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前列中央から時計回りに、ご飯、野蕗のきゃらぶき、煎り豆腐(人参)、鶏そぼろ、漬物(胡瓜と人参の糠漬け・壬生菜・刻み沢庵)、焼き海苔、ごんげん蒸し、大根おろし(葱・鰹節・胡麻)、納豆(葱)、絹さやの浸し(鰹節)、味噌汁(豆腐・若布・葱)、中央右は焼き鮭、左は蒲鉾と山葵漬け。今朝は小鉢に盛っているが、常備菜のきゃらぶきや煎り豆腐、鶏そぼろ、加えてごんげん蒸しなどは大皿で登場し、取り分けていただくことが多い。絹さやは昨夜の残りを浸しに。蒲鉾は、山葵漬け(静岡『野桜本店』の激辛口)をつけて食す。焼き海苔は東京・品川の『みの屋海苔店』のものを愛食。焼き海苔とごんげん蒸しの器の模様は、定紋である揚羽蝶。

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旅行

エジプト:悠久の街と、私のなかの悠久(角田光代の旅行コラム 第12回)

夕刊サライは本誌では読めないプレミアムエッセイを、月~金の毎夕17:00に更新しています。木曜日は「旅行」をテーマに、角田光代さんが執筆します。

文・写真/角田光代(作家)

大学を卒業した1989年、女友だちとエジプトを旅した。二人でツアーに参加したのだ。エジプトに行きたい、というのは彼女の希望で、私はどこかに行けるならどこでもよかった。そもそもエジプトに何があるのかわからない。ピラミッドくらいは知っているが、じゃあピラミッドとはなんなのかと訊かれても答えられない。無知すぎて、興味の持ちようがないのだった。

私たちが参加したのは、最少催行人数が決まっていて、添乗員さんがついて、観光バスで移動するような、典型的なツアーだった。ひとりで参加していた男性もいたし、4人で参加していた若者グループもいた。

この旅行の記憶はひどく曖昧だ。でもたぶん、もっとも一般的な日程だったのだと思う。ルクソールをまわってアスワンに行って、カイロに戻ってくるような。移動はバス、プロペラ機、夜行列車と多様だった。

記憶が曖昧なのは、自動的にあちこちに運んでもらうツアー旅行だったからだろうけれど、もっとも大きな理由は、私の興味の問題ではなかろうか。22歳の私はエジプト的なものになんの興味も持っていなかった。ルクソール神殿もアブ・シンベル大神殿も、たいした違いはなく思えた。そもそも興味がないからびっくりしたり目を見張ったりするようなこともなく、添乗員さんの説明も聞いたって頭に入らなかったのだろう。

私が興味があったのは、遺跡よりも街だった。バスの窓から見る、喫茶店のテラスにたむろして水パイプをふかす男の人たちや、ロバで荷を運ぶ少年だった。それとバザール。バザールは、観光客向けだとわかっていても楽しかった。

20年後の2009年、雑誌の仕事でナイル川クルーズに参加することになった。アスワンからルクソールを船で2泊3日かけてゆっくりゆっくりと進み、ルクソールからカイロまでは飛行機で飛ぶ。ルートは違えど、見るのは20年前とほぼ変わらない。

2009年に訪れた、ルクソールの西岸にあるハトシェプスト女王葬祭殿。ハトシェプストは3500年前ごろに活躍したエジプト初の女王。(撮影:角田光代)

じつは今も私は遺跡のたぐいはほとんど興味がなく、どの地を旅しても、わざわざ遺跡を見に行くことはまれだ。20代のときにこの嗜好はもう決定されていたのだと、ある感慨を持って思う。私はいまだに、遺跡史跡より、市場やごくふつうの街なかのほうがずっと好きだ。

それでも、20年後に案内してもらう神殿や、ルクソールは断然おもしろい。古代の人々の死生観、宗教観に思いをはせ、壁のレリーフの説明に2000年前と今とを重ね合わせる。そうしたものに興味を持つことができ、さらにあれこれ考えを広げられるのが、加齢のいいところである。

ライオンの体に人間の顔を持つ聖獣、スフィンクス。これは、ギザの大スフィンクスではなく、ミニチュア版。(撮影:角田光代)

ところで、おそらく以前訪れた有名な遺跡巡りや街歩きをしながら、無意識に20年前の記憶とすりあわせようとしている自分に気づいて、私は笑い出したくなった。今から2000年、3000年も昔に造られ、修復されたり発見されたり移動したりということもあったにしても、それでもやっぱりとてつもなく長い時間存在するものを前に、20年など、一瞬すぎないか。そこに変化を探す私って、卑小すぎないか。そんなふうに思ったのである。

しかしながら、どーんと目の前にある、「時間」そのもの、というような光景に比べれば、私の生きる時間もまた、取るにたらない小さなものだ。そう考えるとさらに感慨も深まる。

旅のラスト、カイロに行って私は驚いた。記憶は曖昧ながら、20年前の街に若い女性の姿はたくさんは見られなかった。よく見かけるのは男性連れ、子ども連れの女性で、みな民族衣装を着てスカーフで顔を隠していた。ところがなんと多くの女性たちが街にあふれているのだろう。民族衣装の人もいるが、若い人たちはジーンズ姿も多い。これはたしかに大きな変化に思えた。

つい目がいってしまう山羊と少年がいる風景。こちらは20年前とまったく変わらない。(撮影:角田光代)

仕事の旅だったので、食事はいつも通訳兼ガイドさんのおすすめレストランに行っていたのだが、最後の日、私は彼に「食べたいものがある」とリクエストをした。街のどこでも見かける国民食コシャリを、庶民的な店で食べたかったのである。「えっ、そんなものを食べたいの?」とガイドさんに不思議がられながらも、食堂に連れていってもらった。

テーブルにクロスの掛かったレストランより、屋台の食べものを好むのは、20代のはじめからそうだ。たかだか30年だが、私のその部分は変わらず、この先も変わる気がしない。

文・写真/角田光代(かくた・みつよ)
昭和42年、神奈川県生まれ。作家。平成2年、『幸福な遊戯』で海燕新人文学賞を受賞しデビュー。近著に『私はあなたの記憶の中に』(小学館刊)など。

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