文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)

バック・トゥ・ザ・フューチャーで有名なタイムマシンのベースとなった『デロリアン』

2023年6月30日、ニューヨークのブロードウェイにあるウィンター・ガーデン・シアターで『バック・トゥ・ザ・フューチャー:ザ・ミュージカル』の上演が始まる(https://www.backtothefuturemusical.com/ )。

言うまでもなく、1985年にシリーズ第1作が公開された同名映画のミュージカル版だ。公式ウェブサイトにある予告動画を見る限り、映画とほぼ同じストーリーが展開されるようだ。音楽には「パワー・オブ・ラブ」や「ジョニー・B.グッド」が流れ、マーティ・マクフライもドク・ブラウンもビフ・タネンも映画でお馴染みのセリフを口にする。そしてもちろん、スポーツカーを改造したあのタイムマシンも登場する。

80年代伝説のスポーツカー

野外映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』上映会場に展示されていたデロリアン。

タイムマシンの改造ベースとなった車両『デロリアン』は架空のものではない。かつてデロリアン・モーター・カンパニー(DeLorean Motor Company、DMC)という名の会社が製造した実在のスポーツカーである。まるで未来映画のタイトルのような印象を受ける車名も、創業者であるジョン・デロリアン氏のラストネームをそのまま使ったに過ぎない。

デロリアンが製造されたのは1981年から1982年にかけてのたった2年間だけである。映画が公開された1985年より数年前のことだ。

なぜそうなってしまったかについては興味深い話があるのだが、その経緯について書き出すと長くなってしまうので省略する。とにかく、この車は約9000台しか生産されず、現存しているのは世界中で約6500台だということだ。

映画のヒットによる人気に乗じて増産されるようなこともなかった。映画公開時にはDMCそのものがすでに倒産していたからだ。

すなわち、デロリアンには限られた数の中古車しかこの世に存在しないわけだが、当然のことながらその取引価格は非常に高価なものになった。ある中古車販売ウェブサイトで確認すると、最低でも約500万円以上、1000万円以上のものも多かった。公道を走っているデロリアンを見ることも滅多にない。少なくとも筆者にはそんな経験はない。

しかし、デロリアンの(あるいはバック・トゥ・ザ・フューチャーの)熱心なファンやマニア、あるいはコレクターは存在するようで、時々クラシックカーのショーや野外映画などで目にすることがある。

自前のタイムマシンを見学者に説明するドク・ブラウン(のそっくりさん)。

なにしろ40年以上前に製造が終了した車である。筆者はまったく車関係に詳しくないが、メンテナンスに大変な手間と費用がかかるだろうことは容易に想像できる。

世界で最も多くのデロリアンを一度に見ることができる場所

前述の通り、DMCは1982年に倒産したが、1995年にスティーブン・ウィン氏という人物が同じ社名の新会社を設立した。ウィン氏は有名なカジノ王と同姓同名であるが、別人のメカニックである。

新DMCは現在テキサス州、フロリダ州、そしてカリフォルニア州に拠点を置き、デロリアンを専門にした中古車販売、買い取り、部品提供、修理などを請け負っている。

偶然ではあるが、カリフォルニア州ハンティントンビーチにある拠点は筆者の自宅から車で20分ほどの場所にある。大きな通りから外れた、とくに目立つわけでもない、ごく普通の社屋だ。

しかし、建物の前の道路や駐車スペースには何台ものデロリアンが無造作に並べられている。筆者が訪れたときには管理している人の姿すらまったく見なかった。これだけ多くのデロリアンを一度に見ることができる場所は世界でも珍しいのではないだろうか。しかも見学は無料である。無断で、と言うべきだろうか。それでもバック・トゥ・ザ・フューチャーのファンなら訪れてみる価値はあるだろう。

DMC社屋前。

デロリアン・モーター・カンパニー(DMC)・カリフォルニア州拠点
住所:7402 Prince Dr, Huntington Beach, CA 92647
電話:+1-714-842-0040
公式ウェブサイト: http://www.dmccalifornia.com/ 

文・角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 

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