■6:出雲横田駅(JR木次線)
――神社と見まがう和風駅舎の傑作

出雲横田駅 (1)_s

出雲・島根県を南北に貫いて走るJR木次線は、山陰本線の宍道駅から、ヤマタノオロチ伝説が伝わる斐川をさかのぼって中国山地を超え、芸備線の豊後落合駅までを結ぶ非電化路線。ススキ野原や紅葉の駅を走る沿線には、古い日本映画を見るような懐かしい鉄道風景が残っている。

そんなローカル線の中間駅に、わが国最高レベルの「宮造りの駅舎」がある。それが、宍道駅からディーゼル気動車に乗って1時間30分ほどで着く、出雲横田駅だ。

規模はさほど大きくないが、玄関に大社風の太いしめ縄を張った駅舎は、このままどこかの神社に移築しても遜色ないほどに完成された宮造りだ。

入母屋、寄せ棟の銅板葺き屋根にがっしりとしたヒノキの玄関柱を立て、身のしまった松材を校倉に積み上げた壁も美しい。(>>詳細記事はこちら

出雲横田駅 (2)_s

【出雲横田駅(JR西日本木次線)】
ホーム2面2線の中間駅
所在地:島根県仁多郡奥出雲町横田1020
開業年月日:1934年(昭和9)11月20日
アクセス:出雲市駅から山陰本線宍道駅経由で約2時間

*  *  *

■7:竹田駅(JR播但線)
――天空の城を背負う黒瓦の美しき駅舎

竹田駅_s

中国山地の山間を走る播但線。古くから銀山で栄えた生野を過ぎてしばらくすると、列車は整然と家並みが続く小盆地に下っていく。ここに黒瓦が美しい竹田駅がある。

二段になった切妻屋根に黒瓦を載せ、きれいな白壁が浮き出た建物は、駅舎というより城門のようなたたずまいを見せる。

全国に鉄道網ができあがってきた明治後半のこと、竹田駅も明治39年(1906)に開業している。駅舎はその開業時のものとされ、立ち姿は堂々として、明治駅舎の貫禄を漂わせている。(>>詳細記事はこちら

竹田駅。

【竹田駅(JR播但線)】
■ホーム2面2線で、日中有人の委託駅
■所在地:兵庫県朝来市和田山町字中町西側241
■駅開業年月日:1906年(明治39)4月1日
■アクセス:大阪から姫路駅乗りかえ播但線で約2時間50分

*  *  *

■8:伊那八幡駅(JR飯田線)
――洋館停車場のスタイルを残す懐かしい駅舎

伊那八幡駅 (1)_s

駅舎の改築が進むJR飯田線、そのなかで開業時の姿を保っている駅がある。豊橋から電車に乗ること約4時間、ようやく長野県飯田市に入ったところにある伊那八幡駅だ。

同線の他の古い駅舎は取り壊され、まるで公衆トイレのように簡素化されてしまったが、伊那八幡駅だけは、風格ある洋館停車場のスタイルを残している。

玄関にマンサード形のファサードをつけ、左右の入母屋に小さな切妻をつけている。そして壁にはモルタルの「掻き落とし」で凹凸を出し、一部に幾何学模様も描いてのっぺりとしがちな外壁に陰影をつけている。和風建築のように軒を張り出さず、引き締まった箱のような印象の秀逸なデザインだ。

待合室の屋根にはかつて照明が下げられていた梁組みも残されている。(>>詳細記事はこちら

伊那八幡駅 (5)_s

【伊那八幡駅(JR東海 飯田線)】
相対式ホーム2面2線の無人駅
所在地:長野県飯田市八幡町2191
駅開業年月日:1926年(大正15)12月17日
アクセス:豊橋から飯田線各駅停車で約3時間50分

*  *  *

■9:山寺駅(JR仙山線)
――紅葉映える芭蕉ゆかりの名駅

山寺駅 (1)_s

山寺駅は山形と仙台を結ぶJR仙山線の渓谷にあり、山形平野から連続25パーミルの勾配を登ってきたところにある。

列車からおりると、黄色に真紅が混ざる紅葉真っ盛りの宝珠山・立石寺が、どかんと真正面に見える。あの芭蕉の名句「閑さや 岩にしみ入 蝉の声」で知られる、みちのくの古刹・立石寺と山寺駅とは、谷を挟んで向かい合っており、山寺駅のホームは、立石寺を愛でる最良の展望台になっている。

駅舎はホームから下ったところにあり、地下道で連絡する。木造平屋の駅舎は、このまま参拝したくなるような寺院風の姿でたたずんでいた。

屋根こそ金属板で覆われているが、玄関の正面破風と左右の切妻に鬼瓦が置かれて堂々たる構えを見せている。みちのくの名駅舎と言っていいだろう。(>>詳細記事はこちら

山寺駅 (4)_s

【山寺駅 (JR東日本仙山線)】
ホーム1面2線で、日中有人の委託駅
所在地:山形県山形市大字山寺4273
駅開業年月日:1933年(昭和8)10月17日
アクセス:仙台から仙山線で約1時間

*  *  *

■10:月岡駅(富山地方鉄道上滝線)
――北アルプスの絶景を見晴らす小さな駅

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北陸新幹線の富山駅に隣接する電鉄富山駅から富山地方鉄道上滝線に乗ること約20分、水田に点在する屋敷林の向こうに北アルプスの峰々が立ち上がってきたあたりで月岡駅に到着する。

月岡駅は無人で、構内踏切の先には古びた駅舎が建っている。いちおう瓦屋根ではあるものの外壁はトタンで補修され、相当に痛みも目立つ。風雪に耐えた老駅舎は駅名看板すらかすれていたが、真冬になると電車を待つ乗客にとって貴重な雪よけの待合所になるのだ。

そんな駅舎の改札口には整理券発行機ぽつんと立っていて、通学生のものらしい自転車が数台停まっている、典型的なローカル私鉄の中間駅の風情だ。

しかしこの駅は、『北アルプスで最も険しい』とされる剣岳(2999m)が、いちばんよく見える駅である。三角形の頂きを天に突き上げる剱岳は、ちょうどこの月岡付近が手前の山脈に邪魔されずに展望できる場所になっているのだ。さらに線路の進行方向には山頂が平らになっている立山連山も見える。ホームでその絶景にみとれてしまう。(>>詳細記事はこちら

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【月岡駅 (富山地方鉄道上滝線)】
ホーム島式1面2線の無人駅

所在地:富山県富山市月岡2−282
駅開業年月日:1921年(大正10)4月25日
アクセス:電鉄富山駅から南富山経由不二越・上滝線で約20分

>>次のページに続きます。

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