさを復元できるようになりました」

技術の進歩と相まって「梅干茶づけ」(昭和47年)、「たらこ茶づけ」(昭和51年)、「わさび茶づけ」(平成元年)とロングセラーの定番商品が登場する。

1960年代前半、「お茶づけ海苔」は手で詰めて生産されていた。写真は東京・六郷工場(当時)の様子。

地域により具材の人気に違いがあるのだろうか。

「当社製品に限りませんが、北海道・東北では『さけ』『たらこ』、東海と四国以西の西日本では『梅干』の人気が高いですね。また都市部(関東・京浜・近畿)ではさまざまな味の『詰め合わせ』タイプがご支持いただいています」

シンプルゆえ応用が利く。現代では、自分好みに工夫して朝食に食されることも多いという。お茶漬けは、時代を超えた国民食といえそうだ。


今も「東海道五拾三次カード」がセットで揃う

歌川広重(初代)の「東海道五拾三次」カード。お茶づけ海苔ほか、対象商品の応募マークを3枚ひと口で応募する。詳細は製品参照。

『永谷園』といえば、「東海道五拾三次カードを集めたなぁ」という方も多いのではないだろうか。
カードのおまけが付いたのは昭和40年のこと。令和の今、全55枚のフルセットが毎月1000名に当たるキャンペーンが行なわれている(2025年1月末日まで)。懐かしのカードを一度に揃えるチャンスを逃さないようにしたい。

※この記事は『サライ』本誌2021年11月号より転載しました。

取材・文/五反田正宏 写真提供/永谷園

 

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