朝日が美しいホテル「メイファ・ヘリテージ」前のビーチ。

朝日が美しいホテル「メイファ・ヘリテージ」前のビーチ。

まだまだ日本人観光客は少ないインド南部オリッサ州の海辺のリゾート地「プリ」を訪ねた、旅ライターの白石あづささん。最終回となる今回は、名ホテル「メイファ・ヘリテージ」でのディナーの様子と、早朝のベンガル湾での思いがけない海水浴体験をご紹介いただきましょう。<前の記事を読む>

海岸沿いのナイトマーケットでもいい匂いがしていたのですが、がまんしてホテルまで帰ってきたのは、またあの天才料理人スリャ・ナラーン・ナエルさんのオリジナル料理を食べたかったからです。何しろ、日本からとても楽しみにしてきたのですから。

昼は隣の「メイファ・ウェーブ」のメインダイニングでランチを食べたので、夜は自分の宿泊している「メイファ・ヘリテージ」のメインダイニングへと向かいました。

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陽気なホテルのスタッフとも仲良しに カメラを向けるとみんな集まってくる。

それほど大きくないホテルですから、すっかり従業員とも顔見知りです。

「ただいまー。おなかがペコペコ」

「おや? どこに行っていたの?」

「ジャガンナート寺院と火葬場だよ。おすすめの料理は何かしら?」

「シライシさんは、エビとビールが好きでしょう?」

「そうです。ランチで山ほど飲んで食べたからね。覚えていてくれてありがとう」

ウェイターさん、ニコリと笑い、「シェフのスペシャルプラウン(エビ)料理があるから」と自信満々です。そして10分ほど待って運ばれてきたのは、大きなエビを開いてコーンフレークをつけて揚げたサクサクのオリジナル料理。たっぷりかけた甘酸っぱいプラウンソースが絶妙です。

大きなエビのコーンフレーク揚げ。

大きなエビのコーンフレーク揚げ。

続いて、出てきたのは野菜の煮込み料理。ドラムスティックと呼ばれる長細いフキのような野菜やトマト、ポテト、トマトなどの野菜を煮込んだサントラというオリッサの郷土料理で、辛くはなく食べ過ぎの胃に優しい。ああ、まさに毎日、食べ過ぎの私にぴったりのお料理です。

季節の野菜煮込みは日本人好みの優しい味。

季節の野菜煮込みは日本人好みの優しい味。

最後に、骨を取り除いたタンドリーチキンに、ミントソースが添えられたラソニ・マライ・チャカ。ミントの香りが効いて日本酒にも合いそうな味ではないですか。

止まらなくなるラソニ・マライ・チャカ。

止まらなくなるラソニ・マライ・チャカ。

日本人はインドの食べ物が合わないなんて、誰が言ったのでしょう。北部の辛い料理が合わなければ、ぜひオリッサに来て、本格的な郷土料理を食べてほしいと思いました。

インドにも国産ウイスキー?

すっかりご機嫌で、レストランに併設されたバーへと向かいます。ホテルのバーなら宗教上、お酒にうるさいインドでもとやかく言われません。

 バーテンダ―のお兄さん、シュブラットさんに、「インドにはビール以外にも国産の酒はあるの?」と聞いてみると、インドにはキリスト教徒もいるので、国産ウイスキーも作っているのだとか。

「ワインも実はインドの真ん中あたりで作っているんだよ。おいしいブドウがあるからね。ワインもいいけれど、僕が好きなのはこれかなあ?」

カクテルの上手なシュブラットさん。

シュブラットさんは、棚から一本のウイスキーの瓶を取り出します。「SEAGRAM’S」というインドのお酒の会社が作っている「BLENDERS PRIDE」を小さなグラスに次いでくれました。バレンタインに似た甘い香りがします。

 「これで何かスペシャルカクテルを作ってあげるよ」と、レモンジュースと普通のスプライトを混ぜてシェイカーを振ってくれました。スプライトを入れたカクテルは初めてでしたが、ウイスキーの甘さを引き立てて意外においしい。

カクテルの上手なシュブラットさん。

国産ウイスキーで作ってもらったオリジナルカクテル。

くいくいと飲むと、とたんに眠気が襲ってきました。陽気なスタッフにおやすみの挨拶をすると、部屋に入るなりベッドにバタッ。電気もつけたままでバタンキューと寝てしまいました。

さよならプリ

翌朝、鳥の声で起きると、ちょうど朝日が上がったところでした。しかし、すでにビーチに人が集まっています。メイファのプライベートビーチということになっているのですが、柵があるわけではないので、日中は地元の人も横切ります。

しかし、早朝はホテルの宿泊客しかいませんから、ひと目を気にするインド人女性も「はしたない」と言われず、堂々と泳ぎを楽しめるようです。しかし、さすがに誰も水着の人はいません。サリーやパンジャビー・ドレスのままでキャッキャッと入るのはいいのですが、色落ちしないか心配になってしまいます。

 そこへ、「海を見たのは初めて!」と手をつないで塩水に足をつけようとする父と7歳くらいの女の子がやってきました。娘よりもお父さんのほうが大興奮で、波がかかるたびに、「おおおお」と目を丸くして驚いています。インド人は大人になっても、表現が豊か。見ているだけでおもしろいのです。

ホテルの監視員のおじさん「さあ、海へ入ろう!」

ホテルの監視員のおじさん「さあ、海へ入ろう!」

カメラを持って写真を撮ろうとすると、メイファで働いている海の監視員のおじさんが、私に近づいてきました。ホテル滞在中、会うたびに、「入らないの?」と声をかけてくれるのですが、「今日は、もうチェックアウトだろ? ベンガル湾で泳がずに日本に帰れないぞ!」と、手を引っ張って、私を海に入れようとします。

 「ちょっと待って! すごい波だし、洋服だし、カメラ持っているし!」

 大慌てで、陸に戻るとすると、おじさん、カメラを椅子の上にポンと置き、「プリは治安がいいから大丈夫!」と有無を言わせず、私に浮き輪をかぶせました。車のチューブのような代物で日本のカラフルな浮き輪はインドではないのでしょうか。

何はともあれ、まるで九十九里浜のように波の荒い海に、監視員のおじさんと手を取り合ってザブン! 浮き輪をつけているとはいえ、ひっくり返って全身びしょぬれになりました。まさか、プリ最終日にベンガル湾で泳ぐことになろうとは思いもよらなかったのですが、いい思い出になりました。

意外と波が荒いのです。

意外と波が荒いのです。

荷物をまとめて、ホテルを出ると、陽気で親切なスタッフたちが並んで手を振ってくれます。人生で思い出に残るホテルがいくつかあるのですが、メイファ・ヘリテージもそのひとつになりそうです。設備や歴史だけではなく、なんともいえない心地よさ。またいつか来たときも、同じスタッフに迎えてもらいたい。そう願いつつ、「また、来るね」と手を振ってブバネシュワールへと戻りました。

海は少々、荒いけれど、独特な文化とおいしい郷土料理、ユニークな風習に触れることができるオリッサ。今、一番、私がおすすめできるリゾート地です。長い休みがとれたらぜひ行ってみてください。

取材・文/白石あづさ
旅ライター。地域紙の記者を経て、約3年間の世界旅行へ。帰国後フリーに。著書に旅先で遭遇した変なおじさんたちを取り上げた『世界のへんなおじさん』(小学館)。市場好きが高じて築地に引っ越し、うまい魚と酒三昧の日々を送っている。

取材協力:
エア インディア http://www.airindia.in/(英語サイト)
ロータストランストラベル http://www.lotustranstravels.com/(英語サイト)

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