九州と同じほどの面積で、東シナ海の南に位置する台湾は、大きな魅力を秘めた旅先だ。特に開府400年に沸く台南に注目。多様な文化を探訪する旅に出かけたい。

台湾の鉄道は高速鉄道から各都市を結ぶ特急、昔ながらの客車列車まで、多彩な魅力をもつ。気ままな列車の旅や新旧の駅舎を探訪するなど、じっくりと旅を楽しんでみたい。

高速鉄道からローカル線まで。駅舎や駅弁も大いに魅力

台湾の鉄道は島の外周を走る台湾鐵路管理局線(在来線・台鐵)と、島の西側を南北に縦断する台湾高速鐵路(台湾高鐵)をメインに、台北市や高雄市、台中市、新北市に「捷運」と呼ばれる都市交通システム(MRT)が走る。

台湾高速鐵路は台北市の南港駅を起点に左営駅(高雄市)までの約345kmを最速105分で結ぶ。最高時速は300km。開業は2007年で、日本の新幹線技術が初めて海外に輸出されたケースとなった。各駅には日本語の時刻表も常備され、記念スタンプもある。商務車廂(グリーン車)では、パーサーによるコーヒーや紅茶、菓子のシートサービスもある。

台湾高速鐵路の左営駅。日本の新幹線700系を台湾仕様とした700T型が走る。2023年にN700S系の導入も決まった。

在来線は台北から島の西側を南下する西部幹線、東側を南下する東部幹線がメインルートで、高雄と台東を結ぶ南廻線がある。総延長は1065km。また、阿里山森林鐵路は木材の運搬を目的に敷設された路線で、西部の嘉義駅を起点に阿里山まで結ぶ。

世界的に知られる阿里山森林鐵路。連続するスイッチバックや三重のループ線も見られる山岳路線だ。軌間は762mm(現在、一部区間が不通)。

台湾の鉄道は高速鉄道と在来線が別個の事業体で、競合関係にある。また、都市交通システムも各自治体が運営を担い、相互の乗継割引などはない。

戦前の駅舎が現役で活躍

台湾の鉄道の基礎は日本統治時代に整備され、運行システムや設備は日本と似ていることが多い。産業遺産の保存にも熱心で、木造駅舎や橋梁、トンネルの多くが史跡となっている。新竹駅や嘉義駅は戦前に建てられた駅舎が現役で、彰化機務段(機関区)の扇形車庫のように、国の重要文化財となっている建造物もある。また、日本製の蒸気機関車が動態保存され、不定期だが、特別列車として走ることもある。

新竹駅は日本統治時代の駅舎が現役。皇太子時代の昭和天皇が降り立ったこともある駅舎。竣工は1913年(大正2)3月31日。

ローカル線や駅スタンプも

在来線の中長距離輸送は「自強号」と「莒光号」(それぞれ日本の特急、急行に相当)が担い、これを「区間車」と呼ばれる通勤電車タイプの列車が補完している。

設備の近代化と車両の高性能化により数は減っているが、客車列車も健在。莒光号は電気機関車が牽引する客車列車だ。

幹線以外では、鬱蒼とした緑と渓谷美が楽しめる北部の平渓線や、バナナ畑の間を駆け抜ける中部の集集線などがあり、行楽路線として人気がある。また、内湾線は観光名所こそ少ないものの、のどかな里山の風景の中を走り、ローカル線ならではの情緒が色濃く感じられる。日本と同じように鉄道趣味が定着している台湾では駅に記念スタンプが置かれているほか、主要駅には列車や駅をモチーフにしたグッズを扱うショップもあり、途中下車も楽しい。

南国情緒が楽しめる集集線。台中からだと日帰りの旅が可能だ。途中の集集駅には日本統治時代の木造駅舎が復元されている。

どこか懐かしい車窓と途中下車の旅。台湾ならではの風景を鉄道で楽しんでみたい。

「縦貫線」とも呼ばれる西部幹線は最重要幹線。基隆を起点に台北、新竹、台中、嘉義、台南を経由し高雄に至る404.5km。都市間輸送に主軸が置かれ、運行本数は多い。東部幹線は台北から宜蘭や花蓮を経由し台東に至るルート。北部の瑞芳付近では渓谷美が楽しめ、福隆の先では太平洋に沿う。蘭陽平野では穀倉地帯を駆け抜け、花蓮より先は中央山脈と海岸山脈に挟まれた平地を貫く。南廻線は太平洋と台湾海峡が車窓に眺められる絶景路線。

解説 片倉佳史さん(台湾在住作家・武蔵野大学客員教授)

昭和44年、神奈川県生まれ。早稲田大学教育学部卒業。台湾に遺る日本統治時代の建造物を記録している。著書に『増補版 台北歴史建築探訪』『台湾に生きている日本』など。台湾事情をテーマに講演活動も行なう。

文・写真/片倉佳史

※この記事は『サライ』本誌2024年1月号より転載しました。

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『サライ』2024年1月号【別冊付録】は『台湾の古都「台南」を旅する』。

 

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