国宝・松本城が鎮座する長野県松本市。駅からバスで約20分のところにあるのが美ケ原温泉です。東に美ヶ原高原、西に北アルプスを一望する温泉地で、十数軒の宿が点在し、落ち着いた佇まいをみせています。
温泉の歴史は奈良時代まで遡り、「束間温湯(つかまのゆ)」の名前で日本書紀にも記されているといいます。歴代の松本城主の保養地としても愛され、松本観光の拠点に便利な温泉地です。
泉質は弱アルカリ性の単純温泉で、神経痛などに効能があります。
温泉へ向かう途中には、松本民芸館があります。ここは柳宗悦の民芸運動に共鳴した丸山太郎の民芸コレクションを展示する資料館で、陶器や磁器、行李や松本箪笥などの家具といった趣ある作品を鑑賞できます。
民芸運動とは、名もなき職人の手で造られた生活用品にこそ美があるという思想のもとに大正末頃から起きた運動で、ここ松本も民芸運動の一拠点となりました。のどかな里で手仕事の逸品を満喫することができます(写真提供:信州・長野県観光協会)。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。