アラスカの海を行くクラウン・プリンセス号。

アラスカの海を行く客船クラウン・プリンセス。

文・写真/上田寿美子

毎年5~9月にかけて行われるアラスカクルーズは、清涼感のあるサマークルーズの決定版です。ただし、とても人気があるので、冬のうちからクルーズコースを探し、早めの予約が必至といわれています。

アラスカというと、日本からは遠く離れた辺境の地のように思えますが、実は意外と近いのです。今回ご紹介するクラウン・プリンセスのアラスカクルーズは、成田空港から直行便で約9時間のアメリカ・シアトル発着の、7泊8日クルーズでした。東京を出発した同じ日に乗船でき、クルーズが終われば同じ日の午後便の飛行機で東京に戻れるという、無駄のない日程も魅力です。

アメリカに本社があるプリンセス・クルーズの客船「クラウン・プリンセス」は、総トン数11万3561トン、全長290m、全幅36m、乗客定員3082名の大型客船で、2006年にデビューしました。

シアトルで乗船すると、ガラスのエレベーターが上下する吹き抜けの豪華なピアッツア(アトリウム)に迎えられ、早速優雅な気分。ここはパーティーやイベントスペースとしてもつかわれる多目的スペースでもあります。

豪華なピアッツア。

豪華なピアッツア。

このクルーズの魅力は、ラストフロンティアの地・アラスカを、時には優雅に、時にはワイルドに旅することができる点。船上から、氷河や野生動物を見る機会が多いコースなので、バルコニー付きの客室がおすすめですが、50%以上の客室がバルコニー付きのクラウン・プリンセスなら、ゆったりと自分の部屋のバルコニーから大自然を観察するにも適しています。

バルコニー付き客室。

バルコニー付き客室。

翌朝、早速クジラの生息する海を航行。船に乗っている自然解説員から「クジラが前方右側に見えます」とアナウンスが入り、急いでバルコニーに出ると数頭のクジラを発見。ブロウ(潮吹き)、ペダンクルアーチ(体を弓なりに曲げる)、フルークアップ(潜水するときに尾を高く上げる)といったクジラの迫力ある行動を、生で見ることができました。

今日は1日海を走る航海日なので、船内探検などをして、のんびり過ごせます。

そして、夜は船長主催の歓迎パーティーです。豪華なピアッツアでは、船長の歓迎スピーチ。さらに、グラスをピラミッドタワーのように積み上げ、スパークリングワインを降り注ぐプリンセス・クルーズ恒例の華やかなイベントも行われました。

同社は料理にも定評があり、夕食は日替わりの選択式フルコース。特に今夜は歓迎の晩餐会なので、オニオングラタンスープや殻付きロブスターなどのご馳走がメニューを飾りました。

華やかなイベント。

華やかなイベント。

3日目に訪れた寄港地ジュノーは、アラスカ州の州都であり、開拓者として名を挙げたジョー・ジュノーの名前が付けられた街です。ここでは、犬ぞりに乗りメンデンホール氷河を疾走するユニークなオプショナルツアーに参加しました。

まずはヘリコプターに乗って広大な氷河までひとっ飛び。そして、アラスカンハスキーが引くそりに乗り、氷河を駆け回りました。各犬ぞりには地元のリーダーが付き、10頭の犬で2台のそりを引きます。4人の乗客は2人一組となり、1人が座り、一人が立ち乗りでかじ取り役となります。冒険心と共に氷を蹴散らし、すごいスピードで真っ白の世界を走った興奮は忘れられません。

さらに、1週間前に生まれたアラスカンハスキーの赤ちゃんを抱かせてもらうなど、犬との触れ合いもある素敵なツアーでした。

ヘリでメンデンホール氷河へ。

ヘリでメンデンホール氷河へ。

氷河で犬ぞり。

氷河で犬ぞり。

クラウン・プリンセスに戻ると、優雅なアフタヌーンティーのひと時が待っていました。香り高い紅茶や、サンドイッチ、ケーキ、クッキー、焼きたてのスコーンなどをウエイターが恭しくサービスしてくれたので、ちょっとしたプリンセス気分に浸りました。

ワイルドな犬ぞり体験をした数時間後に、対照的なエレガントティーが楽しめるのもこのクルーズの魅力です。

エレガントなティータイム。

エレガントなティータイム。

4日目の朝、かつてゴールドラッシュに沸いた街スキャグウエイに到着。ここからは、小舟に乗り換え自然の宝庫といわれるヘインズに移動しました。

今日のツアーのハイライトは、アメリカの国鳥ハクトウワシとクマの見物です。郊外のチルクート川近辺には、毎日のよう野生の熊が鮭を食べに来るので、クマウオッチャーが見張りを行い、クマが山から下りてくるとツアーリーダーに連絡が入る仕掛けになっているのでした。

森林に点在するハクトウワシを見つけているうちに、突然「クマが下りてきました」との連絡が入り、川付近まで移動。約30m先で、ちょうど母熊が2頭の子熊に、遡上した鮭を捕っては食べさせているところでした。

安全のため、係員が見る場所を制限していますが、野生の熊の親子の営みをこんなに間近で見たのは初めてでした。

熊の親子。

熊の親子と遭遇。

クラウン・プリンセのアラスカクルーズではコースにちなみ地元の名物サーモンやタラバガニの料理も登場。特に、バターソースをたっぷりかけて食べたタラバガニは絶品でした。嬉しいことに毎日の朝食では、鮭の塩焼きに味噌汁、白飯、煮物、漬物、卵焼きがついた和定食を選ぶこともできました。

タラバ蟹。

絶品のタラバ蟹。

そして、5日目はいよいよこのクルーズのハイライトともいえるグレーシャーベイ(氷河湾)航行です。

世界遺産にも登録された神秘の氷河湾を航行できる大型クルーズ船は1日2隻だけ。そのうちの貴重な1隻となったクラウン・プリンセスはどんな氷河の織り成す絶景を見せてくれるのでしょうか。 (つづく)

【このクルーズに関する問い合わせ】
※ プリンセス・クルーズの日本語サイト
http://www.princesscruises.jp/

2017年はクラウン・プリンセスの同型姉妹船「ルビー・プリンセス」(11万3,561トン、乗客定員3,084名、2008年就航)が同様のコースでアラスカクルーズを行います。また2017年は、このクルーズコースが日本語サービス対象コース(日本語で対応するインターナショナルホストの乗船、船内新聞の日本語訳、和食やアジア料理の提供等)となります。

【ルビー・プリンセス8日間シアトル発着アラスカクルーズ】
航路:シアトル発~ジュノー~スキャグウエイ~ケチカン~ビクトリア(カナダ)~シアトル着
料金例:
■2017年5月6日発:
内側客室10万円から
海側バルコニー付き客室17万5000円から
■2017年8月12日発:
内側客室 13万8000円から
海側バルコニー付き客室 25万円から
(上記乗船代金のほかに別途、租税・港湾費用等が必要になります)

取材・文/上田寿美子
クルーズライター、クルーズジャーナリスト。日本旅行作家協会会員、日本外国特派員協会会員。クルーズ旅行の楽しさを伝え続けて29年。外国客船の命名式に日本を代表するジャーナリストとして招かれるなど、世界的に活動するクルーズライター。旅行会社等のクルーズ講演も行う。著書に「豪華客船はお気に召すまま」(情報センター出版局)、「世界のロマンチッククルーズ」(弘済出版社)、「ゼロからわかる豪華客船で行くクルーズの旅」(産業編集センター)など。2013年からクルーズ・オブ・ザ・イヤー選考委員。

 

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