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文・写真/坪井由美子(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)

クリスマスマーケットの本場ドイツ。画像はボン。

クリスマスマーケットの本場ドイツ。画像はボン。

冬のドイツの最大の楽しみといえば、アドベント(待降節:クリスマス前の4週間)の時期に開かれるクリスマスマーケット。寒くて暗いドイツの冬を温かく照らしてくれるクリスマス市は、ドイツの人々にとってなくてはならない大切なイベントだ。小さな村から大都市まで大小様々な市が立ち、その数はなんと2500にのぼるといわれている。

ここ数年、日本人旅行者の間ではドイツのクリスマス市をめぐる旅が大人気。最近は日本でも開催されるようになったが、やはり本場の雰囲気は格別だ。歴史的な建物を背景にきらめくイルミネーション。屋台に並ぶクリスマス飾りや工芸品。人々の温かい笑顔……。言葉では言い尽くせないほどの魅力があるが、食いしん坊の筆者にとって、最大の楽しみはなんといっても屋台グルメである。町ごとに雰囲気も様々で、その土地ならではの郷土色が垣間見られてとても興味深い。

今期はドイツ西部を中心に10以上のクリスマス市をめぐった。ホットワインや焼きソーセージといった定番からちょっと珍しい食べ物まで、各地で出会った屋台グルメの食べ歩きリポートをお届けしたい。

ライン川沿いを走る電車に乗って最初に向かったのは、かつての西ドイツの首都ボン。偉大な音楽家ベートーベンの生まれ故郷として知られる町だ。2020年はベートーベン生誕250周年ということで、町中がお祝いムードで盛り上がっている。大聖堂のあるミュンスター広場では、ベートーベンの像が見守る中、おもちゃ箱のように華やかなクリスマス市が開催されていた。

ボンのシンボル、ベートーベンに見守られるクリスマス市。

ボンのシンボル、ベートーベンに見守られるクリスマス市。

ドイツのクリスマス市を訪れたなら、まずはグリューワインを一杯やるのがお約束。グリューワインとは、ワインにスパイスや果物を加えて温めたホットワイン。ドイツ人にとって、クリスマス市に行く=グリューワインを飲みに行く、というくらい定番のドリンクで、夜になるとグリューワイン屋台のまわりはカップ片手におしゃべりを楽しむ人々でいっぱいになる。

広場でひときわ賑わっている屋台をのぞいてみると、スタンダードな赤ワインベースの他にも、さくらんぼやりんご、苺など普段はあまり見かけない様々な種類のグリューワインがありしばし迷う……

グリューワインのカップにもベートーベンが描かれている。

グリューワインのカップにもベートーベンが描かれている。

選んだのは、白ワインベースのオレンジジンジャーグリューワイン。甘さ控えめのすっきりフルーティな味わいで、しょうがの効果もあってか、一口飲むごとに体の芯からじんわりとあたたまっていく。

巨大なグリルで焼かれるソーセージやステーキ。

巨大なグリルで焼かれるソーセージやステーキ。

グリューワインと一緒に味わいたい屋台グルメといえば、焼きソーセージ。ドイツのファストフードの定番中の定番だが、寒空の下でほおばるそれはいつにも増しておいしく感じられる。じゅうじゅうと香ばしく焼かれたソーセージを小型パンに挟み、マスタードをたっぷりつけてがぶり!じゅわ~っと肉汁があふれて口福感に満たされる。

ドイツは都会の華やかなクリスマス市ばかりでなく、ガイドブックに載らない小さな町のなかにも、ユニークなクリスマス市で知られるところがいくつもある。ボンのすぐ北に位置するジークブルクでは中世時代を再現したクリスマス市が立つと聞き、はりきって繰り出した。

ジークブルクで開かれる中世のクリスマス市。

ジークブルクで開かれる中世のクリスマス市。

広場へ足を踏み入れると、そこでは想像以上に本格的な中世の市場が開かれていた。鍛冶屋や木工職人が実演する横では革製品や中世風の衣類、剣、ドラゴンがデザインされた銀細工などが売られ、さながらコンピュータRPGのドラゴンクエストの世界。ドラクエ風にいうならば、ここの道具屋でばっちり装備して冒険の旅へ出かけたいところだ。

