ついに最終回を迎えた『麒麟がくる』。事前にアナウンスされていた「あっと驚く構成」とは何だったのか? 当欄も独自に「驚きの4場面」をピックアップする。
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ライターI(以下I):ちょっと涙が止まりません。
編集者A(以下A):通常回より15分延長された編成でしたがあっという間でした。事前に「最終回はあっと驚く構成」というアナウンスがありましたが、いろいろな面で驚きがありました。まず最初の「驚き」が、家康(演・風間俊介)饗応の場で激しく光秀(演・長谷川博己)を罵った信長(演・染谷将太)が別の間に控える光秀の前に何食わぬ顔で〈あれこれいうたが気にするな〉と現れた場面でした。
I:信長ってサイコパスかっていう場面でしたがその流れの中で、台詞の中だけとはいえ、四国の長宗我部元親が出てきました。
A:感慨深いです。キャスティングされなかったのは残念ですが、ついに大河に長宗我部の名が刻まれました。登場の仕方がやや唐突だったので、「??」という方も多かったと思います。補足しますと、光秀は長宗我部元親と織田政権を取り持つ「取次」を務めていました。信長も当初は長宗我部に対して「四国は切り取り次第」領地にしてもかまわないとして良好な関係を築いていました。
I:光秀重臣の斎藤利三(演・須賀貴匡)の実弟が長宗我部家の重臣を務めていましたし、元親の嫡男信親は信長の偏諱を受けた関係だったんですよね。
A:ところが、羽柴秀吉(演・佐々木蔵之介)が、四国を本拠とする三好康長と結び、光秀への対抗心を顕わにします。そうした中で信長は秀吉の意向を取り入れ、四国政策を変更する。光秀の面子は丸つぶれですし、これによって光秀派閥が解体の危機に陥ったという件ですね。〈秀吉殿の言いがかりというものでござります〉〈さような大事な話を私に一度もなさらず〉という光秀の台詞にはそうした背景があったわけです。
I:近年、本能寺の変は最終的にこの四国政策の変更によるものという「四国説」が有力なんですよね。
A:はい。興味がある方は三重大の藤田達生教授の『明智光秀伝 本能寺の変に至る派閥力学』を参照いただければと思います。光秀と秀吉の派閥抗争や本能寺の変に至る経緯など丁寧に叙述されています。劇中の信長の〈そなたが丹波にいたゆえ言うのが遅れた〉とあったように、政策の転換は光秀にとっては急だったようですね。
【将軍義昭暗殺指令と細川藤孝の裏切り。次ページに続きます】