湯治場の温泉街の面影を色濃く残すのが山形県の肘折温泉です。出羽三山の主峰・月山の北東麓に位置し、開湯は大同2年(807年)とされています。
泉質はナトリウム‐塩化物・炭酸水素塩泉で、塩化物と重層、炭酸ガスの相乗効果から、多様な効能があり、古くから愛されてきました。また炭酸水素塩泉の作用で、古い角質を洗い流してくれるという、女性には嬉しい美肌効果もあります。
この温泉が一番賑わうのは早朝5時。両側に宿や土産物店が並ぶ細い通りに、名物の朝市が立ちます。冬場を除く毎日、地元のお母さんたちが、採れたての野菜や果実、山菜、お惣菜などを並べます。
浴衣姿の宿泊客が集まり、旬の味覚とあたたかい会話を楽しみます。のどかないで湯の里の光景です。
旅館では、現代版の湯治プランを用意するところも多く、長期とまではいかなくとも、2泊3泊のスタイルで、湯の効能を実感することができます。居心地のいい温泉地でじっくり日頃の疲れを取り療養する、そんな夏休みを計画してみれはいかがでしょうか。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。