夏の冷房による冷えから足に痛みやしびれが出てしまったり、坐骨神経痛が悪化してしまったりすることがあります。
冷やさない、温めるというのが基本ですが、ツボを使うとより効果的に改善できます。
今回はお灸やテニスボールを使って痛みやしびれを改善する方法をご紹介します。
なぜ冷えると痛むのか?
冷えると痛んだりしびれたりしやすくなることは感覚的にわかるかもしれませんが、なぜ冷えると痛みやしびれがおこるのかはあまり知られていないかもしれません。
冷房や冬の寒さなどで冷えても、体温が大きく下がるわけではありません。
人間の身体は全身を温かな血液が巡ることで温まりますが、末梢の循環が悪くなると新鮮な血液が回ってこないため手足が冷えてきます(動脈性の冷え)。
また末梢まで巡った血液が再び心臓へ返ることで、新たに心臓は温かい血液を巡らせますが、巡りが悪くなると末梢に古い血液が充満することになり冷えてきます(静脈性の冷え)。
また血液とは別に、循環が悪くなると皮下組織などに余分な水分(リンパなど)が貯まってしまいます。するとその水分が冷やされて冷えてくることもあります(水分貯留による冷え)。
いずれにしろ血液の巡りが悪くなると、末梢に酸素や栄養分がいきわたらなくなります。
末梢に十分な酸素や栄養が届かなくなり老廃物が排出されないと、血液中に発痛物質が産生され痛みがおこってしまいます。
また筋肉に酸素や栄養が届かないと、筋肉が緊張して凝り固まり、それがトリガーポイントとなって痛みをおこしてしまいます。
足の冷えを改善するツボにお灸が効果的
このような冷えによる痛みやしびれには、冷えに効くツボに市販のお灸をすることで改善することができます。
お灸は、次のようなツボに用いるのが効果的です。
足の冷えに効果的なツボには、足三里(あしさんり)や三陰交(さんいんこう)などがあります。
足三里は、ひざのお皿のすぐ下、外側のくぼみに人さし指をおき、指幅4本そろえて小指があたっているところです。
三陰交は、内くるぶしのいちばん高いところに小指をおき、指幅4本そろえて、人さし指があたっているところです。
※以上せんねん灸HP(https://www.sennenq.co.jp/knowledge/tubo13.html)より
これらのツボに、市販のお灸を使うと足の血の巡りが回復し、冷えによる痛みやしびれの改善に効果が期待できます。
ドラッグストアなどに、シールで貼り付けて手軽に使用できるタイプのお灸が売られていますので、それを使うと良いでしょう。
上画像のタイプのお灸は、紙製の円形台座の中央に穴が空いていて、その上にお灸(もぐさ)が紙巻きタバコのようについています。
台座裏側のシールでツボに貼り付けて上のお灸に火を付けると、燃えすすむにつれて熱が下の穴から皮膚に伝わり、数十秒から数分ツボに温熱刺激が加わります。
温熱刺激とともにお灸の有効成分が皮膚から体内に浸透し、血管拡張や血行改善などの効果が得られます。
【使用イメージ】
台座が燃えることはなく、やけどすることはほとんどありませんが、商品によって熱の強弱がありますので、はじめは弱めのものから試すと良いでしょう。
また煙や香りなども生じますので、換気を十分にしてください。
※お灸の使用にあたっては、取り扱い説明書やメーカーHPなどをよく確認し、灰皿なども用意して火気の取り扱いに十分注意しながらおこなってください。
小殿筋をほぐすと足の血行が良くなる
また、足の冷えによる痛みやしびれには、股関節の奥にある小殿筋という筋肉をほぐすことも大変効果があります。
“小殿筋”は股関節の一番奥にあり、股関節を動かしたり支えたりする役割があります。
しかし、運動不足や長時間座りっぱなし、冷えなどが続くと凝り固まってしまいます。
そうすると筋肉の中にしこり状の“発痛点=トリガーポイント”ができてしまい、そこから強い痛みやしびれなどの症状が出てきます。
この筋肉が緊張してトリガーポイントが生じると、以下の図のように足全体に痛みやしびれをおこすことがあります。
またこの筋肉が緊張すると足全体の血行が悪くなりますので、逆に冷えやすくなるということもあります。
したがって小殿筋をほぐすと、トリガーポイント由来の痛みしびれや、足の血行不良による痛みしびれの改善に効果が期待できます。
