宗谷本線は天塩川にそって敷設された。天塩川は道北の背骨のような川だ。旭川から北の三角形のほぼ中心を北に向かって延びている。
天塩川と宗谷本線は、上流の士別付近の鉄橋で一度クロスするだけ。それ以降車窓左側に天塩川の姿が見え隠れする。
天塩中川駅ではクラシックな駅舎が待っていた。最後のひとりはここで下車。
ちなみに、天塩中川駅で降りたお客さんから聞いた話では、昭和28年に建設された駅舎を補修して昔の姿に戻した物。住人自慢の立派な駅舎だという。下車してみる時間が無かったのはちょっと残念。
ここからはとうとう、運転士ひとり・乗客ひとりの貸し切り状態になった。思い返してみると、この状態は初日の指宿枕崎線以来のこと。今までにも何度かひとりきり列車に乗ったことはあるが、今回はちょっと気分が違う。
他の列車ではだれかしら他の人が乗っていたのだが、今回は貸し切り状態。しかも、廃線が噂されている区間だけに、複雑な気分だ。
他に誰もいない車内に、意外なところから光が差してきた。いや「光明がさした」というのではなく、文字通りの光なのだが。
前方の貫通路から、夕日が差している。北に向かう列車の正面から日が差すとは思わなかったが、川や平地に沿ってうねうねと曲がっているので、こんなこともおきるのだ。
列車はやがて、下平トンネルに突入。
全長約260kmもある宗谷本線だが、塩狩峠以外、全線がほぼ川の流れに沿っているため,塩狩峠を除き山間部や急勾配は少ない。でも糠南~雄信内は急勾配というわけではないけれどトンネルがある。
全通以来の宗谷本線にはトンネルがなかったのだが、これは1965年に新設されたもの。それまでは、この付近から左の方向に線路が延びて天塩川のほとりに達していた。
ただ、その一帯が地滑り地帯だったため、災害が頻発。その対策で路線変更されトンネルを通るルートに変更された。宗谷本線唯一、かつ現在、日本最北の鉄道トンネルだ。
この安牛駅も,貨車改造駅。デッキの通路から,駅前の道路までまっすぐ道が延びている。でも付近に実家は見当たらない。もちろん降りる人も乗る人もいない。
幌延駅付近で天塩川と別れ、夕暮れのタイミングでサロベツ原野に入る。
このころから車窓の左や前方に、利尻島が姿を見せはじめる。利尻富士の右手に夕暮れの太陽。地形の関係で夕陽に向かって北上の旅が続く。ちなみに7月末から8月上旬にかけて、この区間ではほぼ真正面に日が落ちる。