■カリブ海のナマケモノとスコットランド詩人バーンズを称える夜

ニューヨークを出港した『クイーン・エリザベス』は、1月21日米国フロリダ州の都市フォートローダデールに着岸しました。フロリダ州東南部マイアミの北約40kmに位置するフォートローダデールは運河が多いことから「米国のベニス」と呼ばれ、大西洋岸にはビーチが広がり、高級ホテルや別荘が並ぶ保養地として人気があります。そして近年、世界の多くの客船が、この町のエバグレーズ港をカリブ海クルーズの発着港として利用することから「カリブ海への玄関口」としても有名になってきました。

さあ『クイーン・エリザベス』もフォートローダデールから情熱的なカリブの海に向けて出航です。

1フォートローダデールのクイーン・エリザベス

カリブ海とは、中央アメリカ、西インド諸島、南アメリカ大陸に囲まれた内海で、息をのむほど美しい海には、異国情緒あふれる島々が点在しています。

1月24日、『クイーン・エリザベス』は、カリブ海に浮かぶ島の一つオランダ領アルバ島に到着しました。この島の最初の先住民族カケティオスインディアンはベネズエラから移住したといわれていますが、1636年オランダの植民地支配下に置かれ、その後、1986年に単独の自治領として分離し、高度な自治が認められたオランダ王国の構成国となりました。アルバ島の公用語は、学校教育はオランダ語で行なわれ、通常会話は地元言葉のパピアメント語、英語、スペイン語が主に使われているそうです。

2生まれたての蝶

アルバ島では、環境保護の一環として蝶の飼育を行なっている「バタフライファーム」を訪ねました。園内には約35種600~900羽の蝶がいるそうで、大きな特徴は今日生まれたばかりの蝶を見学できること。係員が羽化箱の扉を開けると、羽を広げたばかりの鮮やかな蝶が、宙に舞い上がってゆきました。

先住民の聖地であり奇岩群が並ぶ「アヨ岩山フォーメーション」は、クジラ、イルカ、ウミガメなど、大小の奇岩の姿が海の生物を現しています。そして、岩とサボテンの間からはイグアナが顔を出していました。

3アヨ岩のイグアナ

ところで、外国客船の面白い点は、海外の様々な風習、文化、伝統行事、そして食べ物を体験できることではないでしょうか。

1月25日はスコットランドを代表する詩人で、英語版「蛍の光」の作詞者ロバート・バーンズの生誕255年記念日。船上では、その偉業をたたえる「バーンズ・ナイト」が開催されました。今宵の服装のテーマは「タータンチェック」。本格的なキルト(スコットランド高地の男性用衣装。タータンチェック生地の巻きスカート型)から、タータンチェックの帽子やストールなどで、スコットランドの雰囲気に染まりました。

そして夕食の時、隣席の英国の御夫婦が「今日は、ぜひスコットランド料理ハギスを食べてごらんなさい。これがバーンズ・ナイトの定番料理だから」と勧めてくれました。「ハギスっていったい何?」と思いながら注文すると、出てきたのはこげ茶色の得体のしれない料理(下写真)。しかし口に運ぶと、複雑な滋味と香ばしさが広がり、今回一緒に旅をしている夫と「意外と美味しいね」という感想に至りました。

4ハギス

食後はバーンズ・ナイト・ボウル(舞踏会)です。まずスコッチウイスキーと今夜の主役料理ハギスを掲げたパレードが始まり、スコットランド出身の『クイーン・エリザベス』の航海士がロバート・バーンズ作詩「ハギスに奉げる詩」を朗読。さらに、スコティッシュダンスのショーやフォークダンスも行われ、最後は皆で輪になり手をつないで「蛍の光」を合唱しました。

翌朝、ハギスという料理を調べてみると「羊の胃袋に、肝臓、肺、心臓などの内臓ミンチと大麦などを詰めて茹でる」とても強烈な料理であることが判明し、「正体が判らぬうちに食べてしまって良かった」と大笑いしました。

次の寄港地、プエルト・リモンはカリブ海に面したコスタリカの重要な商業港です。1502年クリストファー・コロンブスが第4次航海で最初に上陸した場所であり、現地人が身にまとう黄金の飾りを見たコロンブスが「豊かな海岸」(コスタリカ)と名付けたことが国名の由来と言われています。

動植物の宝庫としても知られたプエルト・リモンでは「ナマケモノ保護区ツアー」に参加しました。ナマケモノは長い爪をもつアリクイ目ナマケモノ科の哺乳類で、緩慢な動作から英語でも「SLOTH」(怠惰、ものぐさ等の意味)と呼ばれています。

保護区に到着すると、まずパパイヤ、パイナップル、バナナなどのトロピカルフルーツサービスがあり、名産の小型モンキーバナナは甘みたっぷりでした。その後、カヌーに乗り込んでエストレージャ川探検の始まりです。

両側にうっそうと熱帯雨林が茂る川を進むと、突如「上を見て!」の声がかかりました。顔を上げると、ナマケモノが木の枝にぶら下がりこちらを見ています。さらに進むと、ボートのすぐ横にワニのせなかが現れビックリ仰天。野趣たっぷりの密林クルーズを楽しんだあとは、ナマケモノ育児室で保護されている1歳4カ月のオペラちゃんというナマケモノの子供を見学し、その生態を学びました。

7ナマケモノ

1月10日に英国サウサンプトンを出発し、大西洋側の寄港地を巡り早くも2週間以上が経ちました。カリブ海最後の寄港地プエルト・リモンを出発した『クイーン・エリザベス』は太平洋に繰り出すため、1月27日パナマ運河通過に挑みます。

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