トリガーポイントについては本連載ではおなじみですが、詳しくお知りになりたい方は以下のページをご覧ください。
腰痛・坐骨神経痛のトリガーポイント治療(https://www.re-studio.jp/backpain/pg122.html)
小殿筋をほぐすには様々な方法がありますが、筆者の腰痛トレーニング研究所(https://www.re-studio.jp/index.html)では、テニスボールでほぐす方法をおすすめしています。
それでは実際にテニスボールを使ってほぐしてみましょう。硬式のテニスボールをご用意ください。
自宅で出来る!腰痛トレーニングDVDより(https://www.re-studio.jp/dvd.html)
床に仰向けになり、両膝を立てます。バスタオルやヨガマットなどを敷くとより良いでしょう。
仰向けになった時に、上の図のように骨盤の骨の飛び出ているところを探してください。
そこから斜め下のところが小殿筋をねらうポイントになります。
おおよそポケットの入口あたりで、関節の隙間の部分になります。
そこにボールを当てながら、下の画のように、膝を開くようにして優しく体重をかけていきます。
これだけでもかなり効く感じがあるかもしれません。
これで痛みが強いようなら、脚を戻したりまた体重をかけたりと繰り返して刺激してみましょう。
大丈夫な場合は、上の画のように、横向きに寝るようにしてテニスボールにより体重をかけてみましょう。
できるのであれば、完全に真横になって体重を乗せてみます。
ボールがあたっているところや、そこから脚にかけてじんわり痛気持ち良い感じがあればベストです。
息を吐いて身体の力を抜きます。とくにボールが当たるところの力をうまく抜くようにしてください。
多少痛みがあったりすると、つい当てている部分に力が入ってしまうと思いますが、そうすると筋肉が固まってうまくほぐれません。
あえて力を抜くようにすることで、奥の方までほぐすことができます。
グリグリと転がすように刺激するのは、痛みがある時にやると逆に痛みが増したりしますので、やらないようにしましょう。
10~20秒くらい刺激したら元に戻ります。
すると、ボールを当てたところや足全体にホカホカする感じや、軽くなる感じがあるでしょう。
この時に“小殿筋”やその周囲の血行が良くなり、筋肉がゆるんでいきます。
逆に重だるい感じや不快な感じが残る場合は、刺激が強すぎるかもしれません。体重のかけ方を軽くして、あくまで痛気持ち良い程度におこなってみましょう。
それでも痛過ぎたり、かえって痛くなったりするようであれば中止してください。
ホカホカと血行が良くなる感じが少し落ち着いたら、またおこなってみましょう。
これを何度か繰り返していきます。
終わったあとに痛みやしびれが軽くなる感じなどがあればOKです。
やりすぎると逆に痛みが増すことがあるので注意してください。
※ご注意)痛みのためにボールを当てることができない、またはボールを当てると症状が悪化する時はやめてください。
以下の記事でも様々な腰痛・坐骨神経痛改善エクササイズをご紹介しております。
ぜひお読みください。
腰痛改善には骨盤を整える股関節のストレッチ【川口陽海の腰痛改善教室 第70回】(https://serai.jp/health/1034491)
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拙著「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい」が、全国書店にて発売となっています。
お読みいただけると幸いです。
文・指導/川口陽海 厚生労働大臣認定鍼灸師。腰痛トレーニング研究所代表。治療家として20年以上活動、のべ1万人以上を治療。自身が椎間板へルニアと診断され18年以上腰痛坐骨神経痛に苦しんだが、様々な治療、トレーニング、心理療法などを研究し、独自の治療メソッドを確立し完治する。現在新宿区四谷にて腰痛・坐骨神経痛を専門に治療にあたっている。著書に「腰痛を治したけりゃろっ骨をほぐしなさい(発行:アスコム)」がある。
【腰痛トレーニング研究所/さくら治療院】
東京都新宿区四谷2-14-9森田屋ビル301
TEL:03-6457-8616 http://www.re-studio.jp/index.html