永遠の都・ローマ。ヨーロッパきっての観光地として名高い地だが、ほとんどの観光客はホテルに滞在し、せいぜい数日見物して他の場所に移動してしまうだけだろう。じっくり腰を落ち着けて、暮らすように旅してみたい……この夏そんな憧れを叶えたのが、元・出版社勤務の中川豊さん(66歳)。ローマの中心部に部屋を借りて1か月、ゆったり気ままに見て回り、食べて回ったローマ(とその周辺)の旅の記録を紹介いただきましょう。
前回の記事: 歩いて訪ねた「カラヴァッジョ」のあるローマの美術館6つ【イタリア・ローマを歩く 第4回】
ローマでは、町中の至る所で「オベリスク」の尖塔が見られる。サン・ピエトロ大聖堂前、パンテオン前、ヴェネチア広場、スペイン広場、ナボーナ広場……など、数え切れない。
それにしても、ローマにはなぜこうも多くの「オベリスク」があるのだろうか。その由来については、かの絶世の美女、クレオパトラのいた古代ローマ時代にさかのぼる。
紀元前46年に、18歳のクレオパトラがエジプトからやって来ると、ローマはエジプト ブームで湧き上がったそうだ。そして各所に、エジプト風のモニュメント(記念碑)、オベリスクが建てられることになった。古代ローマ人がいかにエジプト好きだったか、偲ばれる。
今日はその「ローマの中のエジプト」の名残を求めて、ナボーナ広場から歩いてみるとしよう。
■1:カイウス・ケスティウスのピラミデ(ピラミッド)
ナボーナ広場から徒歩約38分。カンポ・デ・フィオーリ広場を抜け、テヴェレ川沿いを歩いていくと、何気なく真白いピラミッドが立っている。街に溶け込んでいるようで、なぜか浮いた存在の不思議な風景だ。
2000年を越えたこの白さは、ミケランジェロも使ったカッラーラの石ということで納得がいく。クレオパトラが来てから約30年後に、エジプト好きのカイウス・ケスティウスの墓として、建てられたのだ。
当時は他にも幾つかピラミッドはあったようだが、現存しているのはここだけである。
■2:ポポロ広場のスフィンクス
ピラミデからさらに歩くこと約54分。コロッセオ、フォロ・ロマーノ、ヴェネチア広場、スペイン広場を過ごして、ポポロ広場まで歩く。この街の魅力は、歩いていて時間の経過も疲れも感じさせないところにある。
ポポロ広場には、アウグストゥスがエジプトから持ってきたとされるオベリスクがそびえている。そして広場を囲む塀には16体のスフィンクスが座している。
かつては広場南側にピラミッドがあったということだが、今でもまるで「エジプト広場」のようだ。
■3:クレオパトラゆかりの地トラステヴェレでビールを
ポポロ広場から徒歩約33分。テヴェレ川を渡って、トラステヴェレに至る。
ローマの友人によれば、クレオパトラはローマ中心部ではなく、川を越えたここトラステヴェレ地区に住んでいたとのことである。さすがのカエサルも、正妻の手前、クレオパトラを近くには住まわせることができなかったのか。
そのトラステヴェレのベネデッタ通りでは、エジプトで紀元前3000年もの昔から飲まれているビールが大流行り。多くのビアパブが軒を連ねている。そのうちの一軒が『ビル・エ・フッド』(http://birandfud.it/)だ。
ビールも良いが、ここは揚げ物も旨い。ローマ料理はオリーブオイルでカラリと揚げたフリットが多いので、これをツマミにグイと飲る。1日の疲れも飛んでいく。
近くには『ピムス』(http://www.pimmsgood.it/)など数軒のいいビアパブが並んでいる。通りから徒歩5分ほど離れたところにある、揚げ物とピッツァを売っている店『イ・スップリ』(https://www.zomato.com/pt/roma/i-suppli-1-trastevere-roma)でビールのつまみを買って帰るのも楽しい
さて、次回は食材を求めて、ローマのメルカート(市場)と食料品店を訪ね歩いてみよう。
(データは2016年7月時点のものです。)
写真・文/中川豊
1949年生まれ。メディア プロデューサー。出版社を定年退職後、現職。1971年インドへの旅以来、中近東、アフリカ、南米など約60カ国を旅する。近年は仏、伊、布哇を中心に「暮らしているかのような旅」を続ける。
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