2010年に誕生した客船『クイーン・エリザベス』にとって、今回の世界一周は、日本を初訪問した記念すべきクルーズとなりました。

1鹿児島桜島背景のQE
最初に訪れた日本の港は鹿児島です。3月15日早朝、大勢の地元の人々に迎えられ鹿児島マリンポートに入港しました。正面には錦江湾に浮かぶ桜島の勇壮な景色が広がり、岸壁には、鎧兜体験コーナーや、サツマイモ試食コーナーなどが設けられ、訪問客に喜んでもらおうという趣向です。また、港から繁華街の天文館付近まで無料の送迎バスも用意され、当日の鹿児島市内には、地図を片手に散策する外国人がいっぱい。私は、2カ月ぶりに、日本の味覚を求め、うなぎ屋に直行しました。

2甲冑体験

3月16日は、『クイーン・エリザベス』にとって、大きな挑戦が待っていました。それは、船の高さが約56.6m(海面上の高さ)の『クイーン・エリザベス』が、海面から橋げたまで約55mの横浜ベイブリッジの下をくぐりぬけるという、大技に挑んだからです。そのために、潮の干満差がおおきな大潮の3月16日と17日に入出港をすることが決められました。

いよいよ23時30分、干潮を潮どきに『クイーン・エリザベス』は意を決したようにベイブリッジの下をくぐりました。この時に舵を取ったのはイギリス人のアリスター・クラーク船長。同社の操船訓練所で教官も務めた腕前の持ち主です。このときの橋げたと、船の最も高い位置にある煙突との差は約2.2m。実際に12デッキ(12階)から通過の様子を見上げていましたが、その瞬間は周りの人も、私も思わず「わおー」と叫んだほどでした。そして、無事にベイブリッジを通過した後は、船上は拍手喝采となりました。どうぞ、ぎりぎりすれすれの通過の様子を写真でご覧ください(写真は3月17日の出港時に撮影したもの)。

3横浜ベイブリッジ通過と煙突

日本人にとって、世界一周の途中で故郷に立ち寄ることは大変嬉しく、また、便利なことです。外国の乗客や乗組員に、横浜や東京の名所を教え、電車の乗り方や地図を書いてあげると大変喜ばれました。さらに、夫は一度東京の自宅に帰り、郵便物の整理などをして夕方船に戻ってきました。 そして、横浜港では23時過ぎの遅い出港にもかかわらず、寒さの中で大勢の人がペンライトを振って見送ってくれました。

4神戸鏡割り

3月19日は、神戸を訪問しました。ここでは、元町行き無料送迎バスに乗り、久しぶりに日本のデパートへ。いかなごの釘煮など関西の春の味覚を購入し、船に戻りました。神戸ポートターミナルでは琴の演奏やお抹茶の御点前が行なわれ日本の伝統文化を身近に体験できるようになっていました。そして、19時45分に神戸歓迎セレモニーを船上で開催。松村組の和太鼓演奏や、鏡割りも行なわれ、乗客には『クイーン・エリザベス』の名入れ升にはいった日本酒が振る舞われました。
翌日は航海日。長崎に向かう船上では「マダム・バタフライナイト舞踏会」が行なわれました。今夜の服装テーマは、蝶々夫人または海軍士官ピンカートン。外国の乗客も和服を着たり、日本髪のかつらをかぶったりして、エキゾチックで愉快なマダム・バタフライナイトとなりました。

5マダムバタフライナイト

そして、3月21日は日本最後の訪問地・長崎です。松ヶ枝埠頭は、観光名所である大浦天主堂やグラバー園が徒歩圏内にあるので、とても便利な港といえるでしょう。船上の歓迎式典には田上富久長崎市長も出席し、市をあげての歓迎をアピールしました。 夫は、暫く日本ともお別れになるので、港近くの床屋へ行きました。そして、職人さんから「客船クイーン・エリザベスが長崎に来ることはテレビや新聞でも話題の的」と言う話や、外国で上手く散髪してもらうコツを教わり「伸びきった髪を切り、丁寧にひげを剃ってもらい、さっぱりした上に、久しぶりに日本語で心おきなくお喋りができた」と喜んで帰ってきました。

6田上長崎市長と長崎歓迎式典

さて、今回の日本訪問は外国の乗客にとってどんな印象だったのでしょうか。英国から来たご夫婦は「40年前に仕事で東京に来ましたが、その頃の町の英語表記はコカコーラの看板ぐらい。今回はツアーで東京へ行き、とても進歩した姿を見ることができました」と感想を述べ、続けて「一番印象深かったのは長崎。ターミナル内の案内所は親切で正確。トラム(路面電車)の一日乗車券もその場で買え、地図を貰ってトラムに乗り平和公園まで行ってくることができました。さらに、驚いたのは長崎では複数の日本人が英語で話しかけてくれたこと。どうぞ、恥ずかしがらず、英語でもっともっと話しかけて下さい。日本で地元の人と話せたことはとても良い思い出となりました」。

また、カナダから来た一人旅の婦人客は「今回の世界一周でこれまで約10カ国を訪れましたが、日本が最も気に入りました。清潔な町並み、親切な人々。各港の歓迎セレモニーも素晴らしく感激しました」。
日本に初めてやってきた『クイーン・エリザベス』を迎えるため、各地が趣向を凝らし、「おもてなし」の心をこめた歓迎を示したことは、海外からはるばるやってきた多くの人々に伝わったようです。そして、春の日本巡りを終えた『クイーン・エリザベス』は、鎖国時代も海外との窓口を果たした歴史的都市長崎を後に、釜山(韓国)、上海(中国)へと旅を結んで行きました。

このクルーズに関する問い合わせ先

QE_fleet
株式会社カーニバル・ジャパン
電話 03-3573-3610
http://www.cruise-vacations.co.jp/cunard/cruise/QE_world2014.html

 

上田寿美子さんによる2013年『飛鳥II』世界一周クルーズ記事はこちらから
http://www.webserai.jp/2013/04/post-3651.html

 

 

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