文・写真/角谷剛(海外書き人クラブ/米国在住ライター)

ロサンゼルス・ メモリアル・コロシアム正面入り口。

2006年に公開されたクリント・イーストウッド監督の映画『硫黄島からの手紙』(原題: Letters from Iwo Jima)に「バロン西」こと西竹一中佐が捕虜となったアメリカ兵サムに話しかけるシーンがある。

西中佐は1932年のロサンゼルス・オリンピックで馬術障害飛越競技の金メダリストを獲得し、俳優のダグラス・フェアバンクスとも親交があった有名人だった。

当時、馬術はオリンピックの花形競技であり、西中佐が登場したのは閉会式の直前にメイン会場で行われた最終種目だった。その会場こそがロサンゼルス・メモリアル・コロシアムである。

その後、1984年のロサンゼルス・オリンピックでもこのスタジアムで開会式と閉会式が行われ、そして2028年には3度目のオリンピック開会式・閉会式会場となることがすでに決定している。

開場100周年を迎えるアメリカ合衆国国定歴史建造物

1932年オリンピックの金メダル受賞者顕彰。
右側下にEQUISTRIAN TAKEICHI NISHIの文字が見える 。

ロサンゼルス・メモリアル・コロシアムが開場したのは1923年。今年はちょうど100周年にあたる。第一次世界大戦(1914~1918年)の戦没者を記念して建築されたことからメモリアルの名称がついている。

オリンピック以外にもコロシアムではこれまでに数多くの有名なスポーツ・イベントが行われてきた。野球では1959年の第56回ワールドシリーズ第3,4,5戦がそうであるし、今ではアメリカの国民的行事となったNFLスーパーボウルの記念すべき第1回(1967年)もここで行われた。現在は大学アメフトの名門である南カリフォルニア大学(USC)の本拠地として使用されている。

2019年11月USC対オレゴン大学戦。
“File:USC vs University of Oregon November 2019.png”
by CanonStarGal is licensed under CC BY-SA 4.0.

スポーツ以外の分野では、1960年にはジョン・F・ケネディが民主党全国大会で大統領候補指名を受け、1985年にはブルース・スプリングスティーンが伝説となった『Born in the U.S.A. Tour』ツアーの幕を閉じた。大げさではなく、アメリカの現代史における重要な舞台のひとつである。

かつては10万人以上を動員したイベントが行われたこともあるが、2019年の改修工事によって現在の最大収容人数は77,500人となった。

レガシーとは何か

ロサンゼルス・ メモリアル・コロシアム内部

ロサンゼルスの前に、2024年にはパリが3度目(1900、1924、 2024)の夏季オリンピック開催都市になる。ロンドンもすでに3度(1908、1948、 2012)開催している。しかし、100年以上前に建てられた同じ施設で夏季オリンピックの開会式と閉会式が行われた例はない。

2020年東京オリンピックでは1964年に続き2度目の開会式が国立競技場で行われた。しかし、その建物は旧・国立競技場の老朽化に伴い、全面改築により建てられたまったく別のものである。総工費が膨大になるとの理由で一旦決定していたデザインコンペがやり直されるというゴタゴタ騒ぎを記憶している人も多いだろう。

「レガシー」を活用し、低予算での開催を謳った2020東京オリンピックではあるが、日本武道館や国立代々木競技場などの他の既存施設の多くも僅々1960年代に建てられたものである。

日本はもちろん、イギリスやフランスと比較しても、アメリカの国家としての歴史ははるかに若い。しかし、そのことがかえって歴史を大切に考える国民気質を生み出しているのかもしれない。

100年以上の歴史を誇る現役のスタジアム、ロサンゼルス・メモリアル・コロシアムはイベントが行われない日には一般向けのガイド付き見学ツアーを行っている。75分間で20~25ドルと価格も手頃だ。興味のある人は訪ねてみてはどうだろうか。

ロサンゼルス・メモリアル・コロシアム
住所:3911 S Figueroa St, Los Angeles, CA 90037
電話:(213) 747-7111
見学ツアー予約ページ: https://www.lacoliseum.com/tours/ 

文・角谷剛
日本生まれ米国在住ライター。米国で高校、日本で大学を卒業し、日米両国でIT系会社員生活を25年過ごしたのちに、趣味のスポーツがこうじてコーチ業に転身。日本のメディア多数で執筆。世界100ヵ国以上の現地在住日本人ライターの組織「海外書き人クラブ」(https://www.kaigaikakibito.com/)会員。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2024年
12月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

「特製サライのおせち三段重」予約開始!

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店