取材・文/ふじのあやこ

近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。

 「なぜ心配する気持ちをわかってくれないのか。イライラしてしまって親に優しくできません。でも、それも子どもから親への過干渉なのかもしれない。私がおかしいのでしょうか」と語るのは、郁恵さん(仮名・38歳)。彼女は現在、兵庫県内で旦那さまとの2人暮らしをしながら、外食向けの卸業を行う会社で働いています。郁恵さんの結婚生活は2年目。旦那さまは7歳下だそうです。

過保護でも放任でもないのに、異性関係にだけ異常に興味を持つ母親

郁恵さんは京都府の出身で、両親との4歳上に兄のいる4人家族。小さい頃からずっと両親は共働きだったそうですが、過保護でも放任でもなかったと当時を振り返ります。

「物心がついた頃から母親はずっと働いていました。パートの時もあったし、正社員で働いている時もありましたね。達筆だったので、封筒の宛名書きのような内職をしていた記憶もあります。とにかく働くのが好きだったみたいです。父親は小さい頃は毎日遅くに帰ってくる人で、食品関係の卸しの仕事をしていて、海外への出張なども頻繁で、平日の夜なんかは姿を見ることはなかったです。でも、週末は兄も連れてよく3人で遊びに連れて行ってくれていました。釣りとか、キャンプとか、アウトドアが好きだったみたいで家族でよく行きましたね」

躾に関してもそこまで厳しくなかったそうですが、ある一点だけ厳しいことがあったそう。それは、異性関係でした。

「最初に彼氏ができたのは、中学生の時でした。でも、中学生なので付き合うといっても、一緒に帰ったり、休みの日に遊びに行ったりするくらいですよ。当時は携帯がなかったので、電話も家の電話を使用していたんですが、母親が取り次ごうものなら電話を切った後には質問攻めが始まりました。『あの子のこと好きなの?』『2人でどこに行ったことがあるの?』とか、決して深堀した質問ではないんですが、ご近所さんに私の彼氏のことを相談していた時はひきました。そこから異性と付き合うことは何か悪いことのように感じてしまって、親には隠すようになりましたね」

高校、大学を卒業後に大阪にある企業に就職。金銭的な問題もあり、そのまま実家で暮らしていたものの、反抗期に似たような感情が20歳を過ぎてから起こり、親と顔を合わせたくないばかりに外泊を重ねていたそう。

「高校生の時から友人宅へのお泊りも解禁されたし、大学ではその日当日に朝帰りをしても、事前に連絡をしていたら怒りませんでした。これぐらいは一般の家庭と一緒ですよね。でも、終電で帰ると伝えていたら、父親か母親のどちらかは起きて待っているんですよ。別に怒られるわけじゃないんですが、親の睡眠時間を削っている感じがして、罪悪感からイライラしてしまって。私が先に寝ていてほしいと伝えていても、一向にやめてくれなかったから、大人になってから距離をとるようになってしまいました」

【次ページに続きます】

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