栃木県日光市にある川治温泉は、鬼怒川と男鹿(おじか)川の合流部に開ける温泉地です。
天和3年(1683)、下野国最大の天災とされる天和日光大地震で男鹿川が堰き止められ、五十里湖が出現。その後、享保八年(1723)に湖が大雨で決壊した際に、偶然発見されたのがこの温泉の始まりと伝わります。
会津西街道の宿場町、また湯治場として栄えた湯は、古くから傷に効くといわれています。日光や鬼怒川の温泉地とは少し隔たる、自然に囲まれる清々しく長閑な佇まいの温泉地です(写真は「星野リゾート 界川治」の露天風呂)。
川治温泉と鬼怒川温泉の間、約3㎞に及ぶ渓谷が龍王峡です。2200万年もの昔、海底火山の活動により噴出した火山灰が鬼怒川の流れによって浸食されて作り出されました。遊歩道が整備されていますので、新緑のころの散策はうってつけ。水芭蕉やヒオウギアヤメなども咲き、森林浴が満喫できます。散策後はさらりとした単純温泉が体に心地よくなじむことでしょう。
取材・文/関屋淳子
桜と酒をこよなく愛する虎党。著書に『和歌・歌枕で巡る日本の景勝地』(ピエ・ブックス)、『ニッポンの産業遺産』(エイ出版)ほか。旅情報発信サイト「旅恋どっとこむ」(http://www.tabikoi.com)代表。