取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「仕事人間の母親は仕事を引退してから変わってしまいました。その姿は今後自分の未来の姿のような気がして……、目を背けてしまうところがあります」と語るのは、千夜子さん(仮名・39歳)。彼女は就職のときに親元を離れて、今は都内で一人暮らしをしています。
小さい頃は寂しかったという気持ちが残っている
千夜子さんは広島県出身で、両親と6歳上に兄のいる4人家族。物心ついた頃には両親は共働きをしており、近所で暮らす祖父母の家で過ごしていたと言います。
「いつから預けられているのかはわからないんですが、覚えているのは夜に迎えに来てくれる母や父の姿。祖父母のことは大好きだったものの、母や父が迎えに来てくれたときはとても嬉しかったです。やっと家に帰れるんだっていう安心感があった記憶が残っています」
1人で留守番ができる小学校高学年からは、祖父母の家に行くこともなくなります。しかしどうしても電気のついていない家に入るのが嫌で、頻繁に幼馴染の家で遅くまでお世話になっていたそう。
「4年生になったあたりに祖父が体調を崩して、家に遊びに行けなくなったんです。もう大きいから大丈夫でしょうと、いきなり家で1人で過ごすことになったんですが、どうしても誰もいない家に帰りたくなくて……。幼馴染の家に入り浸っていました。彼女の家は母子家庭で親は働いていなかったんですが、兄妹が多くていつもその兄妹の中に混じっていました。私にも兄はいましたが年齢が離れているから小学生の頃には兄は高校生になっていて、ケンカはしないものの一緒に遊ぶことなんてまったくありませんでしたから」
【主体性を求める親に、悩みを離しても解決してくれるわけないと考えた娘。次ページに続きます】