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文・写真/杉﨑行恭

【東日本編】 はこちら

天高き季節に訪ねたい、ニッポン晴れ満喫の駅。秋も深まるにつれて空気も澄んでいき、ますます空の蒼さが引き立ってくる。この中部エリアは「中部山岳地帯」と文字を続けたくなる山のエリア。高原を走る列車に乗っていると空の広い駅をあちこちに見る。さらに大空を縁どる名峰の数々も見応えがあり、ひと足早い紅葉も楽しめそうだ。ここはぜひ、地図を持参して山々の名前を確認しながら各駅停車の旅をしたいところ。そして空と山と湖と、バラエティに富んだ駅風景も楽しみたい。

信濃追分駅・しなの鉄道

信濃追分駅,噴煙を上げる浅間山
信濃追分駅は標高955m

休日になると都会と同じような賑わいを見せる軽井沢駅。しかし、その軽井沢からしなの鉄道で2駅目の信濃追分駅は、うって変わって大正時代に建てられた木造駅舎が残る静かな駅だ。雑木林が点在するところに駅があり標高は955m、旧信越本線の最高所駅となっている。つまり私鉄をふくむ三セクター鉄道のなかで最も高い所にある駅なのだ。昭和前期には中山道追分宿に家を構えた小説家、堀辰雄もこの駅を利用したという。今もそんな良き時代の風景を残すホームに立つと、噴煙を上げ浅間山も意外なほど近くに見える。晩秋になるとおおきな秋空にホームの紅葉が映える、ここはまさに高原の駅だ。

日野春駅・JR中央本線

日野春駅から南アルプス
日野春駅の夕景

中央本線の下り列車は韮崎駅をすぎると、八ヶ岳火山がつくり出した七里岩という台地にカーブを繰り返して登り始める。日野春駅はその台地上にあってホーム真正面に甲斐駒ケ岳や鳳凰山などがずらりと並ぶ絶好の南アルプス展望台だ。そして反対側には八ヶ岳連峰もあって文句なしの絶景が展開する。さらに明治37年(1904)からの木造駅舎が残り、SL時代にはこの駅で給水するために遠くから水を引いたという。そのなごりか日野春駅で特急待ちをする普通列車も多い、時間があればホームに出て大空を満喫したい駅だ。

信濃平駅・JR飯山線

信濃平駅のホームから
信濃平駅の待合室

ささやかなローカル線の無人駅だが、ひとたび晴れれば畑の先に志賀高原の山々が望める絶景の駅になる。長野県北部、飯山盆地の真ん中にある信濃平駅には簡素なホームと車掌車を改造した待合室があるだけだ。それでも近隣の人達が構内に花を植えて居心地のいい駅環境を作っている。JR飯山線の前身、飯山鉄道はこのあたりの集落を無視するように鉄道を建設し、畑の真ん中に駅をおいた。大正12年(1923)の開業時は「信州平」という駅名だった。ホームからは見えないが、東に10分も歩けば滔々と流れる千曲川と「道の駅」が現れる。空を眺め、山を愛で、川に遊べる無人駅だ。

高儀駅・JR城端線

高儀駅
高儀駅、山居村と昔のホーム

むかし、学校の地理の授業で習った「砺波平野の散居村」、JR城端線の高儀駅はそんな砺波平野のなかにある無人駅だ。明治時代の駅舎が沿線に点在する城端線だがこの高儀駅は昭和62年(1987)改築のコンクリート平屋の駅舎で、玄関には改札口すらない、鉄道ファン的にもまったくの無名駅だ。それでもホームの先には富山名物の散居村があって、穏やかな平野の風景に心安らぐ。こんな駅もいいものだ。城端線は今も国鉄時代のキハ40系が走り、架線のないレールが大空と大地の間に伸びている。

志比堺駅・えちぜん鉄道勝山永平寺線

志比堺駅の急階段
志比堺駅と越前の山々

電車は九頭竜川の氾濫原を避けるように高度を上げ、この志比堺駅のあたりでは民家の屋根が下に見えるほどの高さになった。木造平屋の駅舎はそんな築堤の上にあり、地平から急階段を登ったところにある。ホームから見渡せば、大空のもと対岸に浄法寺山(1052m)から続く山なみが重なり合い、ここが山地と福井平野の境目にあることがわかる。 曹洞宗の古刹、永平寺はこれより内陸に進んだ永平寺口駅からさらに志比谷を分け入ったところ。なんとなく志比堺駅は、霊場と俗世を隔てる「堺」でもあるようだ。天空を見渡すホームは心細いまでに狭い。

船町駅・JR飯田線

船町駅、電車も車も通過中
船町駅、ホームへの通路

すぐ上を走る名鉄特急や、駅頭の踏切を渡るBMWとくらべても、この駅舎のサイズが分かるだろう。船町駅はJR飯田線の起点、豊橋駅からひとつ目の豊川鉄橋に近いところにある無人駅だ。またJRの駅にもかかわらずやってくるのは名鉄電車(すべて通過)ばかり、それというのもこの先の平井信号所〜豊橋駅間3.8kmがJR飯田線と名鉄との共用区間だからだ。駅前は貨物駅、そして周囲は川岸の工場街、地下道からのぼったホームには申し訳程度に屋根があるだけ。それでも、だだっ広い空と通過電車が楽しめる異形の駅だ。

小田井(おたい)駅・東海交通事業城北線

小田井駅は4階建て
小田井駅の空の広さ

東海交通事業なる鉄道があるのをご存知だろうか。JR中央本線と東海道本線をショートカットする目的で開通した11.2kmの元貨物線で、現在は貨物輸送がなくなったJR東海が保有し、子会社の東海交通事業がワンマンのディーゼル気動車を運行している。平成3年(1991)開業だけにほとんどが高架で、しかも非電化なのでまことに空が広い。特にこの小田井駅は名鉄犬山線と交差するため4階建て地上17mの巨大高架駅になっている。晴れれば名古屋県営空港に離発着する飛行機も眺められ、巨大な高架線路をやってくる小さなディーゼル気動車もアンバランスで面白い。

文・写真/杉﨑行恭
乗り物ジャンルのフォトライターとして時刻表や旅行雑誌を中心に活動。『百駅停車』(新潮社)『絶滅危惧駅舎』(二見書房)『異形のステーション』(交通新聞社)など駅関連の著作多数。

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