鍛冶屋の実演に子どもたちも興味津々。

鍛冶屋の実演に子どもたちも興味津々。

本当に中世からやってきたようなスパイス屋の人々。

本当に中世からやってきたようなスパイス屋の人々。

屋台ばかりか人々の服装や言葉までもが中世風で、まるで1000年前にタイムスリップしたような気分になってくる。量り売りのスパイスや薬草が並ぶ屋台で、中世からタイムマシーンでやってきたようなおじいさんから秘伝のお香の効能を聞いていると、ますます今が何時代でここがどこなのかわからなくなってきた。

ここのクリスマス市では、もちろん屋台グルメだって中世風だ。

はちみつのお酒「メート」は素焼きのカップ入り。

はちみつのお酒「メート」は素焼きのカップ入り。

「メート」と呼ばれる飲み物は、いわばはちみつ酒の熱燗。コクのある甘さが冷えた身体にしみわたっていくようだ。

銅鍋で砂糖を煮詰めてつくるローストアーモンド。

銅鍋で砂糖を煮詰めてつくるローストアーモンド。

クリスマス市で定番人気のローストアーモンドは、シンプルながら一度食べたらやみつきになるおやつ。ここではスタンダードな飴かけのほか、フルーツ味やスパイス味など様々な種類が作られていた。

グリュンコール&ピンケル(左)と鴨のロースト&赤キャベツ

グリュンコール&ピンケル(左)と鴨のロースト&赤キャベツ

ドイツ北部の郷土料理グリュンコール(ケール)&ピンケル(カラスムギや大麦などの穀物入りソーセージ)を発見。油の代わりにラードが使われるためけっこう食べごたえがある。鴨のロースト&赤キャベツも冬によく食べられる料理。

市の一角で人だかりができていたのでのぞいてみると、豚の丸焼きがぐるぐるとまわっていた……なんとも豪快!

豪快な豚の丸焼きに衝撃を受ける。

豪快な豚の丸焼きに衝撃を受ける。

もともとドイツのクリスマス市はギラギラしたネオンや賑やかな音楽がなく、だからこそ趣があっていいのだが、中世市はさらに灯りが少なくワイルドな雰囲気。日が暮れると暗くて商品もよく見えないほどだ。昔の市場はこんな感じだったのかもしれないなあ。

ファンタジーの世界にすっかり魅了されて離れがたくなってしまったが、この日はもう一か所訪れたい町があった。ジークブルクを少し北上したところにある、ドイツ西部最大の町ケルンだ。

ケルンといえば、世界遺産の大聖堂があまりにも有名。中央駅を出た瞬間に目の前にどどん!とそびえる威風堂々たる姿は何度見ても圧巻だ。私的「死ぬまでに一度は見たいドイツのクリスマス市トップ10」を選ぶならば、ケルン大聖堂を背景に開かれる市が上位にランクインするのは間違いないだろう。

ケルン大聖堂前で開かれるクリスマス市。

ケルン大聖堂前で開かれるクリスマス市。

ケルシュは独特の苦みとすっきりしたのど越しが特徴。

ケルシュは独特の苦みとすっきりしたのど越しが特徴。

この日最後の一杯は、ご当地ビールのケルシュで締めくくった。プロースト(乾杯)!!

今回紹介したほかにも、ドイツには魅力的なクリスマス市がたくさんある。ぜひ一度冬のドイツを訪れ、心温まるファンタジーの世界を堪能してほしい。

ドイツ観光局:https://www.germany.travel/jp/
ボン市公式サイト:https://www.bonn.de/
ジークブルク観光局:https://tourismus-siegburg.de/
ケルン観光局:https://www.koelntourismus.de/

文・写真/坪井由美子 (ドイツ在住ライター)
観光、グルメ、文化、ライフスタイルなど幅広い分野において新聞、雑誌、ウェブ媒体で執筆。食品業界でのコンサルタント経験を活かし、レシピ連載や食のリサーチも手掛ける食いしん坊。海外書き人クラブ会員(https://www.kaigaikakibito.com/)。

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