■女王三姉妹船のパレードで飾ったフィナーレ!24か国を巡り地球周遊を達成
地中海に入った『クイーン・エリザベス』は、5月2日、イタリアのナポリに到着。寄港地も残すところ3か所となりました。港からは世界遺産に登録されているナポリ歴史地区が徒歩圏内。歴史地区を代表するヌオヴォ城とナポリ王宮を船上から望みながらドラマティックな入港シーンを楽しみました。
王宮傍にはピッツアマルゲリータ発祥の店「ブランディ」があります。1889年、この店の職人であったラファエレ・エスポジストがバジルの緑、モッツアレラチーズの白、トマトの赤をイタリア国旗に見立てたピッツアをマルゲリータ王妃に献上したところ、大いに気に入られ、王妃の名をつけることが許されたとのエピソードがピッツアマルゲリータにはあります。そこで、名物を食べに「ブランディ」に行ってみました。
ピッツアマルゲリータはもちもちの生地にまろやかなモッツアレラと酸味のきいたトマトソース、そして、バジルの香りがアクセントになっています。一緒に注文したスパゲッティボンゴレは、麺まで貝の風味を含ませた港町ナポリらしい美味しさでした。帰りには店名の入ったピッツア焼き窯の写真も撮らせてもらいました。
世界一周の旅も大詰めとなり、乗客が下船の荷づくりに取り掛かる頃、船上では、恒例の「カントリーフェア」が開催されました。ゲームやお菓子屋台のイベントがありますが、一番人気は、「セコハンコーナー」です。持ってきたドレスや靴、途中の寄港地で買った民族衣装や土産物などの中で不要な物を売りに出し、身軽になって帰路に就こうという企画です。
飛行機で英国から日本へ帰る私は、これ以上、服や荷物を増やすわけにいかず、見るだけなのが残念でしたが、意欲的に購入する方は多く、またたく間に“古着・古物”は売れていきました。
ただし、物を買うのも、ゲームに参加するのもここで使えるのは「カントリードル」という専用紙幣のみ。これは売り上げの全額をチャリティーに寄付するためで、1アメリカドル=1カントリードルのレートです。私も20ドル両替し、1分間1カントリードルのマッサージ、1回2カントリードルの船の操縦体験ゲームなどで気分転換をしました。
次の寄港地は地中海に浮かぶマヨルカ島です。バレアス諸島の中心的存在で、スペイン王室が夏のバカンスを過ごす島としても知られています。マヨルカ島のシンボルはパルマデマヨルカ大聖堂。海に面して建つ珍しい大聖堂で、バラ窓と呼ばれるステンドグラスの窓が有名です。内部に入ると、バラ窓を通して差し込む光が、壁や柱を照らし出し、聖歌隊の清らかな歌声とあいまって荘厳そのものでした。
そして、ついに最後の訪問地ポルトガルのリスボンとなりました。ここでは世界一周のフィナーレを飾る大イベントが待っていました。実は、『クイーン・エリザベス』には、2004年に就航した『クイーン・メリー2』、2007年に就航した『クイーン・ヴィクトリア』という2隻の姉妹船があります。そして今年は3姉妹の長女『クイーン・メリー2』がデビュー10周年を迎えました。そこで節目の誕生日を祝い、この3女王船がリスボンの岸壁に並び、リスボン市長も臨席した祝賀会が行われたのです。 そして、夕陽のリスボン港から、3隻はほぼ同時に列をなして出港し、終点の英国サウサンプトン港まで並んで帰る祝賀パレード航行が始まりました。
そんな中『クイーン・エリザベス』の船上では、いよいよ、4か月の世界一周の幕を閉じるときがやってきました。5月7日は最後のフォーマルナイトとなり、着飾った紳士淑女が舞踏会に繰り出し、お別れの挨拶をしながらダンス、そしてまたダンス。名残の夜は尽きません。
5月8日は荷づくりに奮闘し、帰りの荷物は、来る時とほぼ同じ夫婦二人で約30kgのスーツケース6個となりました。これは、荷物が大きくなるのを恐れ、土産も必要最低限にしたのが功を奏したようです。
やがて、ラストディナーの時が来ました。毎日、食事と共に動く海景色を楽しませてくれた絶景テーブルとも今日でお別れです。120日間、1日も欠かさず良いサービスを続けてくれたウエイターやソムリエに心から感謝の気持ちを伝えました。
世界一周初日から隣のテーブルだった英国のペティッツ夫妻と別れの挨拶をする時、さすがに胸が一杯で、言葉になりませんでした。彼らはいつも快く英国の文化や歴史を教えてくれる先生であり、素晴らしい隣人でした。その他アメリカ、オーストラリア、オランダ、カザフスタン、ドイツなど世界各国から来た人々との新しい出会いもクイーン・エリザベス世界一周がくれた大きな宝物です。
5月9日、女王3姉妹船は堂々たる凱旋帰港パレードを行ないながら、英国サウサンプトン港へと戻ってきました。『クイーン・エリザベス』は見事に世界一周を成し遂げたわけです。
総航海距離、6万9388km。まさに豪快な地球周遊旅行でした。その間には、日本初寄港という記念すべき瞬間にも立ち会い、多くの乗客から「訪問国の中で一番良かった国は日本」とも言われた幸せなクルーズでした。そして、下船と共に女王の胸に抱かれて過ごした120日間の夢の世界が終わり、現実の世界に戻る時がやってきました。
旅を振り返ると、改めて『クイーン・エリザベス』という客船の世界的な知名度の高さを実感させられました。そのおかげで、多くの港が、楽隊の演奏、民俗舞踊、消防艇の歓迎放水など、これまで、どの船で訪れた時より盛大な歓迎で出迎えてくれ、あたかも、乗客まで「国際親善大使」になったような気分を味あわせてもらいました。
今回サウサンプトン~サウサンプトンの120日全区間に乗った日本人乗客は22名でしたが、途中、誰一人欠けることなく、全員が世界一周を成し遂げたことも大きな喜びでした。
外国客船でありながら日本人コーディネーターが乗船し、メニューや船内新聞の日本語訳など、色々な対応をしてくれた点が、日本人客に安心感をもたらし、大いに助かったことは、言うまでもありません。
2015年もクイーン・エリザベスは世界一周クルーズを行います。期間は今年より少し短い114日間で28か国43港を巡り、途中、横浜と長崎に立ち寄る予定です。区間乗船コースもありますので、世界一有名な豪華客船クイーン・エリザベスのクルーズを体験する絶好のチャンスです。ぜひ、優雅な船内と、伝統のホワイトスター・サービスをお楽しみください。
【このクルーズに関する問い合わせ先】
カーニバル・ジャパン
電話:03-3573-3610
ウェブサイト:http://www.cruise-vacations.co.jp/cunard/cruise/QE_world2014.html
上田寿美子さん/クルーズライター。日本外国特派員協会会員、日本旅行作家協会会員。 クルーズ旅行の楽しさを伝え続けて29年。外国客船の命名式に日本代表のジャーナリストとして招かれるなど、世界的に活動するクルーズライター。旅行会社などのクルーズ講演も行う。著書に『ゼロからわかる 豪華客船で行くクルーズの旅』(産業編集センター)、『豪華客船はお気に召すまま』(情報センター出版局)『世界のロマンチッククルーズ』(弘済出版社)など。クルーズ・オブ・ザ・イヤー2013、2014、2015選考委員