日本各地には多くの湧水があるが、その中で、何故か名水と呼ばれる水があります。ただ、美味しいというだけではなく、その水が、多くの恵みをもたらし、人々の命に深く関わり、生活を支えてきたからに他ならないからでしょう。それぞれの名水からは、神秘の香りと響きが感じられます。

名水の由来を知ることは、即ち歴史を紐解くことであり、地域の文化を理解することでもあります。名水に触れ、名水を口にすれば、もしかすると、古の人々の想いに辿り着くことができるかもしれません。

歴史ある水を訪ね古都を歩きます。

京都には、川や泉などに関連する「通り名」が、多いことに驚きます。具体的に紹介すると、今出川通、堀川通、出水通、北泉通、川端通、冷泉通、白川通、夷川通、御池通、小川通、河原町通等などがあります。

このように「水」に関連する名称が多いのは、やはり京都盆地という地形が関係していると考えられます。周囲の山々に降った雨水が、加茂川(鴨川)や小河川となって流れ、それら河川によって形成された扇状地の上に都が開かれ、発展してきたという歴史があります。

川や泉が生活環境に密接であったことから、地名や通りの名称にもなったのでしょうね。伏流水が豊富な京都では、庶民の生活に必要な井戸水も多く存在したと考えられます。

しかし、上水施設が発達した今日では、多くの井戸は使用されなくなり、名水(井)として残されているのは、皇室、公家など地位の高い人々が産湯や茶の湯で使用した水、もしくは神社・寺院など湧き出す水に限られています。
それでも、1200年以上の歴史を有する古都京都においては、多くの由緒ある名水が点在しています。

そのような水の中から、今回は菅原道真公の産湯に使用されたと伝わる「菅公初湯の井戸」をご紹介いたします。

公家の文人として活躍した菅原三代の邸宅「菅原院」の跡地に鎮座するお社

菅原道真公が誕生した折に、産湯として用いられたとされる「菅公初湯の井戸」は、菅原院天満宮というお社の境内にあります。

このお社、京都市街地を南北に走る通りのひとつ、烏丸通(からすまどおり)西側の京都御苑、下立売御門の向かいに位置しています。周囲は、古い教会や教育機関の建物に囲まれ、こぢんまりとしたお社。うっかりすると、見落として通り過ぎてしまうかもしれません。

天満宮といえば、“北野さん”と市民に親しまれ、信仰を集める北野天満宮が有名ですが、菅原院天満宮神社も“烏丸の天神さん”と呼ばれ、“北野さん”と同様に京都市民から親しまれています。

菅原院天満宮神社の正面鳥居

現在境内となっている場所には、平安時代に菅原氏の邸宅「菅原院」があったとされて、菅原道真の祖父・清公(きよきみ:770〜842年)から始まり、父・是善(これよし:812〜880年)、そして道真(845〜903年)と、公家で文人として活躍した三代が居住していたとのことです。

そのため、ここ“烏丸の天神さん”には、菅原道真公とその父是善卿、祖父清公卿が祀られており、太宰府天満宮への遺蹟伝承地を結ぶ菅公聖蹟二十五拝の第1番社になっております。

千年の時を超えて、学問の神様、菅原道真公の産湯“菅公初湯の井戸”

“菅公初湯の井戸”の囲い石は、平安時代のまま、当時の姿をとどめているとか。井戸の櫓には、今は使われてはいませんが錆びついたつるべも残されています。

地下鉄工事など都市開発の影響からか、数十年前に一時水が枯れてしまったことがあったそうですが、2010年に新たに掘削が行われ、由緒ある名水が復活したそうです。千年の時を経て受け継がれる“菅公初湯の水”、円やかな口当たりでミネラル分が多く、学問の神様として厚い信仰を集める道真公ゆかりの「ご神水」として大変な人気。

取水用の設備もあり、自由に持ち帰ることができます。受験合格や病気平癒を祈願する人たちが、御利益を求めて参拝されます。京都観光へ訪れた際には、立ち寄ってみてはいかがでしょう。

人気「ご神水」は、自由に持ち帰りができます

伏流水が豊富だからこその、せせらぎ“出水の小川”のお話

「菅公初湯の井戸」に合わせ、伏流水が豊富な京都にふさわしい小川のお話を少々いたしましょう。
「菅公初湯の井戸」の在る菅原院天満宮神社の東側は、烏丸通を隔てて広大な京都御苑です。その京都御苑の出水口から苑内に入った右手に、実に清楚なせせらぎが流れております。傍に立つ駒札と石碑には「出水の小川」と記されてあります。

何故、このような所に小川があるのかと調べてみますと、もとは、明治時代に御所の防火用水を確保するために琵琶湖疏水から引き込まれたのが起こり。1981年に御所廻りの御溝水から導水して作られたそうです。

しかし、1992年に御所水道が停止したために、その後は井戸からくみ上げた地下水を循環ろ過して、せせらぎが維持されているとのこと。その長さは、わずか約110m、深さは、約20㎝と愛らしい小川です。

川底には、琵琶湖安曇川産の石が敷かれ、澱む事なく流れています。「菅公初湯の井戸」の菅原院天満宮神社の参拝の折には、是非とも京都御苑へも足を運び「出水の小川」の周辺も散策なさってください。きっと京都の情緒あるひと時を過ごすことができるでしょう。

所在地・最寄り駅、交通手段

住所・所在地:京都市上京区烏丸通下立売下る堀松町408
アクセス:地下鉄烏丸線 丸太町駅 徒歩約5分

取材・動画・撮影/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
京都メディアライン:https://kyotomedialine.com
Facebook:https://www.facebook.com/kyotomedialine/ 

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