取材・文/ふじのあやこ
近いようでどこか遠い、娘と家族との距離感。小さい頃から一緒に過ごす中で、娘たちは親に対してどのような感情を持ち、接していたのか。本連載では娘目線で家族の時間を振り返ってもらい、関係性の変化を探っていきます。
「一度目の結婚で身に染みたのは血のつながり。親という存在は、何かをしなくても、無償で私の味方になってくれるものなんですよね」と語るのは、みゆきさん(仮名・42歳)。彼女は現在、都内で翻訳の仕事をしています。落ち着いた雰囲気で、姿勢や所作もきれい。持ち物を大切に扱うところからも、丁寧な暮らしぶりが想像できます。
マナーに厳しかった母親。働く中でも私たちのことを最優先にしてくれていた
みゆきさんは大阪府出身で、両親と5つ下に妹のいる4人家族。両親の出会いは紹介で、年齢差は父親のほうが1つだけ年上だと言います。
「父親は九州出身で、大阪には働くために出てきていて、母親はずっと大阪の人です。2人は母親の実家の近所の人の紹介で出会ったそうで、結婚は27歳ぐらいのとき。当時でいうとかなり晩婚だったみたいです。いつになっても結婚しない母を見て、近所の人が動いてくれたんじゃないでしょうか」
両親は共働きだったものの、育児は放任ではなかったとのこと。マナーなどの躾に関しては母親だけが厳しかったそうです。
「父親は研究職を、母親は兄妹が経営している会社でずっと働いていました。でも、母親は時短勤務で私たちのことを優先してくれていたから、放任ではまったくなくて。勉強というより、お箸の持ち方、食事の食べ方、椅子の座り方など、マナーについて厳しかったですね。覚えているのは、一度箸とお茶碗を楽器みたいにして遊んでいたことがあって、それをめちゃくちゃ怒られたこと。そのことがずっと忘れられないので、相当怖かったんでしょうね(苦笑)。でも、今母親に鍛えられてきた部分は大人になってからも役立っているから、今は感謝していますけどね」
【次ページに続きます】