文・写真/キュンメル斉藤めぐみ(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター)

入口には消毒液がおかれ、常に換気されている。コロナ対応も万全だ。

ドイツ国内には現在152店舗の「梱包フリー」スーパー・マーケットが存在する。自宅から持ってきたタッパーやジャムの空き瓶などに好きな分量だけを量って買えるこの方法は「エシカル・スーパー」とも呼ばれ、大人気だ。今回は大学都市・シュツットガルトで人気の一店舗「オーネ・プラプラ(https://www.ohneplapla.de/sortiment)」を紹介する。

量りに商品を乗せ、商品番号を押せばシールが出てくる

梱包ゼロ、プラスチックごみゼロを目指して。リサイクル重視のスーパー・マーケット

プラプラをはじめこのような量り売り方式のスーパーは、ミレニアル世代や、20代の「ジェネレーションZ」と呼ばれる学生を中心に熱狂的に支持されている。興味深いことに、ドイツ国内にいるおよそ1260万人のビーガンたちは、特にこの世代に多く存在することがわかっている。肉を食べることで排出される温室効果ガスが環境破壊につながるということもあって、環境に何か良いことをしたいという政治的思考から、ビーガンになることを決意するのもこの世代の特徴だ。大学進学などで地方に移り住み、他の学生の考え方に感化されるケースが圧倒的に多いと思われる。

そしてこのようなスーパー・マーケットの経営者も店の従業員もみな、同じぐらいの年齢の若い人ばかりだ。だからであろうか、お店はまるで学食のような雰囲気で、若い子たちが一人でも入りやすい。店内には「ビーガン」や「フェアトレード」などの言葉が飛び交い、アットホームな雰囲気のカフェでくつろぐ人たちの姿が印象的だ。

入口近くのカフェにはビジネスマンや地元の主婦も集まる。店内に置かれる食品はほぼビオで、コーヒーや紅茶・作られるケーキやパンの材料も、すべて地元でとれたものか、あるいはフェアトレード製品。お値段は多少はるが、安全も味もお墨付き。全て手作りなので数も多くなく、その日作ったものはすべてその日に売り切れてしまう。

ドイツといえば、環境問題やリサイクル先進国のイメージがある。特にプラスチックと海洋ゴミについて個人レベルで真剣に考える人は多く、マイボトルやエコバッグを常に持ち歩いたりと、簡単なことから取り組んでいる様子が世代を超えてうかがえる。

また健康問題にも関心が高く、プラスチックに含まれる環境ホルモンが人体に影響を与えることはテーマとしてよく上がる。小さな子どもがいる家庭ではペットボトルに口をつけて飲むのを一切やめたりすることを習慣づけたり、基本的に瓶入りの飲み物しか買わない人、プラスチックで梱包されたものを一切買わないという徹底した考えの人たちもいる。

プラプラにやってくるのは子供連れもいて、安全な食べ物のためならば多少値段が張っても購入したいという考え方の人も多いようだ。大量生産・大量消費に嫌悪感を持つ人はここへ来て、子供たちが小さいうちからきちんと自分の目で見て選ぶ「エシカル消費」を教育する。この店に卸す野菜を作る人を知っているから、とやってくる人もいる。私たちの消費行動には信頼が大きな役割を果たすのはよく知られているが、このように、ここでのエシカル教育は人間関係の在り方そのものを学べる機会だと言ってもいい。

お酢のコーナー。隣にはオイルのコーナーもある。お店側も人件費がかからなくて良いという利点もある。
人気のパスタコーナー。レンズ豆のペンネや玄米パスタなど様々あり、小麦粉アレルギーを持つ人・ビーガンにも対応。ソースも日替わりで用意されている。
コーンフレークやお米、オートミール、ナッツ類のコーナー。グルテンフリーなど種類も本当に豊富。2020年からはオンラインでの買い物もスタート。オンラインで注文したものを店舗でピックアップするスタイルも好評で、散歩がてら自転車をこいでとりに来る学生が多い。
お菓子類もたくさんある。飴なども一個から買えるので、全部の種類をひとつずつ試すこともできる。
固形せっけんやハンドクリームは、リサイクルのきくガラス入り。ガラスはお店に持ってくれば引き取ってくれる。粉末の洗濯洗剤も量り売りが可能。全ての商品のサイズが小さめなのは、歩いたり自転車で買い物に来る客が多いから。あえて車に乗らず、移動手段を自転車に頼る人は学生都市には多い。
ドイツ国内で現在流行りの手作りの固形シャンプー。固形リンスもある。シリコンフリーで人気が高く、すぐ売れてしまうとか。

地球規模を意識したグリーン活動

店内にはその他野菜やフルーツの量り売り場もあり、とても素朴で優しい雰囲気を醸し出している。野菜や果物は大型スーパーで売っている「完璧な見た目」のそれらとは違うが、安全でおいしい有機野菜だ。特にこのコロナ禍で大変な思いをしている農家さんを応援するために、多くのオーナーさんは地産地消を大切にし、お互いに支えあっていく地元愛を一番大事にしている。

野菜は廃棄されることなく料理され、店頭に日替わりで置かれる

なぜドイツ人がそこまでプラスチックごみ問題に取り組んでいるかと言えば、その背景に、ドイツがプラスチックごみ排出国の上位にランキングしている国であるという事実がある。

意識的に消費行動を今変えるということは、私たちだけでなく、子供たちの未来を変えることにもつながっている。フードロスとプラスチックごみ問題は私たちが何かを口にする限り生じる根本的な問題であり、また避けられない問題でもある。私たちの生き方を強く問う姿勢を崩さず、これからどのような世界を創ってゆきたいのかを、地球規模で常に考えなくてはならない。

店の住所 :Ohne PlaPla  Fürstenstraße 5 (beim Königsbau)70173 Stuttgart

文・写真/キュンメル斉藤めぐみ(海外書き人クラブ/ドイツ在住ライター) ドイツ在住。外資系企業勤務を経て、2015年より近郊コミュニティーカレッジにてヨガや栄養学のクラス、料理教室を主宰。現在フリーランスライターとして、文化・生活情報を提供、寄稿。掲載メディア媒体は、EJイングリッシュジャーナル』(アルク)、『家の光』(JAグループ)、不動産流通研究所、ぐるなび等。海外書き人クラブ所属(https://www.kaigaikakibito.com/

 

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