■11:上州一ノ宮駅(上信電鉄)
――風格あふれる古き良き洋館駅舎

上州一ノ宮駅 (1)_s

高崎から乗った上信電鉄の電車が世界遺産富岡製糸場のある平野を過ぎ、やがて丘にさしかかって急カーブを繰り返しはじめたところに、この「上州一ノ宮」の駅がある。

駅舎も風格のある洋館駅舎が建てられた。駅舎の壁面の上の方は柱と漆喰をくみあわせたハーフティンバー、中段は下見板張り、そして下部の腰壁はタテ板張りというにぎやかな造りで、玄関の軒には上信電鉄の社紋ががっちりとはめ込まれている。

瓦屋根は急傾斜に段差をつけた変形切妻で、風雪を経て黒ずんだところと白ペンキで塗られた部分が奇妙なハーモニーを見せている。陰影深い印象の駅舎だ。(>>詳細記事はこちら

上州一ノ宮駅 (4)_s

【上州一ノ宮駅(上信電鉄)】
■ホーム島式1面2線の委託駅
■所在地:群馬県富岡市一ノ宮226−2
■駅開業年月日:1897年(明治30)7月2日(開業時は一ノ宮、大正10年に上州一ノ宮に改称)
■アクセス:高崎駅から上信電鉄線で45分

*  *  *

■12:野馳駅(JR芸備線)
――古武士のような風格ある懐かしの木造駅舎

野馳駅 (5)_s

JR芸備線は、広島市と岡山県新見市とを結ぶ延長159㎞の長い路線だ。このため広島近郊は快速列車も走る都市型の通勤通学路線だが、中国山地の山間部まで来ると、すっかりとローカル風情漂うのどかな区間になる。野馳駅は、そんな広島側から見て岡山県に入った最初の駅だ。

この路線が開通した昭和5年に建てられた木造駅舎は今も健在で、立ち姿が実に素晴らしい。駅頭にはよく手入れされたカイズカイブキが茂り、風雪を経てすっかり地肌が出た板壁が簡素な駅舎に古武士のような風格を与えていた。

現在、芸備線には全線通して走る列車はなく、鉄道旅行するにはハードルの高い路線だ。その分、山里の沿線風景は素晴らしく各所に忘れられたような古い駅舎があって興味が尽きない。うかつに下車すると大変なことになる列車ダイヤではあるが、それもまた旅情をくすぐるというものだ。(>>詳細記事はこちら

野馳駅 (2)_s

【野馳駅(JR西日本芸備線)】
ホーム:1面1線
所在地:岡山県新見市哲西町畑木
駅開業年月日:1930年(昭和5)
アクセス:岡山駅から伯備線新見経由で約1時間30分

*  *  *

■13:伊達駅(JR東北本線)
――凜とした武家屋敷のような駅舎

D61_2621_s

あの仙台藩主・伊達政宗に由来するという、男らしい粋な姿を意味する名の駅は、まさしく“伊達”な駅だ。どっしりとした入母屋に格子模様を配したファサードと車寄せに大小二つの三角が並び、白壁に黒柱のコントラストが凛とした武家屋敷の雰囲気を出している。

外壁の腰壁には玉石を積み上げ、窓と明り取り窓の間に小型のもこし屋根を巡らせて腰高な建物を引き締めている。まさに隙のない端正なデザインだ。玉石は飯坂温泉を流れる摺上川から採ったもので、タイルの床や曲線を持つ格子天井も温泉浴場を模したものとされている。

この駅舎は1939年(昭和14)に改築された二代目で、外観は駅の東方約25㎞にある霊山神社に由来するという。実際に霊山神社を見るとそれほど似ているとは思えないが、伊達駅とほぼ同時期の昭和15年に社殿が造営されている。戦前の一時期、社会が“日本”気分に満ちた頃の駅舎だったのだろう。(>>詳細記事はこちら

XE020190_s

【伊達駅 (JR東日本 東北本線)】
■ホーム:2面2線
■所在地:福島県伊達市細谷
■駅開業年月日:1895年(明治28)長岡駅として開業(1914年伊達に改称)
■現役舎建築年:1939年(昭和14)
■アクセス:福島駅から東北本線で約9分

*  *  *

■14:油津駅(JR日南線)
――南国の陽光が差し込む白亜のレトロ駅舎

油津駅 (1)_s

日南線の油津駅は、ローカル線の主要駅らしく、ゆったりと広い構内に立派な駅舎を構えている。

白亜の駅舎は正面に車寄せを張り出し、四角い玄関ホールの天井まで吹き抜けになっていて、ホーム側(南西方向)のあかり採りから南国の陽光がさし込んでいる。

ちょっと都会のビルを意識したようなモダンさと、路線の主要駅であることを感じさせる風格も兼ね備えている。

日南線が開通したときに建てられたこの駅舎は、今年で80歳になる。平成になって改修され、現在の姿となっている。(>>詳細記事はこちら

油津駅 (6)_s

【油津駅(JR九州 日南線)】
■ホーム:1面2線
■所在地:宮崎県日南市岩崎
■駅開業(駅舎も含む)年月日:1937年(昭和12)4月19日開業
■アクセス:宮崎駅から日南線で約1時間20分

*  *  *

■15:滝宮駅(高松琴平電鉄 琴平線)
――開業時の姿を残す大正モダンな洋館駅

滝宮 (6)_s

滝宮駅は、高松琴平電鉄(通称ことでん)最古の駅舎である。

急傾斜の瓦屋根に下見板張りの壁を巡らせた洋館スタイルがいい。まるで北ヨーロッパの農家のような大屋根だ。

玄関には袴腰風のペディメントも張り出して「ここが玄関であるぞ」と主張している。しかも駅頭に据えられた丸型ポストがよき風景をつくり出している。(>>詳細記事はこちら

滝宮 (7)_s

滝宮 (5)_s

【滝宮駅(高松琴平電鉄 琴平線)】
■ホーム:対抗式2面2線
■所在地:香川県綾歌郡綾川町滝宮
■駅開業(駅舎も含む):1926年(大正15)12月15日
■アクセス:高松築港駅から電車で40分

>>次のページに続きます。

1 2 3 4

 

ランキング

サライ最新号
2024年
5月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店