永遠の都・ローマ。ヨーロッパきっての観光地として名高い地だが、ほとんどの観光客はホテルに滞在し、せいぜい数日見物して他の場所に移動してしまうだけだろう。じっくり腰を落ち着けて、暮らすように旅してみたい……この夏そんな憧れを叶えたのが、元・出版社勤務の中川豊さん(66歳)。ローマの中心部に部屋を借りて1か月、ゆったり気ままに見て回り、食べて回ったローマ(とその周辺)の旅の記録を、数回にわたって紹介いただきましょう。
前回記事:クレオパトラが微笑みかける!? ローマの中のエジプトを歩く【イタリア・ローマを歩く 第5回】
街の食べ物屋で出会ったローマの味を、アパートでも作ってみようと思い、食材を求めて街を歩くことにした。
イタリアでは、同じような姿、形の食材でも、日本との味の相違に驚く。とくに多くの野菜の香り、その力強い味には驚愕する。殊にセロリは日本のものとは違い、水々しく香り高く濃い味がする。
魚は生で食べる文化がここには無いことを感じる。スカンピ(手長エビ)は格別に旨い。生ハムはしっとりとして、とても良い香りがする。生チーズは豆腐に通じるデリケートさで、醤油で試してみたが、これが実に旨い。熟成チーズではペコリーノの実力を思い知らされた。そして肉は仔牛、子羊が旨い。
魚と野菜は、近所に鮮魚店、青果店が見つからないので、メルカート(市場)まで行って買い求めた。一方で肉、生ハム、サラミ、酒、パンは、近所に何とも魅力的な店が多く、毎日のように通い、何不自由なく暮らすことができた。
さて、それでは実際に歩いた訪ねた市場や食材店を紹介しよう。どこもアパート近くのナボーナ広場から歩いていける場所にある。
■1:トリオンファーレ市場
ナボーナ広場から徒歩約29分。ヴァチカンの北側にある何でも揃う大きな市場が、『トリオンファーレ市場 』である。ローマ人の胃袋を満足させる市場といえば、ここではないだろうか。
とくに魚については、一番良いものが手に入る市場だと思った。入荷日は毎週火曜日と金曜日なので、魚を買うならその日を狙って訪れたい。
■2:カンポ・デ・フィオーリ市場
ナボーナ広場から徒歩約3分のところにある『カンポ・デ・フィオーリ市場』。観光化された市場とはいえ、青空の下での買い物は楽しい。野菜、果物は新鮮で力強い。アパートの近所なので重宝した。
■3:イータリー
ナボーナ広場から徒歩約50分でたどり着くイータリー。イタリア全土から集めた食材が揃う巨大なフードコートだ。日本にも進出しているのでご存知の方もおられるだろう。
食材を買っても良し、その場で食べても良しの、洗練された市場だ。ただしローマ人の間では、いささかアミューズメント化されすぎているという見方もあり、評価が分かれているようだ。
■4:アンジェロ・フェローチ
次に肉屋をご紹介。ナボーナ広場から徒歩約10分、パンテオンのすぐ北側にある『アンジェロ・フェローチ』。牛、仔牛、仔羊、猪、兎、内臓など肉は何でも揃うが、惣菜も驚くほど充実している。
下手な食べ物屋に寄るなら、ここで惣菜を求めて家で食べたほうが、満足できると思う。
■5:フランキ
ナボーナ広場から徒歩約20分、ヴァチカンの東側にある『フランキ』。ここは上質な食材が揃っている食材店で、日本でいうと紀ノ国屋か明治屋かといった店である。
私はここには、とくにサルメリア(生ハム、サラミなどの専門店)として通った。生ハムは幻のマンガリッツァがあり、生まれて初めて食した。その場で惣菜を食べることもできる。
■6:ロショーリ
ナボーナ広場から徒歩約6分。上で紹介したカンポ・デ・フィオーリ近くの老舗酒屋・高級食材店が『ロショーリ』。
ここには、ほぼ一日置きに訪れて、ラッツオ州を中心にイタリア産ワインを2本ずつ選んでもらった。奥はイートインになっており、カルボナーラが名物になっている。
■7:フォルノ・カンポ・デ・フィオーリ
ナボーナ広場から徒歩約3分にある老舗パン屋の『フォルノ・カンポ・デ・フィオーリ』。フォルノとは竈(かまど)の意味で、パンもピッツァも売っている。パンも美味しいが白ピッツァが特に美味しい。散歩の後、毎日買いに行った。
■8:ベッペ
ナボーナ広場から徒歩約9分のチーズ屋『ベッペ』。ここのチーズの品揃えの豊富さは、悦びさえ感じるほど。奥はイートインになっており、ワインとともに様々なチーズを味わえる。
以上、私がローマで通いつめたオススメの市場・食材店を一気にご紹介した。ローマの食材店は、4〜5代目が継いでいることが多い。それがローマ人の胃袋を支えているとしみじみ感じた。
次回はローマ散歩中に立ち寄ったランチスポットを紹介する。
(データは2016年7月時点のものです。)
写真・文/中川豊
1949年生まれ。メディア プロデューサー。出版社を定年退職後、現職。1971年インドへの旅以来、中近東、アフリカ、南米など約60カ国を旅する。近年は仏、伊、布哇を中心に「暮らしているかのような旅」を続ける。
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